⭕ 剣術稽古 1
──*──*──*── 1週間後
──*──*──*── ギルド
──*──*──*── 中庭
レスタさんがギルド長をしている “ ギルド ” に加入して1週間が過ぎた。
1週間も経つと中庭は見違える様に綺麗になっていて、カラフルなスライム達も心無しか嬉しそうに動いている様に見える。
マオ
「 可愛いなぁ~~(////)」
中庭に在る噴水からは清潔な水が涌き出ていて、古代人の石像もピカピカになっている。
噴水の水の中にはカラフルなスライム達が気持ち良さそうにプカプカと浮いている。
マオ
「 うぅ~~ん、やっぱり可愛い♥ 」
大きな池の在る裏庭は、〈 器人形 〉が色んな花が咲き誇る美しい庭園にビフォーアフターしてしまった。
池の水も透き通った綺麗な水に変わっていて色んな魚も泳いでいる。
当然、カラフルなスライムも池の上をプカプカと浮いている。
池に入って水浴びも出来る様になって──、初めて裏庭の池を見た時の様な汚なかった面影は何処にも無い。
裏庭の庭園に設置されている椅子に腰掛けて、読書を楽しむのがセロの日課になったぐらいだ。
庭園から離れた場所には畑と果樹園も作られて、キノコンが甲斐甲斐しく畑と果樹園の世話をしてくれている。
キノコンが手間隙を掛けて、丹精も込めて育ててくれる美味しい野菜や果物を毎日食べれるのは贅沢だし、有り難いと思う。
ちゃっかり茸の栽培も手掛けてるんだから抜かりないよな。
だけど、セロがキノコンを召喚して御世話を任せるって事はだ、この “ ギルド ” をレスタさんから譲り受ける──いや、乗っ取る気満々って事でもある。
どうやら今回もセロは本気だ。
また別荘が増えちゃうな……。
マオ
「 キノコンを召喚するなら、森の中に道を作ったり、《 墓地 》を《 霊園 》に変える作業もキノコンに任せたら良かったんじゃないか?
屋敷の掃除や片付けだって── 」
セロフィート
「 キノコンばかり酷使していては可哀想でしょうに。
〈 器人形 〉も自動人形も疲労とは無縁ですし、酷使するなら〈 器人形 〉と自動人形の方が効率的です。
花壇,庭園,畑,果樹園,食事に関する管理はキノコンへ一任しました。
〈 器人形 〉はキノコンの補佐に回ります 」
マオ
「 乗っ取る気満々だよな? 」
セロフィート
「 はて?
なんの事やらです。
それより、今日はレスタさんが剣術の相手をしてくれるそうですね 」
マオ
「 うん。
そうなんだ!
オレ、古代人と剣術の稽古するの初めてなんだよな~~。
怪我とかさせたりしないか不安なんだ…… 」
セロフィート
「 その心配は杞憂に終わります。
レスタさんは強いです。
マオの方が怪我をしない様、気を付けてください 」
マオ
「 えっ?!
そうなの?
オレ、かなり強くなったと思ってるんだけど── 」
セロフィート
「 昔に比べればマオは確実に上達してます。
だからと言って傲ってはいけません。
未だにワタシから1本も取れていませんし──。
掠りもしない以上、未々と言えます 」
マオ
「 うぅ~~…………。
それを言われると耳が痛いんだよな……。
オレって本当にセロから1本、取れる日が来るのか?
永遠に来ない様な気がするんだけどな~~ 」
セロフィート
「 マオ、自分で限界を決めてはいけません。
可能性を狭め、自信を潰さぬ様に心掛けてください。
常に高見を目指して精進する事です 」
マオ
「 生きてる限り続くんだろ?
高見過ぎて心がポキッと折れそうなんだけどぉ…… 」
セロフィート
「 マオ──、君は心が折れる様な繊細な子ではないでしょうに 」
マオ
「 酷ぉ~~!! 」
セロと他愛無い会話をしていたら、レスタさんが中庭にやって来た。
レスタ・グインノルチ
「 遅れてしまったかな、済まない。
準備に手間取ってしまってね…… 」
マオ
「 レスタさん!
大丈夫だよ、それより格好良いね!
戦う貴族様みたいだよ! 」
レスタ・グインノルチ
「 有り難う(////)
これは魔獣討伐に着る正装だ。
魔獣討伐に登録すると冒険者達へ支給される軍服だな。
セロフィートとマオの分も近々出来上がるだろう 」
マオ
「 セロとオレの着るんだ?
セロも似合いそうだな(////)」
セロフィート
「 それは楽しみです 」
レスタ・グインノルチ
「 マオは剣士だったな。
片手剣か? 」
マオ
「 普段は片手だけど、本来は双剣士だよ。
手加減が上手く出来ないから片手で戦う事が多いんだ。
レスタさんは片手件なの? 」
レスタ・グインノルチ
「 あぁ──、私は大剣士だ 」
マオ
「 えっ?
大剣士なの?
でも、大剣なんて持ってないよね? 」
レスタ・グインノルチ
「 私の剣は特殊でね、普段は小剣としても使えるんだ。
魔力を流すと中剣,長剣,大剣に早変わりさ 」
マオ
「 何その不思議で便利な剣は!
1本で4種類の剣を使い分けれるなんて── 」
レスタ・グインノルチ
「 私は殆んど大剣で戦っていたから、小剣,中剣,長剣の扱いには然程慣れてはいないんだ。
今回の稽古を通して何とか少しでも扱えるくらいには慣れていたと思ってな── 」
セロフィート
「 それならワタシも御手伝い出来ます。
マオの剣術の師匠でもありますし、任せてください 」
レスタ・グインノルチ
「 ……………………そうなのか?
それは心強いな── 」
セロフィート
「 先ずはマオと手合わせをしてみてください。
ワタシはレスタさんの実力を見極めます。
弱点の改善が出来れば、魔獣討伐も捗るでしょう 」
レスタ・グインノルチ
「 そうか。
それは助かる。
マオ、始めるとしよう 」
マオ
「 うん!
先ずは御互い軽いウォーミングアップで良いかな? 」
レスタ・グインノルチ
「 そうだな。
本気で打ち合う前に、互いの力量の差も知りたいしな。
足を地に付けた地上戦と行こう 」
レスタさんとオレは互いに挨拶してから、剣を構える。
今回は愛刀じゃなくて、愛剣を使う。
レスタさんの構えは見た事が無い。
剣術は流派が幾つも有って多いから、知らない構えを見るとワクワクするんだ(////)
オレの心臓はセロの身体の中に有るんだけどな!
オレに剣術を教えて稽古で鍛えてくれた初師匠は、故郷で暮らしているラオインダだけど、セロの守護衛士として旅に出てからは、ずっとセロが剣術の師匠だ。
オレがセロから初めて教わったのは、『 どんなに綺麗事で取り繕って誤魔化しても剣術は殺人剣である 』って事と『 殺人剣である以上、“ 命を奪ってナンボ ” なのが剣術である 』って事だ。
セロの言う事だから素直に間を受けない方が良いって事は、旅の中で十分過ぎる程に学んで来たつもりだ。
相手の命を奪い勝利する為に編み出された殺人剣であっても、使う相手次第で弱い立場の人達を助ける力として活かせる場合もあるけど──、結局は牙を剥く悪者を斬り殺す事になる。
セロの言う事も強ち “ 間違いじゃない ” って事なんだよな。
まぁ、オレが上手く加減が出来ないから相手を殺しちゃう事になる訳だけど──。
セロと出逢う前だって、オレは同胞の命を奪っていた。
だからセロと出逢った頃には既に両手は血塗れの人殺しだ。
悪事を働いていた同胞達から非力な被害者達を助ける為とは言え、殺す必要は無かったのかも知れない。
だけど──、当時のオレは弱かった。
相手を生かしたまま捕らえる事が出来る程の腕前をしていなかった。
自分よりも遥かに実戦経験が豊富で強い相手を前に、殺さずに捕らえるなんて芸当を出来る実力を兼ね備えては無かったんだ。
殺らなきゃ殺られる──そんな状況で佛心なんて出して戦える訳が無かった。
今、オレと真剣で打ち合ってくれているレスタさんは強くて──、もしかしたらラオインダより強いかも知れない。
男性の動きとは思えない程に軽快なステップと軽い身のこなしなのに、腕力は強くて剣も重たく感じる。
受け流したいけど、レスタさんは受け流しをさせてくれない。
セロが見てくれてるのに押されてばかりじゃ、カッコ悪いからオレも本気でレスタさんの隙を見付けては隙を突いてみる。
バランスを崩しても直ぐに体勢を整えて、臆する事なく怯まず攻撃を繰り出して来る。
レスタさんが翼を出して空中から仕掛けて来たら──と思うとゾッとする。
レスタさんは明らかにラオインダより強い!!
本気を出して相手をしてくれたラオインダにも勝てないのに、レスタさんに勝てる自信が無い。
セロと比べたら弱いに決まってるけど、セロの強さは異次元級の強さだから、全く参考にはならないんだよな……。
セロフィート
「 其処迄にしましょうか 」
マオ
「 ──有り難う御座いました! 」
レスタ・グインノルチ
「 有り難う御座いました。
──やるな、マオ!
私が知っている誰よりも強いぞ! 」
マオ
「 そうなの?
なんか照れちゃうな(////)」
レスタ・グインノルチ
「 モンスターを倒して “ ギルド ” へ来れたのも頷ける。
マオの腕前なら魔獣討伐も楽勝だろう 」
マオ
「 えへへ(/////)
そうだと良いんだけど…… 」
レスタ・グインノルチ
「 あぁ、胸を張って自信を持つと良い。
今回の魔獣討伐は早く終わるかも知れないな 」
マオ
「 だってさ、セロ!
レスタさんに褒められたぞ! 」
セロフィート
「 良かったですね、マオ。
マオの成長振りをラオインダさんへ伝えなければなりませんね。
きっと喜んでくれます。
アルソリュンドさんとの手合わせも実現しそうです 」
マオ
「 えっ、伯父さんと手合わせ出来るの?
やったぁ!!
とうとうラオインダを負かられる迄に成長してるって事だな! 」
セロフィート
「 確実に近付いてはいます。
先ずはレスタさんから剣を落とさせる事が出来てからです 」
マオ
「 いきなりハードを上げるなよぉ!!
持ち上げといて落とすな! 」
セロフィート
「 落としてませんし 」
◎ 訂正しました。
ビフォーアクター ─→ ビフォーアフター
未だにワタシから ─→未だにワタシから
実践経験が豊富で ─→ 実戦経験が豊富で
ラオインダを任せられる迄に ─→ ラオインダを負かせられる迄に