時は止まらなかった
お久しぶりです。
結局また書いてしまいました。受験生なのに・・・ww
何かこの調子だと1月辺りにもまた書くかもしれません。
話は変わり、この作品の話。
前にも言いましたがこの章は本当に全く今までのストーリーとは別物のかなりダークな物になってます。あと場面転換も多いです。読者さんの反応が怖いです。
まあ、出来る限りこういうのは避けたいので後半はちょっと明るめにしようかな・・・と考えてます。
では、長くなりましたが本編へどうぞ
狂助が気付いた時には目の前に見慣れた景色が広がっていた。
狂助の上界での最後の記憶、二宮組事務所宴会場。
狂助はあの夜を懐かしみつつも違和感を覚えた。
「帰ってきたはいいが・・・・・・静かすぎないか?」
その時だった。
ガラリと戸を開く音。
「か・・・・・・片桐さん」
狂助は振り返った。
声の主は狂助の記憶では確か栄治の右腕の田村という名の男だった。
狂助は遠慮がちに話しかけた。
「田村・・・・・・か?」
「はい。片桐さん、一体どこに行ってたんですか?」
田村は心なしか元気がない。狂助は気になって尋ねた。
「それよりどうしたんだ?元気が無いようだが」
「そういえば片桐さんは知らなかったんでしたね・・・・・・着いてきてください」
「あっ、ああ」
狂助は田村の後について歩き出した。
ーーー二宮組事務所・座敷ーーー
狂助は目の前の光景に絶句した。
座敷内には組員の約三分の一が部屋いっぱいに詰まっていた。
しかし、二宮組の組員は頭の二宮庄一を含めても150人は下らない。
もちろん少ない人数ではない。
だが、この座敷は50×40の面積を持つ縦長の部屋である。
それでもこのような状況である理由はある物が少し多めに面積を取っているからである。
それは布団だった。
そして、布団には一人の人間が眠っている。
顔に布を被せられて。
田村は少し控え目に狂助に告げた。
「顔を確認してください」
狂助は無言で布団に近づき、顔に被せられた布を取る。
「栄治・・・・・・」
その顔は狂助の良く見知った顔だった。
ーーー3年前ーーー
「なあ栄治、狂助」
「何ですか?」
狂助と栄治はほぼ同時に聞き返す。
「組の跡継ぎの話だがな。お前ら2人のどちらかに継いでもらいたい」
「なっ、何を言い出すんですか!!」
そう言ったのは栄治の方だった。
狂助も続けて言い放つ。
「そうですよ。頭はまだ現役ですよ!」
「いや、そうも言ってられん。俺ももう歳だ。だから、俺が死んだ時はどちらかが継いでくれ」
「・・・・・・栄治、お前が言ってくれよ」
そう言って狂助は恥ずかしそうに栄治の横腹を突く。
「アホ、そんな恥ずかしいこと言えるか。お前が言え。狂助」
「・・・・・・頭、俺たちは今は頭の両腕です」
「ああ」
「まだまだ小さな両腕ですがもし頭が潰されそうになったら両腕が盾くらいにはなりますよ。
俺達のほうが先に死んでやります」
「盾か・・・・・・クッ、ガハハハッ」
「あー恥ずかしい。栄治、お前のせいだぞ」
「うるせー、俺だって少しは考えたんだ。恥ずかしいったらありゃしねえ」
・・・・・・・・
「栄治・・・・・・何でだよ。俺達二人で頭を守るんだろ?俺達の方が先に死ぬんだろ?・・・・・・なあ」
狂助はそう言って栄治の遺体に倒れ込み静かに泣き始めた。
それから10秒と経たない内に狂助は顔面を組員の一人に蹴り飛ばされた。
狂助は後ろに倒れ込んだ。
「白々しいんだよ。お前は頭と一緒に逃げたんだろ?この卑怯者が」
狂助はゆっくりと起き上がり、聞き返した。
「どういうことだ?俺と頭が逃げたって」
「まだシラを切るつもりか。抗争直前に逃げ出したくせによ!」
狂助はその言葉で全てを理解した。
そう、狂助が中界に召喚されたのは抗争の前日であった。
おそらくその間、時間は流れ続けていたのだろう。
そして、栄治は自分なしで抗争に向かい、死んだ。
しかし、何故頭もいないのかという疑問も狂助には残った。
この時ばかりは狂助も信じた事のない神を恨んだ。
誰かが「やっちまえ!」と言ったのを皮切りに一斉に組員は狂助に殴りかかった。
狂助の口の中に鉄の味が広がる。
何度も何度も狂助は殴られた。
だが、絶対に狂助は抵抗の意を示さなかった。
ボロ雑巾のような狂助の姿を見て、田村は話し始めた。
「栄治さんは最後まで片桐さんのことを信じてましたよ」
狂助は田村がなぜ自分を助けなかったのかということは聞かなかった。
狂助自身も田村の気持ちが分かっていたからである。
「・・・・・・頭のことは?」
「もちろんです。栄治さんはあなた方二人を欠いた状態での抗争は死にに行く様な物だと言って、たった一人で山口組に乗り込み・・・・・・瀕死の状態で発見されました」
そう言い終えて田村も目に涙を浮かべた。
その時、狂助の目に復讐の色が宿り始めた。
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