キノコン:本体
「 それでは、報告に入らせて頂きますエリ! 」
キリッとした顔付きになったキノコンは、予め用意していたホワイトボードに絵を描きながら、解り易い様に報告を始めた。
キノコン:本体
「 ──報告は以上となりますエリ 」
レスタ・グインノルチはキノコンの報告を聞いて、愕然としていた。
「 魔獣が出現する《 エインシャンの森 》にしか棲息していない 」と云い伝えられているツィラグスタォクを捕獲する為に、≪ 帝都 ≫を任されている皇帝の馬鹿息子こと第5皇子パドロックエル──は、≪ 帝都 ≫の地下室で完成させた魔獣を奏者達に命じ、《 エインシャンの森 》へ向かわせた。
魔獣討伐の為に《 エインシャンの森 》へ入った討伐班の冒険者達を捕らえ、特殊な魔結晶を用いて魔獣と冒険者を強制的に融合させた。
魔獣に変え、奏そう者しゃ達に命めいじ、《 エインシャンの森 》の中に在る幾いくつもの≪ 村 ≫を襲撃させ、壊滅させていたからだ。
そう、魔獣合成獣キメラに襲われた≪ 村 ≫は、レスタ・グインノルチが暮らしている≪ 村 ≫だけではなかったのだ!!
他ほかの≪ 村 ≫も同様に襲撃され、理不尽に蹂じゅう躙りんされ、壊かい滅めつさせられていたのだ!!
幸さいわいな事にレスタ・グインノルチが暮らしている≪ 村 ≫は、セロフィートとマオが訪れ、暫しばらく滞在する事となり、キノコンも居いた事に依って、運うん良よく衛まもられたに過ぎなかったのだ。
無論、他ほかの≪ 村 ≫にも《 ギルド紹介所 》が在り、多くの “ ギルド ” が在り、冒険者も大おお勢ぜい居いる。
自分達と同様に冬に入はいる前まえの時期には恒例行事として《 エインシャンの森 》へ入はいり魔獣討伐を始めている。
もしかしたら、同様に《 エインシャンの森 》で行方不明となった冒険者が多く出ていたかも知れない。
全すべては稀き少しょうなツィラグスタォクの赤あか毛げの毛け皮がわを手に入いれる為──という実じつにく・だ・ら・な・い・理由により、幾いくつもの≪ 村 ≫が壊かい滅めつさせられる事となった。
大おお勢ぜいの冒険者と大おお勢ぜいの罪つみの無い村人達が尋じん常じょうではない多た大だいな被害を被こうむり、無慈悲に尊とうとい命いのちが奪われた。
平穏だった暮らしを奪われ、幸せを壊され、不幸のドン底ぞこに落とされた。
報告の内容を聞いたレスタ・グインノルチは、実じつに複雑な心境だった。
マオの眷属となる前まえの自分ならば、並なみ々なみならぬ怒いかりで全身が奮えていた事だろう。
怒いかりを堪こらえきれず修しゅ羅らとなり、檻オリに入いれられ見み世せ物ものにされている加害者達を容赦無く斬り、皆みな殺ごろしにしていたかも知れない。
然しかし、現在のレスタ・グインノルチは≪ 村 ≫だ襲われ、大おお勢ぜいの罪つみの無い村人が達,手て練だれの冒険者達が犠牲となり、命いのちを落としたと言うのに──、沸ふつ々ふつとも怒いかりが沸き上あがって来こない。
≪ 村 ≫で起きた非常時じの問題に対しては、村人の1人として立場で、身内の問題として関わるべき事こと柄がらだと言うのに──、まるで「 外がい野やで起こった他ひ人と事ごとの様ようだ 」と冷静に受け止とめている自分に対して、戸と惑まどいを隠せない。
主人あるじであるマオが無事であるなら、他ほかがど・の・様・な・目に遭あっていたとしても、大たいして気にならない事こと柄がらだ──と受け流している状態に変わりつつある事を当然の様ように自然と受け入いれている自分の変化に対して、レスタ・グインノルチは激はげしく困こん惑わくしていた。
そんなレスタ・グインノルチの様子を見み兼かねたのか──、セロフィートが静かに口くちを開ひらいた。
セロフィート
「 今やレスタさんの優先順位の頂点には、マオが君臨しています。
今こん後ご、レスタさんの人生に於おいては、何なにが起きてもマオの安全が何なによりも最優先となります。
主人あるじを守ま護もる眷属となった以上、マオだけの剣つるぎ,マオだけの盾たてで有り続けなければなりません。
他ほかの事こと柄がらに感情移い入にゅうが出来なくなるのは至極当然の事であり、自然な事です。
自分の変化に戸と惑まどい,困こん惑わくをしても、自分を責めたり悲観する必要は無いですよ 」
レスタ・グインノルチ
「 セロ── 」
セロフィート
「 ≪ 地球テッラ ≫の核かくコアから生うまれた〈 皇コウ 〉の眷属とは、そういうものです。
今は受け入いれられなくても、時間が経たてば知らずと慣れます。
大丈夫ですよ 」
レスタ・グインノルチ
「 ……………………そう……か…… 」
セロフィート
「 最優先はマオであっても、心こころと身体からだはレスタさんのモノです。
主人あるじであるマオに縛られる必要は無いですよ。
マオが〈 皇コウ 〉にならない間あいだは、レスタさんの自由時間です。
好きに生いきて、永ながい人生を謳歌してください。
きちんと子孫も残せますし、思う存分子こ作づくりに励はげまれても大丈夫ですよ 」
レスタ・グインノルチ
「 ………………………………そ…それは……遠慮しておこう……(////)」
セロフィート
「 そうです?
悟ご空くうさんは毎日の様ように、子こ作づくりに励はげまれているそうですけど──。
子孫を残したがらないとは…………不思議ですね 」
セロフィートは本ほん当とうに「 理解が出来ない 」という様子で、不思議そうに首を傾げている。
マオには内緒で眷属を使い、新あらたな実験でも始めてしまいそうな雰囲気だ。
レスタ・グインノルチ
「 し…子孫に対する考え方かたは人それぞれだと思うぞ?
ワタシの種族は元もと々もと子孫繁栄に対して淡たん白ぱく的なのかも知れないしな…………ははは…… 」
セロフィート
「 種しゅの存続に対して積極的ではない傾向は短命種テランより長命種メトセラに多く見られますね 」
セロフィートは静かに「 ふふふ 」と上じょう品ひんに笑うが、レスタ・グインノルチは何な故ぜだか笑えなかった。
翼を隠している背中に悪お寒かんが走り、ムズムズしている。
レスタ・グインノルチは「 話題を変えよう 」と考え、捕とらえられている犯人達について切り出す事にした。