恋の終わりを決めた日から、私の時間が巻き戻る
タイムリープする、少し不思議なお話です。
【 side: 美咲〜別れの日】
「どこに行こう」と考えて、スマホの連絡先を見る。そこにあるのは、彼の名前だけだった。
友達の名前も、よく開いていた店の番号も、いつの間にか消えている。画面に残したのは、彼だけ。
自分で、そうしてきた。
イヤホンの中では、配信アプリが薦めてきたラブソングが、まだループしている。ちょっと前の曲だ。
流行りの歌ではないのに、ひとりの人だけを想う歌詞が自分に重なって、何度も聴いた。
それももう、お終い。
液晶に映り込む自分は、彼好みである地味なメイクと髪型をしている。グロスの艶も、まぶたのグラデーションも、何もない。素顔風どころか、ほぼ素顔。
本当はショートカットに憧れていた。でも、彼が好きなのはストレートのロングヘアだから、切らずにずっと伸ばしてきた。
食卓には、まだ温かいスープが置かれている。定位置の椅子に座りお帰りなさいと微笑む私を、彼は今夜も期待しているだろう。
——でも、もうあそこには座らない。
少しずつ、私物を整理してきた。
自分には似合わないと思うもの、好きじゃないと思うものを袋にまとめ、ゴミ収集日を書いた付箋を貼った。
もうこの部屋に来ることはない。
自分のために買っておいたバッグを肩から下げ、かわいいパンプスを履く。
彼が仕事から帰ってくる頃には、私のいた痕跡はすべて消えているはずだ。
玄関を出て、大きく息を吸い込んだ。夜の冷たい空気が、肺の奥まで気持ちよく染みた。
【 side: 蓮 〜現在から半年前 】
蓮が帰宅したのは、日付が変わる頃だった。部屋はしんと静まり返っている。
「美咲、寝てるの?」
寝室の電気はついていない。人の気配もない。
テーブルの上には、俺の好きなコーンポタージュスープ。いつもなら、どんなに遅い時間に帰っても温め直して出してくれるはずの人が、この部屋にいない。
リビングの片隅に、ゴミ収集日が書かれた付箋付きの大きい袋が2つ。
あるはずのものがない、虚ろな空間。
この部屋にはまだ美咲の匂いが残っているのに、姿は見えない。
普通なら、慌てるはずだ。
だが蓮の胸に湧き上がったのは、「あ、やっと終わったんだ」という、引き潮のような終わりの感覚。
首元のネクタイを緩め、ダイニングの椅子にドカっと音を立てて座る。
燃えるゴミと燃えないゴミ。それぞれ収集日が違う半透明なゴミ袋の中身を思う。
彼女にとって自分との暮らしそのものが、ゴミに出された明確な事実。
袋の付箋をしばらくボーッと見つめ、美咲との日々を思い出していた。
確か、美咲とつきあって半年が経つ頃には、半同棲の状態になっていた。
でも、一緒にいる時間が増えるにつれて、美咲の態度に違和感を覚えるようになった。
付き合う前の美咲は、自己主張が強いわけではないが、自分の意見をしっかり言うタイプだったように思う。
なのに、何を聞いても「蓮の好きな方でいい」「蓮がしたいことでいいよ」としか言わない。明らかに、俺の顔色をうかがう様子に少し苛立った。
「何でもかんでも俺任せじゃん。たまには美咲がしたいことを言ってよ!」
キツい言い方になったこともある。かつて惹かれた女の子が、少しずつ消えていく焦燥感。
言葉は本当の気持ちを表してくれず、美咲は困ったように笑うだけだった。
「だって、蓮がしたいことが私のしたいことだもの」
俺たちのすれ違いは大きく広がり、修復できずに関係の終わりに向かっていった。
【 side: 美咲 〜つきあって3か月目】
付き合ってすぐ、蓮の誕生日があった。運悪く、大学の恩師の送別会の日と重なってしまった。
本当にお世話になった人で、なかなか就職の内定が取れず落ち込む私に、一生懸命人脈を使ってチャンスを広げてくれたゼミの教授だ。
「美咲〜。俺の誕生日なんだけど、前日から1泊2日で温泉にいかね?」
蓮が嬉しそうに旅館の公式HPを見せてくる。
今日のデートだって、本当は違う日だったのが、私の仕事の都合で変更になっていた。最近、職場で相次いで退職者が出たせいで残業続きだった。デートのリスケは2度目だ。ここでさらに、誕生日を一緒に過ごせないと言うのは気が引けた。
いや、本当は蓮が自由に会えない彼女に愛想を尽かしたらどうしようと、怖かった。
「うん、いいね。私、ご飯が美味しい所がいいな〜」
「だよな、ここは部屋食でカニ三昧だって」
「それ、すっごくいいね」
恩師には手紙を書いて、何か記念になるものを送ろう。
蓮と気まずくなりたくないから。
蓮に誘われた時にすぐ応じるために、仕事以外の予定はなるべく入れないようにした。友達は度重なる誘いの断りに、徐々に離れていった。
寂しいことだけどしかたない。だって、蓮とずっと一緒にいたいし、上手くやっていきたい。
ある日、電話がかかってきた。幼馴染で幼稚園から高校までずっと一緒だった親友。進学先が別れて距離が離れてから中々会えなくなっていたけど、久しぶりに私が暮らすこの街に来ると言う。
でも彼女が提案してくれた日は、蓮とコンサートにいく予定の日だった。ようやくチケットが取れたよと、楽しみにしている蓮に、行けなくなったとは言いたくない。
何とか別日に会えないか調整しているのを蓮に見られてしまった。
けっきょく都合が合わず、会わないことになったのも聞いていたらしい。
「ごめん、聞こえちゃった。友達と遊んできていいよ。久しぶりに会うんだろ?」
蓮はそう言ってくれたけど、彼の表情は曇っていた。
やはり断って正解だったと、密かに胸を撫で下ろす。
「ありがとう。でも私も蓮とコンサートに行くのを楽しみにしていたから大丈夫。彼女には、今度私の方から会いに行くから」
その気持ちに嘘はない。友達にはいつでも会える。
蓮との予定を優先させることが二人のためなのだと、信じて疑わなかった。
【 side: 蓮 〜つきあって1か月目】
付き合って1か月記念日。いや、何の記念だよ?と自分にツッコミをいれつつ、美咲との待ち合わせ場所に向かっていた。
今日は彼女がリクエストしてくれたイタリアンのお店に行く。予約は美咲がすると言うので任せた。
「大変申し訳ございません。お席のご予約をいただいておりません」
予約システムの不具合か、こちらのミスかはわからないけど、お店の予約が取れていなかった。
楽しみにしていた分、ガッカリ感が否めない。
「あ〜あ、あの店のリゾット食べたかったな」
何の気なしに言った言葉だった。金曜の夜、おしゃれでデート向きのお店はどこも満席で、よくあるコスパのいいチェーン店に入り、二人で食事をしていた。
美咲は責任を感じているのか、元気がないようだった。気にしなくてもいいよと伝えたくて、普通に食べたいものを頼んで、お酒も進んだ。
イタリアンは好きだけど、大衆料理も好きなのは美咲も知っているはず。
ちょっとした手違いはあったけど、1か月記念の夜に二人で過ごせたから良かったのだ。
彼女と好きな料理と美味しい酒と。
俺は普通に酔っ払って、美咲がどんな顔をして何を言ったかなんて、覚えてなかった。
【 side: 美咲 〜告白から初デート】
「今度、お食事にでも行きませんか?」
仕事の取引先である幸田さんに誘われた。彼が打ち合わせで来社するたびに目が合う気がしたのは、気のせいじゃなかったみたい。
目が合うからか、好みのタイプだったからかはわからないけど、密かに私も幸田さんのことをいいなと思っていたからうれしかった。
大学時代、告白されて何人かと付き合ったことがあったけど、「思っていたのと違う」と言われて、長続きしなかった。
恋愛に向かないとわかったので、就職してからは恋愛自体ご無沙汰だ。久しぶりに心が浮き立つような気持ちがくすぐったくもあり、ドキドキしながら待ち合わせ場所に向かった。
「突然、誘っちゃってすみません。ご迷惑じゃなかったですか?」
「すごく驚きましたけど、お誘いうれしかったです」
「マジですか、よかった〜〜〜。一生分の勇気、振り絞りました!」
彼の弾けるような笑顔が素敵だと思った。
オーダーした料理が運ばれる品数に比例して、会話も盛り上がっていった。
「前にそちらの課長にむちゃ振りされた時、さりげなく調整してくれて。しかも落とし所を見つけて案を取りまとめてくれた時、カッコいい女性だなって思ったんです」
「カッコいい……ですか?」
「はい!カッコいいです。あのしつこそうな課長を上手にあしらい、手のひらの上で転がすと言うか、はっきりミスマッチのところを指摘するところとか」
「課長を上手く転がせてるかはわかりませんが、性格がしつこいのは当たってます、ここだけの話ですけど」
二人で笑い転げた。
満腹になりお店を出て、最寄りの駅まで送ってくれた時、
「好きです、今日もっと好きになりました!俺と付き合ってくれませんか?」と言ってくれた。
すごく、すごくうれしくて「はい!」と、自分で思ったより大きな声がでてしまった。恥ずかしくなって俯いていると、「可愛い……」と言う声が頭の上から降ってきた。慌てて顔を上げると、愛しいものを見る優しい目で、幸田さんが私を見つめていた。
「これからよろしくお願いします。俺のことは蓮って呼び捨てで呼んでください」
「じゃあ、私のことは美咲で」
告白されたから何となくつきあうのではなく、自分が「いいな」と思っている人とはじめて付き合えることになって、私は浮かれていた。
つきあって初めてのデート。派手すぎず、かといって地味すぎないコーデに悩んでいた。同期の飯橋ちゃんがおすすめしてくれた洋服を一式買って、「愛され女子メイク」に初挑戦した。冬だけど日差しが柔らかな、暖かい日。ウキウキしながら待ち合わせ場所に向かった。
笑顔で迎えてくれた蓮が開口一番に言った。
「今日、何だか雰囲気違うね」
「え? なんか変??」
「いや、別にいーけど」
別にいい?
良いと言う意味のいい?
どうでもいいのいい?
言葉の意味が知りたくて、でも聞いたら落ち込むかもしれないと怖くて、何も聞けなかった。
浮き立つ気分が一気に萎んで、蓮の少し後ろを歩く。彼の視線が、ある恋人同士を追っていた。
清楚な感じのシンプルなベージュのコートからのぞく水色のタートルネックセーターに黒のロングスカートの女性。控えめなメイク。
彼はこういうメイクとファッションが好きなの?
とたんに今日の自分の格好が恥ずかしくなる。
真っ白なファーがついた甘めのオフホワイトのコートにピンクベージュの膝上スカート。ピンクのグロスはお気に入りだったが、年齢も考えず似合っていないのかもしれない。中に着ている白のカットソーもオフショルダーだ。とてもコートを脱ぐ気になれない。
歩くのが遅くなり、気にした彼が振り返る。
上手に笑えてたかはわからなかった。
体調が悪そうだからと早めに予定をきりあげてくれたので、一人家に帰る。
着ていたものを全部、空の段ボール箱に詰める。
もう着ない服をまとめて処分するための箱に、捨てる予定ではなかった服やメイク道具を投げ入れる。
今日の洋服は2度と着れないと思った。
やっぱり私は——
【 side: 美咲 〜別れの日から一年前 】
「……失敗する」
はっ、とベッドから跳ね起きる。
私は今、何を?
寝汗をかいたのか、背中がぐっしょり濡れている感じがする。気持ち悪い。
どこか現実感がないような、ふわふわと思考が霧散する。
ピコンッ
SNSの通知音がした。
蓮への未練を断ち切るためにスマホの機種変更して、まだ誰の連絡先も入れてないはず。
手を伸ばしてスマホ画面にある通知を見る。
「え?」
そこには親友の名前と「来週の約束、1時間遅れそう」という内容が見えた。
連絡が取りづらくなって、名前を見ると心が痛んだから、思いきって連絡先を消したはずだった。アプリも電話番号の登録もしていないから、通知が来るはずがないのに。
よく見ると、手に持っているスマホも機種変更前の、蓮とおそろいのに戻っている。
軽くパニックだ。
いや、かなり混乱している。
画面に表示されている日付は一年前。私はまだ寝てるのかな?
スマホを開き確認すると、半年前まであった連絡先やアプリのやり取りが全部そこにあった。
部屋も見渡してみる。捨てたはずのオフホワイトのファー付きコートが、ハンガーラックにかかっている。何より、液晶に浮かぶカレンダーの日付は、蓮との初デートの日だった。
待て待て待て、一旦整理しよう。
私はさっき、「失敗する」と呟いて飛び起きて……
その時、脈絡もなくむかしの記憶が押し寄せてきた。
中学の頃、廊下の陰で偶然聞いてしまった男子たちの声。
「女って、男の好みが全然分かってねーよな」
みんなゲラゲラ笑っていた。その場に進藤くんもいた。
ずっといいなと思っていた人。彼も同じように笑い、信じられないことを言った。
「わかる〜。ほら、委員長みたいに何でもすぐ注意してくるタイプなんか、ありえなくね?ちょっとあざと系でも、佐々木さんみたいな頼ってくる子の方がいいに決まってるよな!」
「わかる〜〜、委員長ってさ、何でいつもあの髪型なの?おばさんじゃね?」
「それな〜」
血の気がなくなるって、こういうことだ。
佐々木さんは俗に言う、女に嫌われる女。係の仕事をすぐできないと言って男子に押し付けるから、クラスの女子みんなから敬遠されている。
そして、好きな人が笑う委員長というのが私。佐々木さんに係のことは自分でするように、何度も注意していた。
仕事を押し付ける子より、注意する私の方が男子的に「ありえない」
彼らが私の存在に気づかないことをひたすら祈った。
ものすごく前のことなのに、やけにクリアに思い出される。
私の好きな人は私みたいなタイプを好きじゃない。淡い恋の気持ちと一緒に封じ込めた痛みが急浮上してくる。
髪型だって別に変なわけじゃなかった。後ろの低い位置で一つに束ねていただけで……
そこまで思って、ふと別の引っ掛かりが出てくる。
大人の今だからわかるけど、あの頃の私はなぜいつもあの髪型をしていたんだろう。そして、なぜ笑われても変えなかったんだろう?
意地になってた?
ちがう——母の声が頭の中にこだまする。
「あの子は派手ね〜、お母さん全然好きじゃないわ」
「美咲に似合うのを一番知っているのはお母さんだから」
「お母さんの言う通りにしておけばいいのよ」
仲良くなった友達とダンス教室に通いたいと言ったとき、母は眉間に皺を寄せた。だけど父が後押ししてくれて、渋々許可してくれた。せっかく通い始めた習い事だったけど、友達とトラブルが起きて続けられなくなった時は、
「ほら見たことか、だから言ったでしょう」
と言われた。
その後、母の意に沿わない事がある度にこのことを持ち出すので、最初から母が反対するようなことは言わなくなった。それでも、小学校高学年の時にどうしてもショートカットにしたいと頼んでみた。「女の子は髪が長い方が可愛いのよ」と、切らせてもらえなかった。
何かを自分で決めようとするたび、「失敗したらどうするの?」という声が先回りして潰される。なぜ今、これを思い出すのか。
母がダメだと言ったから髪を伸ばしていた。
そうだ——母が先生ウケが良くなると受験に有利になるからと、委員長にも立候補したし、髪型も校則を守って優等生に見えるようにしていたんだった。
乾いた笑いがでる……優等生を演じて好きな人にありえない、おばさんだと思われるなんて。
思えば、中学のトラウマが元で、高校時代は恋に臆病になり勉強しかしてこなかった。
大学になって、好きだと言って振られて傷つくより、告白されて付き合えば嫌な思いをしないと思った。だから付き合ったのに、なぜかすぐに振られてしまう。
あまり好きではなかった人でも、勝手に幻滅されて振られれば、それなりに傷つく。繰り返せば懲り懲りになる。
だから、蓮から食事に誘われて、付き合おうと言われて、絶対に失敗したくないと思った。心が動かされる人と付き合うなんて、もう2度とないと思ったから。
繰り返し……ふと、蓮との関係が終わったのは、これまでの自分の恋愛パターンを繰り返していたからじゃないかと思った。
私は失敗したくなくて、でも失敗して。自分が何かを選んだり、決めたりすることに自信がなかった。だから、蓮に全て合わせて彼に任せていれば、二人はずっと一緒にいられると思っていた。
でも苦しかった。
蓮は私を見て笑わなくなっていった。
私が蓮に合わせようとするたび、辛そうな顔をするようになった。
先に笑わなくなったのは私の方なのに。
そもそも、自分が「どんなつきあい方をしたいか」なんて、考えたことがなかった。恋を終わらせないために、波風を立てないことが正しいと思っていた。
でも結局終わった。心が悲鳴をあげ、限界だった。
「私、自分の気持ちを蓮に話すことさえせずに、自分勝手に関係を終わらせたのね」
黙って出てきた。私物はゴミ袋に入れて、彼の部屋に残してきた。
客観的に見て、酷すぎる。
自己嫌悪に沈みそうになるけど、どういうわけか「今日」が来るのは2度目だ。
もしかしたら、違う未来が描けるかもしれない。
「このコーデ、可愛い」と、同期とワクワクしながら買ったファーコートやピンクのグロスを蓮が好きじゃなくても、「似合わないかな?私はけっこう好きなんだけど」って言ってもいい。
私の格好を見て言った「別にいーけど」は、どういう意味だったのかを素直に聞いていい。
私は最後に蓮の部屋を出る時、新しいバックと可愛いと思ったパンプスを履いた。
最初から、それでよかった。
待ち合わせ場所に着く。あの日と同じように蓮が笑顔で出迎えてくれる。
それだけでもう、泣きそうだった。
蓮が開口一番に言った。
「今日、何だか雰囲気違うね」
「え? なんか変??」
「いや、別にいーけど」
「それはどういう意味でいったのか知りたいな。教えてくれない?」
前はここで口籠った。
今回は彼の気持ちを知りたくて聞いた。
「だって顔がニヤける。俺のためにおしゃれしてきたのかなとか思っちゃって、表情取り繕うのに必死で、正直何て言ったか覚えてない。俺、いま何て言った?」
全身から力が抜けそう。でも今回は、自分の気持ちを素直に伝えるって決めたから。
「いや、別にいーけどって言って無表情だったから、洋服やメイク失敗したかなって不安になっちゃった」
「えぇっ、まじでそれはない。すごく可愛いし、めっちゃ似合ってるし、何なら大好物だし!」
うれしい。蓮に可愛いっていってもらうのなんて、いつぶりだろう。
きっと顔が赤くなってる。蓮もつられて顔が真っ赤っかだ。
カフェでランチするために並んで歩きお店に向かっていると、1度目と同じ恋人同士とすれ違う。やっぱり蓮は二人の姿を目で追っていた。
「なんか今の二人、気になるの?」
「えっ?いやその......あの」
蓮はいきなり手を繋いできた。
「手を繋いでて、いーなーって思ってた」と恥ずかしそうに言う。
でも手は離そうとしない。
そうだったんだ。私はありもしない決めつけで、蓮は女性を見つめていると勘違いしていた。ああいう感じの女性が蓮の好みのタイプだと思い込んだ。
でも実際は、蓮は「恋人」として二人を羨ましいと思って見てたなんて。
本当に私は想像力が豊かすぎる。
私が黙っていると不安そうな顔で蓮が聞いてきた。
「手を繋ぐの、イヤ?」
「嫌なわけない、自分の手汗が気になっちゃうけど、うれしいよ」
「よかった!今日は絶対手を繋ごうって決めてたんだ」
蓮が笑う。私も笑う。
恋愛は一人でするものじゃない。だから、わからなければ聞けばいい。
違うと思えば、話し合えばいい。
二人で作り上げる関係だから。
「ねぇ、蓮ってコーンポタージュスープ好きだよね?」
「好きだよ。何で急に? 俺、美咲に好きって教えたっけ?」
「ふふ、そんな顔してるの。私はパンプキンスープが好きだよ」
「顔?どんな顔だよそれ。でも女子って、芋栗カボチャが好きだよね」
「これから行くお店、美味しいスープがあるといいね〜」
スープがあってもなくても、二人だから楽しめるこの時間を大切にしよう。
美咲は蓮としっかり手を繋ぎながら、お目当てのカフェに入っていった。
長編『ルール国のロミジュリ20XX』を連載しています。
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よかったらぜひ、ご覧ください。




