第二章:眩しき光
みなさん、こんにちは!前回のお話、楽しんでいただけましたか?
今回のエピソードでは、いよいよ勇者がアカデミーに入学します。
そこで、お姫様は恋のライバルと出会うことに――
彼女は勇者を誘惑しようとするが、果たして彼の心を射止めることができるのでしょうか?
「君には、それをやり遂げる才能がない……」
翌朝、晴れわたる空の下、爽やかな風が村を優しく包み込む。
あの夜の出来事がまるで夢のように感じられるなか、レオンとリナリアは無事にエスメラルヤ王国へと戻ってきた。
孤児院の前では、ミラや子供たちが手を振って見送っていた。
長年共に過ごした兄のような存在との別れに、皆の瞳が潤んでいる。
レオンは、馬車に乗ったリナリアの隣に静かに腰を下ろし、王都へと向かう車輪の音だけが耳に残った。
二日後 — エスメラルヤ王国 王宮・謁見の間
夕陽が高いステンドグラスの窓から差し込み、光のプリズムが大理石の床にきらめいていた。
重厚な空気が漂う玉座の間――その中央で、レオンは片膝をつき、王の前に跪いていた。
リナリア王女は玉座の横に立ち、微笑みを浮かべながらレオンを見つめている。
「レオン。」
重々しくも威厳ある声が、謁見の間に響き渡った。
「数日前の勇気ある行動により、そなたは騎士の称号に値する者と証明した。」
レオンは黙って深く頭を垂れる。
しかし王の声は次第に厳しさを帯びた。
「だが、勇気だけではこの剣を持つ資格はない。この剣を持つには、まず正式な訓練を受けなければならん。ペリタラヤ学園にて。」
「父上っ!」
リナリアが声を荒げる。
「もしまた魔物が現れたら、レオンはどう戦えばいいの!?剣がなければ…!」
王は静かに目を閉じ、そして言った。
「確かに、お前の言うことも一理ある。だがこれは、初代勇者の遺剣だ。剣術も学ばぬまま渡すなど、遺産を無駄にするだけだ。」
重々しい足取りで玉座を降り、王は語り続ける。
「ウリン・ヌハ――初代勇者は魔王を討ち、世界に平和をもたらした。しかし歴史は繰り返す。五百年ごとに魔王は蘇り、再び混沌をもたらす。」
王はレオンを見据えた。
「今は第三十五紀。魔王が目覚める時代だ。そして、そなたはウリン・ヌハの血を引く者である。」
謁見の間に張り詰めた沈黙が流れる。
「だが剣の技を学ばぬうちは、この剣は渡せぬ。その間――剣は、我が直属の従者に預ける。そなたの監督役も兼ねてもらう。」
コツ、コツ、コツ…
扉の奥から足音が響き、整った身なりの青年が現れた。
「陛下のご命令に従い、参上しました。」
その青年の名は――アリヤ・ディナタ。
「彼が、そなたの監督を務める。そして定期的に進捗を報告してもらう。」
「父上っ!だったら、私が監督すればいいじゃない!私も学園に行くのに!」
「剣術科と魔術科は別だ。ずっと一緒にはいられまい。」
「剣術も習うわ!リオンのために!」
「無理だ。お前に剣の才能はない。」
「…………はい。」
再び静寂が戻った。
王は玉座に戻り、最後の命を下す。
「よいか。準備せよ。明朝、ペリタラヤ学園へ出発だ。」
翌朝 — ペリタラヤ学園・正門前
朝日が山の頂を照らし、霧がゆっくりと晴れていく。
その山腹にそびえる壮大な学園――ペリタラヤ学園。
貴族や王族の子女、将来の支配者たちが剣と魔法を学ぶために集う場所だ。
古城のような建物には高い魔法塔がそびえ、門前では水晶のランタンが光を残していた。
次々と王国の馬車が到着し、生徒たちは胸を高鳴らせながら一歩を踏み出す。
その中でも、ひときわ目立つ一団がいた。
エルヴァリン・ヴァレスウィン。リオソリ王国の高位エルフ。陽光のような金髪とエメラルドの瞳。
クラリス・フォン・ルヴァリア。ピュラリス王国。宝石のような扇を持ち、双つ結びの赤髪を揺らして歩く。
スカリンドラ・ジャイェングラトナ。マンダラヴィヤの王女。優美な民族衣装に整った古風な髪型。
シャエラ・ティグレイン。フェラリス族の半獣人。虎の耳と尾を揺らしながら歩く姿は野性と気品を併せ持つ。
そして最後に――
リナリア・ヴェリス。エスメラルヤ王国の王女。銀髪が太ももまで流れ、冷たい美しさに誰もが息を呑む。
はぁ… はぁ… はぁ…
その後ろから、重そうな五つのカバンを担ぎ、汗だくの少年が追いかけてくる。
「王女様、お荷物を寮までお運びいたします。」
そう言って深く頭を下げたのは――レオン。
丁寧な口調ながら、その両手は荷物でいっぱいだった。
「……よろしいわ。」
リナリアは少しだけ彼を振り返り、そっと答える。
その光景に、新入生たちはざわめいた。
「……ふふん、誰かと思えば。氷の王女リナリアじゃないの。」
冷たい笑みと共に現れたのは、クラリスだった。
「ピュラリス王国のクラリス・フォン・ルヴァリアよ。よろしく、レオン?」
そう言って彼に近づく。
「レオン、あなたまだ講堂の場所知らないでしょう?一緒に案内してあげるわ。」
「レオンは私と行くのよ!」
リナリアがすかさず腕を抱きしめる。
「レオン、行きましょう!」
「え、あ、うん…」
戸惑いながらも応じるレオン。
クラリスは扇の後ろで笑いをこらえながら言った。
「ふふふ…残念ね、王女様。でも彼は私と一緒に行くって決めたの。」
そして――
二人の姫に腕を引っ張られるレオンは、まるで綱引きのロープのように引き裂かれていた――。
ペリタラヤ学園 講堂
新入生たちが講堂に集まると、壇上には一人の女性が立っていた。
銀髪を結い上げ、凛とした空気をまとう中年の女性――それがこの学園の指導官、リスティン・アルグレイブである。
「新入生の皆さん――ようこそ、ペリタラヤ学園へ!」
彼女の声が講堂に響き渡る。
「この学園はウィンドビースト王国の地に、数多の王国の合意によって建てられました。ここは、真の魔術師と騎士を育てる場所。名誉を何よりも重んじる者たちのための学び舎です。」
生徒たちはその言葉に聞き入っていた。
「覚えておきなさい。名誉は剣よりも重く、魔法よりも鋭い。」
*パチパチパチ…*
拍手が鳴り響く。
「では、最初の試験に移ります。魔力測定です。」
リスティンの横に置かれた祭壇の上には、巨大な水晶球が鎮座していた。
「この魔力測定球に手をかざしなさい。あなたの持つ属性と力に応じて、光の色が現れます。」
すると、元気な声が空気を裂くように響いた。
「はいっ!先生!一番にやっていいですかーっ!?」
跳ねるように前へ出てきたのは、虎耳とオレンジ色の髪を持つ少女――シャエラ・ティグレイン。
リスティンが微笑む。
「名を名乗りなさい。」
「南方のフェラリス族、シャエラ・ティグレインですっ!」
彼女が手を置くと、水晶球がまばゆい黄金の炎を放ち、獣のような気配が漂う。
「火属性…加えて、獣霊の気配……」
「すごい…」
ざわめく生徒たち。
「面白いわね。」
リスティンは魔法板に記録をつけた。
その直後――傲慢そうな声が前方に割って入る。
「ちょっと通ってくれるかな?次は俺の番だ。」
新入生たちをかき分けて登場したのは、気取った態度の赤髪の少年だった。
「お聞きなさい!俺の名はイチゴ・シンダーソーン!あの伝説の大魔術師、イグナヴォス・シンダーソーンの孫だ!この学園に俺の力を刻み込んでやる!」
*ピクッ*
リスティンの額がわずかに動く。
(……偉かったのはおじいちゃんでしょ)
「はいはい、手を置いて。」
「ふふん、見ていろよ!」
イチゴが手を置くと、紅蓮の光が一気に広がり、講堂の天井を赤く染める。
「うおっ、けっこうすごい…」
「……ふむ」
リスティンが淡々と記録を取る。
次に進み出たのは――レオン。
彼は迷いを浮かべた表情で、水晶球の前に立った。
脳裏に、幼い頃の記憶がフラッシュバックする。
――「役立たずめ…お前も母親も奴隷に売り飛ばしてやる…」
ギュッ…
拳を握る。
「レオン!あなたならできる!信じてるわ!」
リナリアの声が飛ぶ。
レオンは顔を上げて、そっと笑った。
「ありがとう…」
そして手を置いた――
*パァァァアアアア!!*
純白の光が講堂を包み込む。
「ま、眩しい…!」
「な、なんだこの光は…!?」
そして――
*パキィィィンッ!*
水晶球が――砕けた。
「きゃああっ!?」
「ま、まさか壊れたのか!?魔力で!?」
「イチゴより…遥かに強かったぞ…!」
リスティンがレオンの背中を見つめる。
(――この子…やはり只者じゃないわね)
剣術試験・屋外訓練場
「さあ次は剣術試験だ!」
大きな声で叫んだのは、黒毛の獣人――教官のサイキョウである。
「俺と一対一で戦え!15分持ちこたえれば合格だ!」
「む、無理でしょそんなの!」
「15分はやりすぎでは…?」
「甘えるなあああああ!!戦場でそんな泣き言が通じるか!!」
そこへ手を挙げたのは――アリヤだった。
「では、3人一組で戦ってもいいでしょうか?」
「ふむ…グループ戦というのも実戦的だな。よし、許可する!」
「ただし!制限時間は30分だ!俺の愛剣を使うぞ!そして――」
「円の外に出たら失格だあああ!!」
アリヤ、レオン、そしてヘルマンの3人が武器を構えて前に出る。
「計画通りにいくぞ!」
「了解!」
レオンが最初に突撃する。鋭い剣筋がサイキョウを唸らせる。
だが――
*ブンッ!*
サイキョウが剣を振り回し、ヘルマンとレオンを吹き飛ばす!
「ふははは!これが78の死闘をくぐり抜けた俺の力だ!」
「おい、もう一人はどこ行った…?」
*カンカンカンカンッ!*
背後から甲高い金属音!
「何だこの音はああああ!?」
振り返ると、アリヤが盾を叩きまくっていた。
「俺の耳ィィィーーッ!!」
サイキョウは耳を塞いでパニック!
――そう、彼は過去にBランクの蝙蝠型モンスターと戦い、耳に深刻な後遺症を負っていたのだ。
「まさか…その弱点を…」
隙を突いて、レオンとヘルマンが連携突撃!
*ズバァァッ!!*
サイキョウが膝をついた。
「……ま、参った。合格だ…」
だが――
他の生徒たちが、次々とアリヤたちの作戦を真似し始めた。
*カンカンカンカンカン!!*
サイキョウは、耳を押さえながら次々に敗北していく――!
「ちょ、ちょっと待て!?なんだこれはあああ!?俺の威厳がああああ!!」
そして最後に――
「よし!次の試験だ!体力テスト!グラウンドを2時間ぶっ通しで走れええええ!!!」
「えええええええええっ!?!?!?」
騎士科の生徒たちは阿鼻叫喚。
怒り狂ったサイキョウに追いかけられ、悲鳴をあげながら走り回る羽目に。
魔法科の生徒たちは、ただただ遠くからその様子を見守るしかなかった――。
あはは、正直に言うと……今回の話を続けるの、ちょっと迷ってしまって、少し変な感じになってしまったかもしれません。
でも、楽しんでもらえたら嬉しいです!✨
次回からは、いよいよ「死の森」でのサバイバルが始まります!
モンスターだらけの危険地帯で、レオン、リナリア、クラリス、ヘルマン、ルディ、そしてアリヤたちが挑みます!
それと、レオンとアリヤがどうやって出会ったのか――そんな過去のエピソードも、少しずつ明かしていく予定です。
続きは来週をお楽しみに!