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青い紙飛行機

作者: rai

午前4時35分

まだ外は真っ暗

家族を起こさないよう

わたし、東條凪は静かにリビングへと降りる

ーカチッ

またいつもと変わりのない1日が始まるのかなんて思いながら朝の支度をし、お弁当と朝ごはんの用意をする



しばらくしてお父様とお母様が起きてきた

「おはようございますお父様、お母様」

「あぁ」

「おはよう凪」

「朝ご飯の用意ができましたので、お顔を洗い次第、お先に座っていてください」

「あぁわかった」


「いただきます」

そう言って手を合わせ家族全員で食事を済ます

「そういえば凪、突然だが、お前にはお見合いをしてもらう」


「え?!お、お見合い、ですか」

お父様が唐突にそんなことを言うので驚きでご飯を食べる手が止まってしまった

「あぁ神宮寺商事の一人息子神宮寺湊人くんと来月に約束をしているから空けとくんだぞ」


「お父様、申し訳ないのですが私にお見合いなんて、」

「文句を言うでないぞ。もう約束はしてあるのだから。相手に恥をかかぬよう礼儀作法を確認しておけ」


「...はい、お父様。お父様の名に泥を塗らぬよう意識して臨みます」



ーコツン

静寂の中お茶碗を置く音が響く

「佳永子俺は先に車に行ってる、食べ終わり次第行くぞ」

「わかりましたわお父さん」

「いってらっしゃいませ、お父様」

「あぁ」


ーコツン

「じゃあ凪、お仕事に行ってくるわね。私たちが帰ってくる前に家事を全て終わらせておくのよ、わかってるわよね?」

「はい、重々承知でございます。いってらっしゃいませお母様」


お父様とお母様がお仕事へと向かったあと

食器を片付け

わたしも家を出る


「いってきます」

誰もいない家に向かって言っても意味ないか


さっきは驚きで気にかけてもなかったけど

神宮寺 湊人ってどこかで聞いたことがあるような気がする


電車に揺られながら流れる景色を見ていた

わたしたち家族は血のつながりのない親子

わたしは幼い頃実の両親に捨てられたらしい

この後お父様とお母様に拾われたとのこと

わたしの実の両親はお父様の実の弟らしい

だからかお父様の実家へ帰るとき毎回お会いするのだが、そのたびに元気だったかと聞いてくる

わたしのことを捨てたのに...

そんな実の両親が夢に出ていることが多々ある

わたしは夢の途中で決まって目を覚ます

それは明け方だったり真夜中だったり。

その時わたしは必ず涙をこぼしている

涙が乾けば夢の内容はもう何もかも忘れていて

妙な不気味さだけがわたしを包む

そうやってぼーっとしているうちに朝がやってきて

いつもとなに一つ変わらない一日が始まる

わたしはそれもう何十回何百回と繰り返している




ぼんやりと考え事をしていると

いつのまにか駅に着いていた

駅から学校近い

駅から徒歩15分の位置にある

けど坂があるから少しきつい

特に今の時期は暑さで溶けてしまいそうになる

だから夏の教室は天国のようなもの



校門をくぐり、上履きに履き替える


教室の前で深呼吸をして

窓側の後ろから二番目の席へと腰かける


「東條さ〜んおはよ〜う」

これもいつもの光景

「東條さ〜ん?」

クラスの中心人物いわば一軍女子のリーダーである花園 凛さんが顔を近づけて言ってくる

「...おはようございます」


「あっれ〜?声が聞こえないな〜?」


少し沈黙が続いた後に

花園さんが耳元で「生意気」と言ってきた

がこれももう慣れた

クラスのみんなの見て見ぬふりにも慣れた

ほんとは慣れちゃダメなんだろうけどこればかりはもう仕方がないと思っている


家でも学校でも私の居場所はない

これも仕方がないこと

私はこうなる「運命」なんだから


ーキーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン

ーガラガラガラ

はいみんなー席に座ってー!

その先生の掛け声を合図に椅子を引く音が教室中に響く


「今日は通常日程ですが明日はテスト返しの時間割となっているので間違えないように!

あと朝会後に今日の日直の東條さんと神宮寺くんの2人は手伝ってほしいことがあるので前に来てください

ではこれで朝会を終わります」

「起立 姿勢 礼」

「ありがとうございました」

「先生、なにを手伝えばいいですか」

「申し訳ないんだけどこのプリント先生1人で持っていくの大変だから2人とも協力して職員室に持ってきてくれない?」

「わかりました」

「ごめんね〜じゃあお願いね〜先生の机に置いてくれたらいいから!」

そう言って先生は教室を出ていった

「俺これ持つよ」

「あ、ありがとうございます、神宮寺くん、」

...ん?

神宮寺くんってどっかで聞いたような...って

「ええ?!」

「おわっ?!びっくりしたぁ」

「あ、えご、ごめんなさい!」

「あ、いや別に怒ってはないんだけど...」

「あの、はい、あのーちょっと大事なこと思い出しただけですので...」

「ならよかった?」

「ご、ごめんなさい急に叫んじゃって

驚かせちゃいましたよね、」

やっちゃった...と落ち込んでいると、神宮寺くんはぷっと噴き出した

「東條って少し素っ気ない人だと思ってたけど、結構おもしろいやつだな」

そう言って神宮寺くんはまた笑った

「...無理してそんなお世辞言わなくても大丈夫ですよ、

そういうこと言われるのは、もう慣れてるので」

わたしにおもしろいという言葉は似合わない...

わたしはそんな大それた人じゃない

「お世辞なんかじゃないよ」

え?

「と、東條はもっと自身持ってもいいと思う」

「東條が思ってるよりもっと東條はいい人、だと思う、けど、」

「へっ?!」

「あ、いや、ごめんきもちわるかったよな」

「...そんなことないです!」

「えっと、そう言ってもらえて嬉しかった、です、ありがとう、ございます」

恥ずかしくて目を逸らしてしまった


しばらく沈黙が続き、再び神宮寺くんの方を見たがまたすぐに目を逸らしてしまった


「...重いか?」

「あ、いえ!全然大丈夫です!」

「そうか」

そこで会話は終わってしまった



ーガタンゴトンガタンゴトン

家への帰り道、電車に揺られながら神宮寺くんのことばっか考えていた

あの時、神宮寺くんの耳が赤かったのは気のせいだったのだろうか

それが気になって仕方がない







ーチャポン。

「ふぅ」

わたしは朝出来なかった家事を全て済ませてから、お風呂に入った

わたしは夏の半身浴が好き

冷房で冷えきった身体を半身浴で温めると疲れが取れるらしい

お風呂に浸かっている時は勉強とか家事とか人間関係とかなにも考えなくてよくて、相手の機嫌を気にしなくてもいい

ふと、自分の身体を見る

そこには無数の傷跡があった

これは、小学生の頃、お父様に暴力を振るわれた時のもの

皿洗いや洗濯などの家事、数学や英語など勉強をやらされ、

失敗するたびにしつけという形で暴力を振るわれていた

おかげで今は家事も勉強も一通りできるようにはなったし、失敗することもないから高校生になってから暴力を振るわれたことは一度もない



ーバフッ

ベットにダイブする

今日の朝から神宮寺くんのことがずっと頭の片隅にある

ってダメダメ!これで勉強とか家事に影響がどうするのわたし!

もう、暴力を振られるのは、勘弁でしょ、

とにかく今は考えないようにしよう


眠い...

今日はものすごく疲れた

いつもとなにも変わらない1日だったはずなのに...

目をつぶり、そんなことを考えてるうちに、わたしは眠りの世界へと落ちていった



『お前まだそんなこともできないのか!何度も何度も!』

おとーさま?なんでそんなに怒ってるの?怖いよ、おとーさま

『何度も教えているだろう!』

ひっ、なぎが悪いの?あやまるからそんなに怒らないで?

ーバチン

『いたい!いたいよぉ』

『これはしつけだ!俺に恥をかかせた罰だ!』

『いたいよぉごめんなさい...ごめんなさい...』



ードタバタドタバタ

『おばさん、なぎ手伝うよ!』

『あらなぎちゃん!おばさんのこと手伝ってくれるの?』

『うん!』

『なぎちゃんいい子ね〜ねぇ由美さんもそう思うわよね〜』

『え、えぇ』

『違うよ?なぎはいい子じゃないよ?なぎは悪い子だよ?だっておとーさまにたくさんめーわくかけちゃうもん』

『...なぎ、』

『ごめん、ごめんね...』

『なんであやまるの?』

『由美おばちゃんはなにも悪いことしてないよ?』

『しゃざいはね、悪いことした人だけがするんだよ?』

『だから、由美おばちゃんはしなくていいの!』

『っありがとう!』

『悲しいの?泣かないで?』

『大丈夫だよ、おばちゃんは強いから!』

『かっこいいね!由美おばちゃん、かっこいい!なぎも由美おばちゃんみたいに強くなる!』

『なぎちゃんならなれるよ!大丈夫!』



午前4時35分

アラーム音と共に起きあがる

「んっ」

手の甲になにかが落ちてくる感覚がした

...涙?

まぶたに触れるとたしかに涙の跡があった


昔の、夢...

あの時はすごく純粋で、ただただ言うことを聞いてたな

今思えば、あの時の方が、心は健康だったのかもしれない


今日もいつもと変わりのない1日が始まる

こう思うのも習慣化してきている気がする

朝起き、支度をし、家族の朝ごはんとお弁当を作り、

お父様とお母様を見送り、それに続いてわたしも家を出る

電車に揺られこの景色を見るのももう何回目だろう

これは学校についても変わらない

教室の前で深呼吸をし、席へと向かう

なに一つ変わらない

ーそう、思っていた


「東條、おはよう」

「え?お、おはようございます!」

神宮寺くんから、挨拶?!

これは予想外だった

まさかあの神宮寺くんから挨拶が来るなんて...

昨日は少し印象と結構違うなと思っていたけど、気のせいではなかったみたい

もっと、もっとたくさん話してみたいな...



「ここの公式は、例3のように...」

今は絶賛数学の授業の真っ最中

いつもは一応真面目に授業を受けているつもりだけど

今日はなんだか眠くて集中できない

ウトウトしながら外を眺めていたらいつのまにか授業は終わっていた


「ふぁ〜やっと終わったぁ」

「眠そうだな」

「あ、ご、ごめんなさい!」

「なんで謝るんだよ。別にお前なんもしてねーじゃん」

「え?」

そんなことを言われたのは初めてだった

わたしは今まで人前であくびや少しでも姿勢が崩れた場合、家に帰ってからお父様によく叱られていた


わたしの家庭は他の家庭とは違うことは気づいていたけど、この点に関しては普通だろうと思っていた



「なぁ東條」

「はい、どうしました?」

「急だけどさ、連絡先交換しねーか?」

「連絡先ですか?全然いいですよ」

「え?ほんとにいいのか?」

「はい!ダメな理由なんて一つもないですよ」

「へぇ意外。東條、結構こういうの慎重なタイプかと思った」

「そう、見えるんですかね?」

「おう、少なくとも俺にはそう見えたな」

そう見えるんだ、わたし

結構無愛想なの、かな?

少しわがままを言うとクラスの人と話してみたいし、同じ学校で友達を作りたい

でも...

やっぱり、怖いものは怖い、

またあの時のように全て否定されて、罵倒されて...

お腹がギュルギュルして、頭が痛くて、胸がドクドクして、胸の奥がチクリとする感覚を、もう味わいたくない...

それはもう、、家の中だけで十分...


「東條?なにかあったか?」

「あ、ううん!なんでもないです!」



午前4時5分

わたし、東條 凪は朝から眠たい目を擦ってスマホと睨めっこしてる

『東條、起きた?』

という連絡にどう返そうか悩んでいるのだ

これはどう返すべきなのだろう

『今起きました!』なのか

それとも『起きてます!』なのか

いや、もしかしてどっちもあまり変わらない?


結局わたしは

『おはようございます。ちょうど今起きました!』

と送った

って返信早っ?!

えーっとえーっと、なんて送ろうぅ

ーゴンッ

痛っ

神宮寺くんの返信の早さにあたふたしてると頭を打ってしまった。

同時に落ち着きを取り戻した


「何慌ててるの自分!そろそろ支度しなきゃいけないでしょ!」

自分の頭をコツンと叩き、ベットから出ていつも通りの朝を過ごした



「おはよ」

「お、おはようございます」

「東條さ、その敬語やめない?」

「いや、それは、、、」

「少しずつでもいいからさ」

「う、うぅ、わ、わかりました」

「あっいやわかっ、た」

「ふっ」

「あ、また鼻で笑った!」

「いや笑ってないけど?w」

「いや笑ってるでしょ!絶対笑ってる!!」



今回はしっかり目を合わせれた

少しだけだけど距離を縮めれた気がする

神宮寺くんは、わたしのこと、どう思ってるんだろう...

この世界に人の心を覗ける能力があればいいのに...

なんて望んでしまった自分がいた




お父様にお見合いをお話しをもらってから2週間がたった

学校ではよく話すようになってから

神宮寺くんとは少しずつ

距離を縮めていってる

ますますお見合いの日が楽しみになってくる

それと同時に緊張も感じる


わたしは神宮寺くんのことが"好き"なんだ...

すごくクールで怖いイメージがあるけど、話すと意外と優しいとことか、さり気ない気遣いができるとことか

神宮寺くんのそういうとこが"好き"なんだ



そうやって神宮寺くんのことを考えているといつの間にか学校に着いていた

上靴を履き、階段を上がり、教室に入ろうとしたその時

教室の中がザワザワしていることに気づいた

どうしたんだろう

わたしの存在に気づいた瞬間、みんなが黙り教室の中は一気に静かになった

でもその理由はすぐにわかった


「なに、これ、」

私の机の上は

水でびしょびしょに濡れている

机の周りはビリビリに破られた紙が散らかされてある

「え!大変!この机誰がやったの!やった人出てきてよ!」

始めに声を発したのは花園さんだった

「東條さん気にしなくていいからね」

花園さんは私に一歩ずつ近づきこう言った

「う、うんありがと...」


すると、神宮寺くんが雑巾とゴミ箱を持ってきてくれ、

「東條、はい」といい私にも雑巾を渡してくれた

「俺も手伝うよ」

そう言ってくれたが花園さんが

「神宮寺くん!大丈夫だよ!私が手伝うから!」

といい神宮寺くんの持っていた雑巾を取ろうとした

が神宮寺くんはその手を振り払った

「いや数人でやった方が早く終わるだろ」

「花園も手伝ってくれるんだったら

あそこの雑巾掛けからとってくれ」

嬉しかった

なんでかよくわからないけど

胸の奥がすごく熱い気がする

なんだろうこの気持ちは




ーガラガラ

はいみんなー!席に座ってー!

椅子の引く音が教室中に響く


数人係で片付けたから先生が来るまでにはなんとか間に合った


先生にはバレずに済んだけど、授業中はショックが大きく、全く集中できなかった


「東條、大丈夫か...」

普段とは違うわたしに気づいた神宮寺くんは話しかけてくれたけど

今は誰とも話したくなかった

だから

「大丈夫、」

そう素っ気ない態度で言ってしまった


その後も神宮寺くんと全く話せなかった

目が合うこともなかった

その日の会話はわたしの素っ気ない一言で終わってしまったのだ

「神宮寺くん、嫌いになったかな」

そんな不安で頭がいっぱいで

あまり眠れなかった



「まただ...」

今日もまた地味な嫌がらせを受けている

誰がしているかはわからないが

あの日から数日間ずっと嫌がらせを受けている

机を散らかされ、ノートを見えないくらいまでグチャグチャにされ、筆箱がゴミ箱に捨てられ、

そして今日は靴箱が荒らされている

誰の仕業なのだろうか

何日続くのだろうか

様々な不安で頭がいっぱい

いやいや、切り替えなくちゃ

人前でこんな姿を見せちゃダメ

もっとシャキッとしなきゃ

と言い聞かせ自分の両頬を叩いた



ーキーンコーンカーンコーンキーンコーンコーン


「やっと終わったー」


「次の授業は、数学か。その次は理科で移動教室だし今のうちにお手洗い行っておこうかな」



私はいつも手前から2番目を使っている

特に理由はないけど



確か今日小テストだったっけ

最終確認したいから早く戻らなきゃ


「東條さーん」


「ふぇ?!は、花園さん?!ど、どうしたの?」


「いやぁ大した用事じゃないんだけどね

単刀直入にいうね

湊人くんと馴れ馴れしく話すのやめてほしいの

次神宮寺くんと話たらどうなるか、わかってるよね?」


そう言って花園さんは教室に戻って行った


私も花園さんを追うようにモヤモヤを抱えた状態で教室に戻った


「東條」

「へっ?!」

「ぷっ、びっくりしすぎだろ」

「あ、ごめん」

「なんで謝るんだよ」

「ご、ごめ、いや、なんでもない」

「...小テストの勉強した?」

「いやそれがまったく...」

「へぇ東條にしては珍しいな」

「き、昨日は家に帰ってすぐ寝ちゃってさ」

「...少し疲れた顔してるけど大丈夫か?」

「え、あ、うん!大丈夫だよ!」最近少し忙しいから疲れが出てるのかなー?なんてね!

ほ、ほら!見ての通り!元気だよ!」

そう言って席を立ちばんざーいといい手を広げた

その時、花園さんと目があい、

「あ、そろそろ先生来るから座らなきゃ!」

と慌てて話を遮った



授業に集中できない

これでテストを落としてしまったらお父様に叱られてしまうというのに

さっきの花園さんの言葉が離れない

もしかして、あのひどいいたずらは花園さんの仕業なのかな


昨日の夜からずっと考えてばっかだ

テストが近いというのに...


次は体育か

体操服に着替えなきゃ

着替えようとロッカーを開けたら

服が破られ汚されていた


「えー!東條さんの体操服きったなぁ!もしかして洗濯せず持ってきたの?

お母さんと喧嘩中ー?」

「この年で反抗期とかうけるんですけどー」

私は服を持って教室を飛び出し、トイレに駆け出した

「ひどい...」

多分これは花園さんたちがしたんだ...

「こんな服じゃ体育に出れない...今日の体育は休むしか...」


ーガラガラ

「みんな、さすがにもう行ったよね、」

ボロボロになった服をロッカーに収めて

体育館へ向かった


「先生」

「おう東條か、東條体操服はどうした」

「えっと、今日体操服、忘れちゃって、すみません、、」

「東條が体操服忘れなんて珍しいな、まあ忘れたなら仕方がない

今日は見学してろ次からは気をつけろよ」

「はい、気をつけます、すみません、、」



私は体育館の端っこに座り見学していた

最悪なことに明日も体育がある

幸い家にもう一枚あるけど

また今日と同じようなことされたらどうしよう

ふとみんなの方を見ると神宮寺くんがこっちを見ていた

がすぐに目を逸らしてしまった


神宮寺くんへの接し方がわからない

花園さんはきっと神宮寺くんと話したら今よりもっとひどいことをするからという意味で言ったんだと思う

何年もいじめられて来たからこそ

勘がそう言ってる


ーキーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン

授業終了のチャイムがなり、

神宮寺くんと話さないよう急いで準備したが

やはり話しかけられてしまった

「東條、今日の放課後さ、」

「ご、ごめん、今日は用事があるから」

そう言って急いで教室を出た

ほんとうは神宮寺くんともっと話したい

わがままだってわかってても....神宮寺くんともっと話したいよ。

けど、話してしまったら花園さんが何をしてくるかわからないから怖い...

少し前まではここまで強くなにかをしたいって思ったことはなかった。

神宮寺くんの存在が、わたしの中でどんどん大きくなっている。

神宮寺くんにそばにいてしまったら迷惑をかけてしまうってわかってるのに


今日もいつも通り過ごしていたが

昼休憩に事件が起きた

「あれぇ?私の財布がない!」

「えー!それやばいじゃん!どんな財布?」

「白い財布!」

「えーそれ東條さんじゃなーい?」

「え?いや、私じゃない!」

「嘘だー!だってさっき東條さんが白い財布持ってたの見たもーん!ちょっとカバン見せて!」

「え、ちょっと、」

「あ!あったー!やっぱり嘘つきだー!」

「嘘つき!嘘つき!」

と花園さんたちに嘘つき呼びされる

花園さん達に続きクラスメイトたちも

手拍子をし始める

その空気耐えれず教室を飛び出し屋上へ向かう


屋上の風は冷たい

熱がこもってるわたしの身体を冷ましてくれる

わたしを包みこんでくれる

やっぱり屋上が一番落ち着く

基本的に人が来ることがないから

一日の中で唯一弱音を言える場所

慰めの言葉とか共感の言葉とかが返ってくるわけでもないけど

わたしは言葉にするだけで十分

この場で聞いてる人がいなくても

きっと空の向こうで誰かが聞いてくれてる

こんな情けない弱音に耳を傾けてくれる人がいる

わたしはそう思っている


しばらく経ってわたしは重たい足を動かして教室に戻った

いつもは余裕持って教室に戻るけど

最近は授業が始まるギリギリに教室に戻っている

できるだけあの教室には居たくないのだ

冷たい視線

甲高い声

漏れる心の声

こんなものに溢れている教室に誰が居たいと思うのだろう

そんなこんなで地理の授業が始まった

地理の担当は担任の先生でもある向井沙織先生

わたしはこの先生のことがあまり好きではない

向井先生はわたしが受けている嫌がらせについて暗黙を突き通してるからだ


数日前、わたしは向井先生に

嫌がらせのことがバレてしまった

その日の放課後わたしは先生に呼ばれ、

今回は小学校、中学校の頃とは違って

ちゃんとわたしの味方をしてくれるんだと胸を撫で下ろしていた

がそれはわたしの勝手な先立った勘違いだった

先生はわたしの話を聞くために呼んだんじゃない

ただ大ごとにするなと釘を刺すために呼んだのだった

結局、わたしの希望は砕けて消え去り

わたしに残ったのは、

寄り添ってくれる人がいないと言う現実だった

自分は我慢する側の人間

つまり、負け組なんだ

ということを突きつけられたみたいで

悔しかった

悲しかった

心にぽっかりと穴が空く音がした

でも不思議と、

涙は溢れなかった


放課後、わたしは花園さんに体育館裏に来てと言われた

行かなかったら何をされるかわからなかったから私には行くという選択肢しかなかった

体育館裏に行くと花園さんと花園さんが率いる人たちがいた

ーバシャン

「え?」

私はバケツに入った水をかけられた


「あはははははw芸術じゃんw変に着飾るよりこっちの方がいいんじゃない?w」

「似合うよー!泥水!これでブス卒業かなー?」


「なんでこんなこと...」


「なにー?そんなこともわからないのー?...あんた目障りなの?私たちの前から消えてくれる?

そうだ!あなたに見せたいものがあるんだ!これ」

そう言ってスマホの画面を見せてきた

そこには別の高校に行った親友が写っていた


「私の友達こいつと同じ学校なんだよねー」


「まさか、」

「そのまさか!こいつがいじめられるのが嫌だったらどうするべきかわかるよね?」

そう言って甲高い声で笑いながら花園さんたちは帰ってった



わたしは立ち尽くしていた

絶望の淵に立っているかように

ただただ立っていた

かけられた泥水は

まるでわたしの頬を伝ってく涙の雫のように

髪や服を伝っていった

わたしの存在が芹を傷つけている

その現実のせいで

自分の存在にも

反吐が出そうになる


わたしに生きている価値はあるのか

人を不愉快な思いにし

人に怒りを覚えさせ

更には人を傷つける

わたしは誰かの得になるようなことを何一つできてない

気づけば、血が出てしまうほど拳を握りしめていた



今日は何をされるのだろうか

それが怖くて怯えながら登校する

教室に着いたはいいものの

教室の中の空気に耐えられず

トイレに逃げ込んでしまう

ふと鏡を見た

笑いが出てしまうほど鏡に映る自分は滑稽だった


こんなに追い詰められているというのに

こんな時に思い出すのは

『紙飛行機になりたい』

という幼い頃の夢

なんてバカバカしい夢なんだ

『えい!』

わたしが飛ばした紙飛行機は

真っ直ぐには飛ばず

数センチ先で落ちてしまった

『また落ちちゃった。もう紙飛行機やめる!おもしろくない!』

『えー?おばさんは紙飛行機、おもしろいと思うけどなー』

『紙飛行機さんもおもしろくないって言ってるよ!』

『あ、そうだ!凪ちゃんに紙飛行機さんのおもしろいお話しをしてあげる!』

『おもしろそう!聞かせて聞かせて!』

『よーし!じゃあここに座って!』

『はーい!』

『むかーしむかし、あるところに飛行機くんと紙飛行機くんがいました。

飛行機くんは迷路がとても上手いです。

でも紙飛行機くんは迷路がとても苦手です

だから周りの大人によく怒られていました。

....... 』

『紙飛行機くん幸せになったの?』

『もちろん!紙飛行機くんの人生はねすごく楽しいものだったと思うよ!』

『よかったね!紙飛行機くんは幸せ!』

『そう、幸せ!紙飛行機くんはすこいんだよ!』

『なんでー?』

『紙飛行機くんはね、周りの大人に怒られて育ってきたけど、でも自由に空を飛んでいるでしょ?

壁にぶつかって落ちることはあるけど、自分の意思で飛んでいくことができるの!』

『なんか難しいけど、紙飛行機くんはすごいんだね!』

『そうだよー紙飛行機くんは簡単にはできないことをしてるの!』

『凪もしたい!凪、紙飛行機くんになりたい!』

『凪ちゃんならなれるよ!』

昔のわたしは何も理解していない

物語に出てくる紙飛行機とわたしでは与えられたものが違う

生まれ持ったものが違う

そんなのはかけ離れた理想でしかない



ーキーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン

『起立』

その声を聞いてハッとした

『姿勢、礼』

『ありがとうございました』

気が抜けたように椅子に座り

今日返ってきた小テストをながめていた

お父様に見せることはできない

でも家で捨ててしまったらバレてしまう

これがバレてしまったら...

「東條...お前大丈夫か?何かあるなら...」

その声を聞いて肩に力が入った

怖い...ついこの間までは、この声を求めていたはずなのに

今はこの声が怖く感じてしまう

この声を聞くことで苦を感じてしまう

「気にしないで!ほんとに、何もないから...」

わたしはその苦から逃げるように

そう言って教室を出た

何もないなんて嘘だ

勝手に口から出たデマカセ

心にも思ってないことをわたしは言ってしまった

そしてその言葉が、嘘が、

神宮寺くんの優しさを踏みいじった

神宮寺くんはきっとわたしのことを嫌いになっただろう

あんな素っ気ない態度取って嫌いにならないわけが無い

きっとお見合いもなかったことにされ、

お父様に叱られるんだ

神宮寺くんとは話したい...

話したい、けど...


全て諦めかけた時

スマホが鳴った

親友の有瀬 芹からだった

「もしもし?」

「あ、もしもし凪ー?」

「どうしたの?」

「...久しぶりに一緒に遊びたいなぁって思ってさ」

「今週の土曜日、予定がなかったら一緒にどっかいかない?」

「今週の土曜日は何も予定入ってないから行けるよ」

「ほんと?!じゃあ行こ!集合時間とかはまた後でメールで話そ!」

「うん、わかった」


お父様に報告しなきゃ

しばらく空を眺めていた

空は青い

清々しいほど青い

雲がまったくない快晴

幼い頃はこの青い空がただただ純粋に綺麗だと思っていた

いつからだろうか

この青い空が綺麗だと思えなくなったのは

(この青い空を見て何も思わなくなったのは)

わたしは今真っ暗闇に包まれている

なんの抵抗もできないままいつのまにか高校生

なんて面白みのない人生なんだろう

多分これが"運命"ってものだろう



ーガタンゴトンガタンゴトン

わたしは電車に揺られ集合場所に向かっている

そういえば芹と久しぶりに会うな

1年くらい会ってない気がする

連絡とかは頻繁にするけど

実際に遊びに行ったのは去年のゴールデンウィークくらいだっけ

昔の思い出しながら向かってると

いつのまにか集合場所についていた

「なーーーーぎーーーーっ!!!」

「わっちょっと芹きついよー」

「だってーだってー久しぶりなんだもーん

悲しかったよー!」

「わかった、わかったから離してー!」

芹は「むぅ」と

拗ねたように頬をふくらませた

ふふっ変わらないなぁ

「今日は珍しくわたしより早いじゃん」

「だって久しぶりに会うんだもん!楽しみすぎて張り切っちゃった!」

「そんなに楽しみにしてくれたの?」

「もちろん!ほらほら!早く行こー!」

「あ、ちょっと待ってよー」


芹と思う存分買い物を楽しんだあと、近くのカフェに来た

「ここのドーナツ美味しいんだよ!

カフェラテと相性抜群なの!」

「そうなの?じゃあそれにしてみようかな」

「じゃあ店員さん呼ぶね!」

「すみませーん!店員さーん!」

芹は慣れたように店員さんを呼び、カフェラテとドーナツを注文した

「そういえば、神宮寺くんだっけ?彼とはどうなの?」

「...最近はちょっと、いろいろあって、、」

「そっか、」

芹は少し間をあけて言った

「凪は、大丈夫?」

「え?ど、どうして?」

「わたしが気づかないわけないでしょ

もう何年の付き合いだと思ってるの?

今日の凪いつもと違うよ」

何も言えなかった

「凪はさ、寂しいんじゃない?苦しいんじゃない?」

その言葉を聞き勝手に涙が溢れてきた

あぁそうかもしれない

芹の言う通りかもしれない

わたしは寂しいんだ

苦しいんだ

抵抗もしないまま、ただただ言う通りに生きてきて

お父様やお母様からの愛も感じず

クラスの人からも罵倒を受ける

その苦しみを誰にも言えず

助けを求めれず

ただ孤独に生きてきた

そんな人生に

気づかなかった

いや、違う

きっと見て見ぬ振りをしていたんだ

気づいてた

きっと気づいてた

ただ、怖かっただけなんだ

思えば今より昔の方が強かったのかもしれない

誰よりも見て見ぬ振りをしていたのは自分なんだ


でも、怖いものは怖い...

こんな生活から、真っ暗な空間から

逃げ出したいはずなのに...

いざ、人と会うと

諦めてしまう

無理だと諦めて、

偽りの自分を演じてしまう

相手の目を気にし

自分の心を閉ざしてしまう

そんな自分が嫌いなはずなのに、

どうしてもしてしまう自分がいる

もし、その言葉を言ってしまったら、

もしそれをしてしまったら、

お父様は、お母様、クラスのみんなは、

神宮寺くんは、

わたしのことを本当の意味で捨てるかもしれない

いきなりそんなことをするなんて、

わたしにはできない...

その時、芹はわたしの心を読んでるかのように言った

「ゆっくりでいいんだよ。いきなりじゃなくてもいい。凪のペースで、ゆっくりでいい。

私は、凪が助けてって言ってくれるその時まで待ってる。

もちろん、私じゃなくてもいい

もっと近くにいる人でもいい」

「近くにいる人って...」

「いるじゃん、神宮寺くんが」

「...でも、、神宮寺くんは、、、」

「凪、信じてみることも大事だよ」

芹はまっすぐは目でそう言った

「すごく怖いことだよね

すごく勇気がいることだよね

でも、凪が助けを求めてくれなきゃ

わたしたちは助けれない。

一度でいい、一度でいいから、私を信じたように神宮寺くんを信じてみるのもいいんじゃない?」


信じる...

わたしが一番苦手なこと

でも、これをしなきゃ、抜け出せない

現実から目を背けちゃ、ダメ

やるんだ、やるんだわたし

勇気を持って...

芹を信じた時のように...


わたしはどうやって、芹を信じたんだろう



午前4時35分

アラームの音で朝だということに気づいた

昨日はずっと昔のことを思い出していた

でもやっぱりわからなかった

わたしはどうやって芹のことを信じたの?

それがどうしてもわからない


登下校中も授業中も休憩時間もずっとそのことを考えていた


「おい東條、ぼーっとするなー授業中だぞ」

こんな状況で授業に集中できるわけがなく、先生に注意されてしまった

「あっはいすみません」


だめだ

最近の自分はだめだ

どうして自分はこんなんなのだろう

自分の不甲斐なさに歯がゆさを感じる

こんな自分が人を信じていいのだろうか

あんな言葉を言ってしまったのに

自分から信じてもいいのだろうか

不安な気持ちがさらに大きくなる

これ以上望んでもいいのだろうか

胸の重りがずっと離れない



時間は過ぎるのが早い

いつのまにかお父様からのお話があって1ヶ月が経った

明日は神宮寺くんとのお見合い

正直この状態では行きたくない

でも行かなければお父様の名に泥をぬってしまうことになる

どうしてもこの不安感が拭えず全く眠れる気がしない


結局、昨日の夜は一睡もできず

疲れと憂鬱な気持ちが混じった顔に追い打ちをかけるかのようにくまができていた

「さすがにこれは隠さなきゃな」

とあかぎれた手でくまを隠す

くまを隠しても

気の抜けたようなぼんやりとした顔が治るわけではない

支度を済ませ、リビングに向かうとお父様の機嫌のいい顔が伺えた

「おう凪、準備は終わったか」

「はい」

「しっかりと気を引き締めていくんだぞ。わかったか」

「はい、お父様」

その後、お父様とお母様の雑談を聞きながら

朝ごはんを作っていた


なかなか箸が進まなかったがなんとか朝ごはんを食べ終え、しばらくしてお父様の背中を追って約束の場所へと向かった


お父様の機嫌が良いためか、少し早く来てしまった

今回のお見合いはお父様の会社にとって

絶好のチャンスなのだ

今回のお見合いが成功したら

神宮寺商事からの援助を受けれることになっている

だからこそ今回のお見合いに関しては

お父様に指摘されることが多かった

今更だけどわたしを無下に扱ってるようで

すごく憂鬱だ


少ししてから全員が揃った

「遅くなってすみません〜!」

「いえいえ!私どもも今きたばかりでございますので!お気になさらず!」

「とてもいい場所ですね〜」

「そうですね〜お見合いにはぴったり!」

「ふふっ面白いお方ですね!」

「いえいえそんな〜」

「そんな謙遜なさらないで!」

「コホンッ、じゃあ、まずは自己紹介からしましょうか

まずは私から

私が神宮寺会社の社長の神宮寺 昌です

こっちが妻の神宮寺 恵美

こっちが息子の神宮寺 湊人ですよろしくお願いします」

「えーでは、私が東條会社の東條 豊で

こっちが妻の東條 佳永子

こっちが娘の東條 凪です

よろしくお願いします」


「凪ちゃんベッピンさんねぇ」

「いやいやそんなお宅の湊人もすごくかっこいい」

「そんなことないですよ〜」


そんな会話が繰り広げられてるが私と湊人くんが口を開くことはなかった


「2人とも、一度2人で庭を歩いてみたらどうだ?」

「あら!いいじゃない!」

「ほら凪!行きなさいな!」

「はい、」

「2人の時間を満喫してこい」


結局流れに負けて

2人きりになってしまった

しばらく無言が続いている

うぅ、気まずい

何を話せばいいのかわからない

それに私が神宮寺くんと話す権利なんて...

先に口を開いたのは神宮寺くんだった

「なぁ、東條」

「ど、どうしたの」

「最近避けてないか?」

「え?」

「なんで俺を避けるんだよ、俺なんかした?」

「それは...」


結局何も話せなかった

話すのが怖かった

きっと神宮寺くんは

何も言わないわたしを呆れ気味に思っているのだろう

そう思っていても

言う勇気が出なかった

『助けて』

その一言を

言う勇気が持てなかった


気まずい空気のまま次の日を迎えた

「...」

今日は神宮寺くんからのおはようがない

これを望んでたはずなのに、

なぜか胸が痛い

私は席を立ち上がりトイレに駆け込んだ

どうすればいいのかわかんない


先生が来るまでには教室に戻ったが、

花園さんたちがこそこそ笑っている

「やっぱ、花園さんだったんだ、私の体操服汚したの」

「チッだったらなにー?」

「...そういうのやめてほしい」

「は?なにあんたが口答えしてんの?」

「きゃっ」

花園さんが私の胸ぐらを掴んできた

「っいいよ、このまま私に暴力振れば証拠が残っちゃうけど

そしたら花園さんたち先生にばれちゃうね」

「チッ調子乗んなよ」

そう言って教室を出て行った

よかった今日は体育服汚されずに済んだ

これで体育も出れる


「きゃっ」

「あっごめーん見えなかったー大丈夫ー?」

「う、うん大丈夫だよ」

「あっそ」

そう言って去ってった

その後、授業に何かされることはなかった


けど、授業が終わったあと

体育館の倉庫に閉じ込められてしまった


「きゃっ花、園、さん?」

「ふっあんたはそこがお似合いだよ

ずっとそこにいな!」

「待って花園さん!」

ーガラガラガラ ガチャ

「花園さん!花園さん!出して!お願い!」


さすがずっとここにいるのは危険だ

今日は猛暑日で気温は37℃

水筒は外にあるから今はないし

誰かが助けに来る気配もない


どうしよう...

そう回らない頭で考えていると

少し目眩がした

「暑いな...」

ードサッ

あれ....?

なぜか床がすぐそこにある


「東條っ!」

「神、宮寺、くん...」

「東條もう大丈夫だ!よくがんばった!」

必死そうに見つめてくる神宮寺くんの顔がぼやける

それは安心のせいか、それとも、、、

「助けに、きてくれて、あり、が、と、」

その言葉と共に意識が途切れた




「んっ」

重いまぶたを無理矢理動かして目を開ける

見慣れない天井

ピンク色のカーテン

「ここ、は、」

わたし...どうしてたんだっけ

「目は覚めた?身体は大丈夫?」

「私、何を」

「熱中症で倒れてたの。幸い神宮寺くんが急いで運んでくれたからこれ以上ひどくならずに済んだわ」

そっか、神宮寺くんが...

「まだ起きたばっかだから安静にしててね」


それから先生の言う通りしばらく安静にしてた

「東條さん 先生ちょっと留守にするから、ちゃんと安静にしててね」

「...はい」

先生が出て数分後、

「莉奈ーほんとに先生いないよねー?」

「大丈夫だって!さっき保健室から出てくの見たから」

廊下から花園さんの声が聞こえる

身体の震えが止まらない

ーガラガラ

「東條さーんいるんでしょー?隠れてないで出てきなよー!」

カーテンの奥に人影が見える...

「怖い、怖い、」

ージャッ

「やっぱいたーちょっとさー付き合ってくれなーい?」

そう言って私の手首を掴んだ

「いやっ!やめて、やめ、て」

「は?東條のくせに口答えすんの?調子乗んなよ!」

花園さんの力がさらに強くなる

「いたい、いたいっ!やめ、て、神、宮司くんっ、助、けて、」

無意識の出た名前

あんな言葉を言ってしまったのに

助けを求めてしまう自分がいる

「お前が神宮寺くんの名前を口にするな!」


「おい、なにしてんだ」

その低い声に

反応を隠せない


まるで来ると予想していなかったかのように目を見開く花園さん

「じ、神宮寺くん?!」

「その手を離せ」

そう言って花園さんのことをギロッと睨んだ

「っ!」

「なんで、なんで神宮寺くんはこいつの味方をするの!こいつのどこがいいの!

顔がいいだけのインキャじゃない!」

「全てだよ」

「は?」

「インキャとかヨウキャとか関係ない、俺は外見も内面も仕草も全て、東條の全てが好きだ」

「っ!」


「っ神宮寺くんも見る目ないね!どうせいつか嫌いになるよ!私はうっすい愛なんていらないけどね!」

花園さんはその言葉だけ残し今日を出て行った

「東條!大丈夫か?」

「神宮寺くんっ!怖かった!怖かったよぉ」

「ごめん、すぐに来れなくてごめん、、、怖かったよな、、、ごめん、、、」

私は神宮寺の胸の中で子供のように泣きじゃくった


「少し落ち着いたか?」

「うん、」

「手首、どうだ?」

「少し痛い、かな、」

「まだちょっと赤いし、包帯かなんかで巻いた方がいいな」

そう言って神宮寺くんは棚を漁り始めた

「包帯どこだよ」


ーガラガラ

「神宮寺くん?なにしてるの?」

「あ、先生いや、あのー、包帯、どこかなーって」

「包帯?包帯なら3段目の奥にある箱の中にあるけど、どこか痛めてるの?」

「あ、いや俺じゃなくて、東條が、、、」

「東條さん?大丈夫?手首見せて?」

「あ、はい」

「少し赤いわね」

先生は私と神宮寺くんの顔を交互に見てクスッと笑った

「先生、まだやることがあるから神宮寺くん、花園さんに包帯巻いてあげてくれる?」

「え、あ、はい」

「じゃあよろしくね!」

そう言って先生はそそくさと保健室を出ていった


先生が出ていった後神宮寺くんは私がいるベットに移動して言った

「東條、手、出して」

「う、うん」

神宮寺くんの手、暖かい...

「きつくないか?」

「うん大丈夫」

「よしっ、一応包帯で巻いたけどあまり動かすなよ」

「うん、ありがとう」

まだ、少しボーッとする

「っ?!」

気づいたら神宮寺くんの顔が目の前にあり、頬に手が重ねられてきた

「まだ少し熱いな。顔も赤いし、まだ寝てろ」

確かに少し熱い気がしなくもないけど、結構元気になったし、それにこれ以上授業を欠席するのも気が引ける

「もう結構元気にになったし大丈夫だよ!」

そう言って立った途端軽い目眩がした

「っあぶな、やっぱまだ体調が良くないだろ、いいから無理せず寝てろ」

そういわれ渋々ベットに戻った

ベットに入った瞬間とてつもない睡魔に襲われてそのまま眠りについた


「んっ」

「起きたか」

すぐ隣から聞こえた声に、わたしはうなずく

「うん....」

「体調はどうだ?」

「結構楽になってきた、ずっと、いたの?」

「あぁ先生がいなかったからな、一人にするわけにもいかないだろ」

「ありがと...」


「東條」

「どうしたの?」

「助けてほしくないのか?」

「っなんで...」

「もうこれ以上お前の辛い姿は見たくないんだよ...

助けてほしいなら、言えよ...」

「っ....」

言ってもいいのかな...

信じてもいいのかな...

その時芹が言ってくれた言葉を思い出した

『凪、信じてみることも大事だよ』

『一度でいい、一度でいいから・・・神宮寺くんを信じてみるのもいいんじゃない?』

そうだ

わたしは最低だ

とても大事で肝心なことを忘れていた

芹はわたしのせいでいじめられたんだ

昔も今も

わたしを助けるために

芹は自分のことよりもわたしのことを真っ先に気にかけてくれる

だから信じれたんだ

芹からの愛を感じとれたんだ


神宮寺くんは、わたしによく話しかけてくれる

机が汚された時も真っ先に手伝ってくれ、『大丈夫か?」と声をかけてくれた

大丈夫だ

大丈夫だよ凪

神宮寺くんならきっと助けてくれる

ずっと

わたしは勇気を出して言った

「神宮寺くんっ助けてっ!」

「あぁ、よく言った」

わたしは我慢ができず泣き崩れてしまった


少し落ち着いてしばらく経った後、先生が戻ってきて一人で帰らせる訳にはいかないからと親に電話してくれようとしたが断った

お父様が迎えに来てくださるわけがない

このことをお父様が知ったらきっと『俺に恥をかかせるなと俺だけ言っただろう!高校生にまでなって俺に恥をかかせる気か』と言われ、また暴力を受けるだけ...

だったら辛くても一人で帰る方が断然マシ


「ほんとに一人で大丈夫なの?」

「はい、体調はすごくよくなったので、」

「先生!俺が家まで送って行きます」

「そう?先生も心配だからそっちの方がいいけど、神宮寺くんは大丈夫?」

「はい」

先生は「じゃあお願いね」とだけ言い残し保健室を出て行った


神宮寺くんは本当にわたしを家まで送ってくれた

家、少し遠いはずなのに

「神宮寺くん、今日はほんとにありがとう」

「気にすんな、んなこと気にせずに自分の体調を気にしろ。ちゃんと休めよ」

神宮寺くんはそう言って背中を向けて帰っていった


ーガチャ

「ただいまぁ」

といっても家には誰もいない

お父様とお母様が帰ってくるのは

大体19:00くらい

それまでにわたしは家族全員の夕飯を作り終えていなくちゃいけない

作り終えてなくちゃお父様に叱られてしまう

小学校低学年の頃まではこれが普通だと思っていたけど

小学校4年生くらいの頃からわたしの家庭が普通ではないことに気づいた

何度かお父様に反論しようとしてみたけど

何か小さなことでも言い返してしまうとしつけとして暴力を振られてしまう

だから、もう...


『神宮寺くんっ助けてっ!』

ふとさっきのことを思い出した

神宮寺くんなら、家の事情からも助けてくれるのだろうか

この家から逃げ出しても、助けてくれるのだろうか

助けを求めたけど、それは学校でのことであって、

神宮寺くんはわたしの家の事情を知らない

もう一回信じてもいいだろうか

神宮寺くんにとって迷惑にならないだろうか

家の事情を話したら、離れるのだろうか

そんなことを考えてしまう

まだ、自分の悪い癖が抜けきれない


そんな時ある連絡が来た

花園さんたちはいじめの件がばれ、出席停止とのこと

神宮寺くんいわく私の他にもいじめていたらしい

とにかく一時的でも花園さんと離れれて良かった

神宮寺くん、ほんとに助けてくれたんだ...

信じてよかった

少しだけど肩の荷が降りたような気がした



「凪、今日は湊人くんとお出かけだろう」

「はい」

「湊人くんをガッカリさせないように気をつけろよ」

「はいお父様」

静寂に包まれている食卓にそんな会話が響く


ご飯を食べ終わってから

服を決めて

メイクをして

髪の毛をセットした

やっぱりこうやって女の子らしいことをするのは楽しいな

普段、家族で出かけるというのはほぼほぼない

外に出るとしても買い物に行くくらい

だからこうやってしっかりと準備をするのは、友達と出かける時しかないから

わたしはこの時間が好き

本当は休日でもメイクの研究とかしてみたいけど

そんなことする暇があるなら勉強をしなさいと言われてしまうのだ


そんなこんなで一通り準備は終わった

少し早いけどそろそろ行こうかな

わたしはワクワクとドキドキを胸に抱えたまま、集合場所へと向かった

「やっぱり早めに着いちゃったなぁ

まだ時間あるし、音楽でも聞いて待ってようかな」

音楽はわたしの心を落ち着かせてくれる大切なもの

わたしの人生ではとってもかけがえのないもの

音楽がなければわたしは今ここに立っていなかったと言っても過言ではないほどだ

大袈裟だって思う人もいると思うけど

わたしにとってはほんとに大事なもの


あれから15分くらい経った

「東條!」

ふと声が聞こえた方を向くと神宮寺くんが

息を切らしながら走ってきた

「ごめん遅れて、待った?」

「ううん全然待ってないよ!ほら!集合時間の7分前!遅れてないよ!」

神宮寺くんは「ふっ」と笑った

「行くぞ」

「うん!」

それからしばらく歩き、遊園地についた

「わぁ大きい!」

「そんなにびっくりするほど大きいか?遊園地って大体このくらいだろ」

「そうなの?!じ、実はわたし遊園地来たことなくて、、わからないんだよね」

「本気か?」

「遊園地来たことないって初めて聞いたぞ」

「わたしの家、家族全員でどこかの遊びに行ったことがないんだよね、」

「だから動物園とか水族館とか、そういうとこに行ったことなくて、、、」

「お前ほんとに社長令嬢か?」

「失礼な!わたしは立派な社長の娘ですぅ」

わたしは頬を膨らませ神宮寺くんを見た

なんだかバカにされてるみたい

「なら今度連れてってやるよ。お前の行きたいとこ全部」

「え?ほ、ほんと?!」

「あぁ」

「嬉しい!」

動物園とか水族館に行けることも嬉しいけど

何より神宮寺くんとの時間が増えるのが嬉しかった


それから思う存分遊園地を楽しんだ

人生初のジェットコースターに観覧車、

たくさんのアトラクションに乗ってたくさんおいしいものを食べた

すごく幸せだった

ただ、幸せな時間は過ぎるのが早い。

昼前に来たはずなのにいつのまにか夕方。

この時間がずっと続けばいいのに...


「楽しんだか?」

「うん!すっごい楽しかったよ!」

「ならよかった。じゃあ次、行くぞ」

「え?次?」

「あぁ今日はこれで終わりじゃない」

遊園地を出て、しばらくまっすぐ歩き、右に曲がった

右に曲がった先には、なんと、ホテルがあった

「...へ?!ほ、ほ、ホテル?!じ、神宮寺、くん、これは、、、気のせいだよ、ね?」

「気のせいじゃない、、、すまん、俺の

父さんが、、、一応断ったんだが父さんこういう時だけ頑固でな、半強制的に、、、」

「なら、しかたない、ね?」

いやいや何言ってんの自分!

何も仕方なくないでしょ!

え?え?え?

頭の整理が追いつかないよぉぉぉ


混乱している状態でチェックインを済ませ、部屋へと向かった


ーガチャ

「...へ?!」

「...はぁ?!」

べべべべットが1つ?!

なんで???

神宮寺くんは深呼吸をし言った

「東條、お前はベットで寝ろ、俺はそこのソファで寝る。」

「え?!いやいや、それはダメだよ!それならわたしがソファで寝る!」

「大丈夫だ、それに女にソファで寝させる男がどこにいる」

「それでもダメなもんはダメ!」

ソファなんかで寝たら、首とかいろんなところ痛めちゃう

神宮寺くんには散々迷惑かけたのに

こんなところでもそんなことさせる訳にはいかない

それに、お父様がそのことを知ったらどうなるか...

「じゃあ一緒に同じベットで寝るか?」

「へっ?!」

神宮寺くんがあまりにも淡々と余裕な笑みを浮かべて言うから、びっくりして少しの間フリーズしてしまった

神宮寺くんと、同じベットで...

考えれば考えるほど顔が熱くなっていくのが感じとれた

でも、ソファなんかで寝てもらうより一緒に寝た方が断然マシ

私は一拍置いて言った

「い、いいよ」

私の顔は今とても赤いだろう

あまりの恥ずかしさに下を向いてしまったが、神宮寺くんの声色があまりにも驚いているかのようだったから

無意識に顔をあげてしまった

まさに神宮寺くんの顔は少し赤かった

そんな神宮寺くんが可愛いと思ってしまった

神宮寺くんは何も言わずわたしの手を引き、ベランダへ向かった

たくさんの走る車に

高いビル

そして高いビルの隙間から覗き込む夕日

こんなに景色に目を奪われたのは久しぶりだ

わたしは手すりを握りしめまっすぐ夕日を見つめた

綺麗...

あぁ自分は心の底からこの夕焼け空を綺麗と思えるようになったんだ...


「東條」

「どうしたの?」

「景色、綺麗だな」

「...うん、すっごく綺麗」

神宮寺くんは手すりを握っていた手を離し、言った

「なぁ東條」

「どうしたの?」

「俺は不甲斐ない、俺は頼りない、

表面上では強がってばっかで

だけどほんとは心の中で怯えてる」

沈んでいく夕日を見つめながら、神宮寺くんは言葉を紡いでいく

「神宮寺、くん?」

透き通った黒い瞳

まっすぐな瞳で見つめられている

「東條」

神宮寺くんは一拍置いてあの言葉を言った

「こんな不甲斐ない俺だけど、良ければ結婚を前提にお付き合いをしてもらえませんか」

「っ!」

まっすぐで少し不安そうに見つめてくる神宮寺くんの顔が少しぼやける

でも今回は熱中症なんかじゃない

嬉しくて、涙が止まらないからだ

「はいっ!こちらこそ、よろしくお願いしますっ!」

「ほんとか?!こんなに不甲斐ない俺でいいのか?!」

「うんっ!」

「また、助けに行くのが遅くなるかもしれないぞ?」

「その時は、お仕置き!」

「ふっ、お仕置きか、そりゃ怖いな、お仕置きを受けないように、俺の姫をしっかりと守らなければなっ!」

神宮寺くんは私を抱きしめた

「じ、神宮寺くん力強いよぉ」

「仕方ないだろ!ずっと前からこの瞬間を待ち侘びてたんだからよっ!」

「っ!いつまで泣いてるの!」

「それは凪もだろっ!」

「っ?!い、今凪って、」

「もう、お前は俺の彼女だ苗字呼びは、卒業してもいいだろ、」

「ふふっそうだね!湊人!」

そうしてわたしたちは夕暮れを背景に甘い口づけを交わした


後日、わたしたちはお互いの両親に付き合ってことを報告した

「...ってことで俺ら付き合うことになった」

「あらあらそうなの?!それはめでたいことだわ!お祝いしなきゃ!」

「じゃあお前らの新居も用意しなきゃなぁ」

「は?!」

「え?!」

「し、新居?!」

「そうだ、結婚を前提に付き合うんだろ?じゃあ同棲もしなきゃいけないだろ」

「いやいやいや!父さん!気が早いだろ!」

「早くないだろ」

「結婚前になれるのも大事だろ」

「劇でもそうじゃないか。どれだけ練習しても本番だと想定してリハーサルすることが大事だろ?」

「いや、それとこれは違うだろ、、、」

「豊さんもそう思いますよねー?」

「えぇ!おっしゃる通りです!」

「父さん、、、」


唐突だけどこういう流れで神宮寺くん、いや湊人との同棲が始まった

新しい始まっても朝のルーティンとかは特に変わってない

朝起きて支度をして2人分の朝ご飯とお弁当を作る

しばらくしてから湊人が「くあっ」とあくびをしながら起きてくる

「湊人おはよう」

「おはよ」

「ふふっまだ眠そうだねぁ」

そう思ってたら後ろからギュッと抱きしめられた

「えっび、びっくりしたぁ!」

湊人ってば急に抱きついてくるんだもん

「なに笑ってるんだ」

「いやー?大したことないよー?ただ湊人がまだ眠そうだなぁって思っただけ!」

「あっほら!朝ごはんもう少しでできるから顔洗ってきて?」

「ん」

やっぱり子供だなぁ

初めはびっくりしたけど、今はこうじゃないと湊人じゃないんだよねー

家では子供っぽいのに

家から一歩出たら男らしくなるからそのギャップにも驚いちゃうよねー

「顔、洗ってきた」

「ちょうど朝ご飯できたから座ってて?」

「俺も運ぶ」


そうだ

新しい生活が始まって変わったことといったら

家事を手伝ってくれる人がいるってこと

今までは甘えるなと言われて全て一人でやってたけど

湊人はよく家事を手伝ってくれる

そのおかげで自分の時間もしっかり取れるようになったし

何より楽になった


「湊人、ありがとね」

「ん何がだ」

「ご飯運ぶの手伝ってくれたでしょ?」

「それくらい普通だ」

「それだけじゃないよ他の家事も手伝ってくれるでしょ?」

「当たり前だ全ての家事をやらせるなんてことするわけないだろ」

「ふふっありがと」

「お、おう」

私はほんとに幸せものだ

ほんとにいい人と巡り会った

その幸せを感じてから、とても別の景色を見ているように感じる

もし、今したいことは何かと聞かれたら

『昔の自分へ紙飛行機を飛ばしたい』

そう迷わず答えるだろう


このたびは『青い紙飛行機』をお読みいただき、また最後までお付き合いいただきうれしく思います。

凪と湊人のお話、いかがだったでしょうか。

初めての作品なので、みなさんがどのような気持ちで読んでくださったのか、とてもどきどきしております。

日々を過ごしていく中で学校、家庭、職場、社会を通して縛られているような感覚や生きづらさを感じたこと、みなさんにもあるのではないかなと思います。

今回はその『生きづらさ』がテーマとなっています。

『生きづらさ』にはたくさんの種類があると思っています。

生活が苦しく経済的な生きづらさを感じている方、罵倒や非難を受け心の問題によって生きづらさを感じている方、また寂しさを抱え生きづらさを感じている方。

しかし、今の時代この生きづらさと戦うことは避けて通れない道ではないかと思うんです。

でも、今更何かをしても遅い。ましてや1人でなんて、どうにかできるわけない。

自分なんかが...

どうせ誰かに馬鹿にされるんだ...

そう思ってしまう。

でもその自信のなさがわたしたちの未来を壊しているのではないか

この先どんな未来が待っているか分からない

だからこそ、誰かに助けを求める。

勇気がいることだけど、その勇気がこの先の未来を明るくするかもしれない。

そんな考えを元にこの物語を書きました。

どうかみなさんも自分自身を大切にしてください。

改めて、この物語をお読みいただきありがとうございました。

このお話がみなさんに勇気を与えれることを願っております。



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