第25話 セリアの借り
仮泊所を出たところで、バルドたちが待っていた。
逃げ道を塞ぐように、旧搬送路の幅いっぱいへ槍が並ぶ。
「面倒な場所まで来たな」
バルドが笑う。
「昔と同じだ、セリア。お前はまた荷物の護衛に失敗する」
その言葉で分かった。
こいつは昔、セリアを売った側だ。
セリアが剣を構える。息は静かだった。
「二年前の南坑道。あなたは負傷者を捨てて荷だけ運んだ」
「荷の方が高かったんでな」
「今日は逆よ」
踏み込んだのはセリアの方だった。
細い通路で長槍は不利だ。なのにバルドはそれを分かっていて構えている。腕は立つ。だが、今のセリアは二年前の置き去りにされた剣士じゃない。
一合、二合、三合。
火花が散る。
四合目で槍の穂先が壁へ食い込み、五合目でセリアの剣が柄を断った。
バルドがよろける。
「終わり」
切っ先が喉へ止まる。
セリアは殺さなかった。代わりに、胸元から通行許可札を引きちぎる。
札の裏には、バレスタ家の仮印が押されていた。
「借りは返したわ」
バルドは悔しそうに唾を吐いた。
「どうせ上は止まらねえ。荷は全部、貴族の物になる」
「死者の荷は死者の物よ」
セリアの声は硬かったが、震えてはいなかった。
通路を抜けたあと、俺が水筒を渡すと、彼女は短く笑った。
「見苦しくなかった?」
「いや。きれいに片がついた」
借りを返した顔は、少しだけ軽そうだった。




