──*──*──*─ ギルド
建物の中へ入ると正面にはフロントが在る。
既に何十年も使われていない事が見ただけでも十分に分かる。
マオ
「 ボロボロじゃんか……。
誰も居ないみたいだな。
ギルド長さんは何処に居るんだ? 」
セロフィート
「 ノックの音は屋敷内に響きます。
その内、出て来ます。
待たせていただきましょう 」
セロフィートは〈 テフ 〉で椅子を構成する。
椅子の上に腰を下おろし腰掛けたセロフィートは、魔法マジカル陣サークルの中から本を取り出す。
本の間あいだには栞しおりが挟まっている。
マオがセロフィートを想いながら手て作づくりした栞しおりである。
マオ
「 セロ!
自分だけ椅子に座るなんて狡ずるいだろ!
オレの椅子は? 」
セロフィート
「 ギルド長レスタ・グインノルチさんが来くる迄、剣術の訓練をしてください。
十じゅう分ぶんに広いですし、出来るでしょう 」
マオ
「 ひっどぉ~~ 」
セロフィート
「 酷ひどくないですし 」
餌エサを口くちの中に含ませたリスの様ように左さ右ゆうの頬ほほを膨らませたマオは、腰に提さげている鞘から愛剣を抜くと振り始めた。
???
「 客人とは珍しい。
まさか、モンスターを倒して来きたのかな? 」
コツコツ──と、上じょう品ひんな足あし音おとが聞こえて来くる。
階段から誰かが下おりて来きたのだ。
マオは右側の階段に目を向けた。
階段から下おりて来きたのは真まっ白しろな翼を4枚、背中に生はやして黒くろ髪かみを靡なびかせる美しい男性だった。
左さ右ゆうの瞳は赫あか色いろだ。
マオ
「 ──誰ぇ!? 」
???
「 ギルド長ちょうのレスタ・グインノルチだが?
君きみ達たちは──、遭難者か? 」
セロフィート
「 初めまして、ギルド長ちょうのレスタ・グインノルチさん。
ワタシはセロフィート・シンミン、彼はマオ・ユーグナルと言います。
マオとワタシは冒険者です。
此方こちらの “ ギルド ” に加入したくて訪問しました 」
レスタ・グインノルチ
「 ギルド加入?
ふむ…………そうか。
まぁ、良いいだろう 」
マオ
「 えっ?!
良いいの?? 」
レスタ・グインノルチ
「 此こ処こに辿り着く迄にモンスターと戦ったのだろう。
私の魔法マジックでモンスターの出現率,遭遇率を上げていた。
実じっ質しつ10名のAエィランク冒険者が全滅してもお・か・し・く・な・い・強さのモンスターと戦闘せざるを得ない状況にしていたのに、奇くしくも君きみ達たちは無傷で辿り着いている。
実力は冒険者ランクAエィ以上の強さを有ゆうする強つわ者もの冒険者なのだろう。
追い返す訳が無い。
《 ギルド紹介所 》の書類は持って来きているね 」
セロフィート
「 此方こちらです 」
セロフィートはポーチの中から紹介状と2枚綴つづりの書類を取り出すと、ギルド長レスタ・グインノルチに手渡した。
レスタ・グインノルチ
「 確たしかに受け取った。
2階の部屋を好すきに使ってくれて構わない。
明あ日すにでも《 ギルド紹介所 》へ提出すると良いい 」
マオ
「 明日あしたぁ!?
明日あしたも森を抜けて≪ 村 ≫まで行かないといけないのかよ…… 」
マオが両手で頭を抱かかえながら思い切り嫌いやそうな顔で両肩を落として呟つぶやくとレスタ・グインノルチはクスリ──と小さく笑う。
レスタ・グインノルチ
「 それなら心配無用、問題無い。
地下には≪ 村 ≫の墓地へ通つうじる隠し通路が在る。
其そ処こにはモンスターは出ないから安心すると良いい 」
マオ
「 地下に隠し通路が在るんだ……。
凄いな…… 」
セロフィート
「 では御言葉に甘えて部屋を借りるとしましょう 」
マオ
「 雨あま漏もりとか大丈夫なのか??
中も随分と荒れ果てて痛んでる様ように見えるけど…… 」
レスタ・グインノルチ
「 ははは……それはごもっともだな。
魔法マジックを掛けているから雨あま漏もり,隙間風かぜの心配は無い。
食事が未まだなら厨房と食堂も好すきに使ってくれて構わない。
私は自室に戻っているよ。
( 翼を生はやした私の姿を見ても平然として驚かないとは──。
亜人種を見た事が有るのか?
冒険者を名乗るにしてもあ・ま・り・に・も・軽装過ぎる。
白ずくめの方ほうに関しては冒険者にも見えないのだが…… )」
レスタ・グインノルチのはセロフィートから受け取った書類を持ち、階段を上あがって行った。
マオ
「 追い出されなくて良よかったな 」
セロフィート
「 そうですね。
2階へ上あがる前まえに厨房を見ましょう 」
マオ
「 そだな 」
──*──*──*── 食堂
マオとセロフィートは1階に在る厨房へ移動する。
どうやら厨房は食堂の奥に在るらしく、食堂を抜けなければ厨房へ入はいる事が出来ない様ようになっているが、食堂は直すぐに使えそうにない程ほどにボロボロだった。
レスタ・グインノルチが食堂を使っていない事が判明した。
マオ
「 ……………………食堂がこ・ん・な・有・り・様・じゃあ、奥に在る厨房も期待は出来ないよな…… 」
──*──*──*── 厨房
セロフィート
「 その様ようです。
厨房の長く使われていない様ようです 」
マオ
「 うっわぁ~~…………。
食堂よりも酷ひどい有り様さまなんだけどぉ~~。
調理器具も調理道具も綺麗にしないと使えないじゃんかよぉ~~!! 」
食堂だけでなく、厨房の悲ひ惨さんさも目まの当たりにしたマオは両肩を落として深い溜め息を吐はく。
両手で頭を抱かかえてし・ゃ・が・み・込・む・寸すん前ぜんの様ような顔をして厨房の中を見渡している。
マオ
「 セロ………………どうするんだよ、これぇ~~!
オレ、今日きょうは掃除なんてしたくないよ…… 」
セロフィート
「 マオがする必要は無いです。
〈 器うつわキ人にんニン形ぎょうカ 〉にさせます。
厨房,食堂,屋敷内ない,裏庭,中庭…等などの掃除は5体に任せましょう。
明あ日すには厨房,食堂,フロントホールは見み違ちがえる程ほど綺麗になってます。
裏庭と中庭は数すう日じつ掛かるでしょうけど 」
マオ
「 〈 器うつわキ人にんニン形ぎょうカ 〉に任せれば安心だな!
今夜はぐ・っ・す・り・休めそうだよ 」
セロフィート
「 それは何なによりです 」
セロフィートは〈 テ原質フの源みなもと 〉を原動力りょくにして動く〈 器うつわキ人にんニン形ぎょうカ 〉を召喚する。
5体の〈 器うつわキ人にんニン形ぎょうカ 〉に対して的てき確かくな指示を出し、掃除,片かた付づけ,整理整頓,修復,修繕…等など々などを任せた。
マオ
「 そう言えば、天使族が作った〈 器うつわキ人にんニン形ぎょうカ 〉は魔ま法ほ力りきを原動力りょくにして動いてたんだっけ? 」
セロフィート
「 ≪ 天上界 ≫で暮らしていた天使族は “ 天てん聖せい力りき ” と呼んでました。
“ 天使が使える聖せいなる能力ちから ” を略した言葉です。
時代が変わると更に略され “ 天てん力りき ” と呼ばれてました。
≪ 地上界 ≫で暮らしていた人類は “ 魔ま法ほ力りき ” と呼びますけど、呼び方が違うだけで同じモノを指してます 」
マオ
「 呼び方が違うって紛まぎらわしいよな 」
セロフィート
「 ≪ 地上界 ≫の人類が魔法マジックを使える様ようになったのは、≪ 地上界 ≫へ降りて暮らす事を選んだ天使族の末裔──古代人の血を知らず知らずに脈みゃく々みゃくと受け継いでいるからです。
天使族が≪ 地上界 ≫へ降りなければ、人類が魔法マジックを使える様ようになりませんでした 」
マオ
「 そうだな…… 」
セロフィート
「 2階へ上あがり使う部屋を決めましょう 」
マオ
「 そうだな! 」
マオとセロフィートはフロントホールへ移動すると2階へ続く階段を上あがった。