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第1話①

⚠️冒頭のシーンで自殺表現が出てきているため、苦手な方は読むことをお勧めいたしません

 マンションの屋上。


 すごく遠くの方まで街が見える。道路を走る車や街を行き交う人々。夕焼けを取り込もうとする夜の闇が、もうすぐそこまで迫っている。

 

 しかし、空が暗くなっているのとは逆に、自分の胸は高まっていた。

 

 私は衝動のままに転落防止の柵を越え、限りなく広がる景色を望む。自分の手足が小刻みに震えていることに気がついた。人間の本能的なものであるのか。


 けれども、飛びたいという欲望には逆らえなかった。目を閉じ息を止めて、風を感じる。


 風が止んだと同時に、意を決して私は足場のない空中へと踏み出す。身体がグルンと180°回転し、頭が下になる。


 どんどんの落ちる速度が増しているにも関わらず世界が止まっているように見えた。逆さに見るものは、言葉に表せないほど綺麗だった。


 間違えなく、人生で1番最高の眺めだ。だって、ここから飛び降りなければ誰も見れない、見ることのできない景色なのだから。私はこれで特別な存在になれたはずなんだ。

  

 思わず笑みが溢れた。


 その眺めを目に焼き付け、ゆっくりと目を閉じた。悔いはない。そこから先の記憶は真っ暗だ。



 ▶︎▶︎▶︎


 ひんやりとなにか冷たい感触がした。重たいまぶたをこじ開け、自分に感覚があることに驚く。私は死んだはずだったのだ。


 現代医療は死んだ人間を復活させるような、必殺奥義を持っているようには思えない。この混乱を一言で表すとしたら、「は?」という言葉以外見当たらない。


 しかも、起きたら知らない天井だったなんて、転生ものの確定演出かよ。まさか、転生したら悪役令嬢だったみたいなことはないだろう。ないと信じたい。うん、多分ない。


 一旦冷静になろう。さっきまでのいい感じの語彙力はどこいった。


 壁も床もこの建物は、全てコンクリートのようなものでできているらしかった。そして、窓らしきものが遥か頭上に一つ。そこからは月光が、降り注いでいた。見るに牢獄らしかった。


 すると、武装した男性がこっちへやってきた。

「おい!ローザ・アルジューヌ。やっと起きたか。」

あ、どうも丁寧に名前を教えてくれてありがとうございます。私、ローザっていうのね!


 ってなんだこの西洋っぽい名前!私の、悪い予感が的中していそうで鳥肌がああ、、、それどころか、寒気も、、、


 「お前が今後、余生を過ごす場所が決定した。海の近くの監獄だ。国のために働いて、今まで行ってきた悪事を悔やむといい。」

見張りなのか、兵士なのか知らないが冷淡な声でそう言い放った。

 

 普通、転生ものって幼少期とか処刑される前とかに転生するもんじゃないのか。もう処刑されてしまっては変えようがなくない!?

 

 せっかく、異世界に来たんだからなんか面白いことでもしようと思ったのに。


 「いいか。移動は明後日、太陽が昇りきって、、、


 見張りがその言葉を言い終わる前に、矢のようなものがその人の頭に命中。同時に、床に倒れてしまった。

 

 すると、今度は鬼のような形相の男の人が走ってきて、私が入っている牢の前で止まった。その男の人は、私のことをチラッと見て、盛大な舌打ち。


 いや、なんだこの人。初対面の人に舌打ちって。まあ、初対面じゃないかもしれないけど!

 

 そして、その人は少々わざとらしいため息をつくと、牢に手をかざし力を込め始めた。徐々に鉄製の牢が溶け、みるみる液体になってしまった。

 

 うええええ!?鉄の融点って確か、1500℃ぐらいじゃない?そんなことを数十秒でやるのは、やはりここは現実世界ではない。

 

 自分の頬をつねる。う、痛い。ここは、夢じゃない。


 絶望と混乱を極めている私をよそに、男の人は私の腕をやや乱暴に引っ張って

「ついてこい。」と、言った。


 断ったら殺す!みたいな目つきをしていたので、当然抗うことはできなかった私であった。



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