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39話 海獣オクタゴン1

39話 海獣オクタゴン1



「突然行ったら迷惑じゃあ……」


 心配そうに眉をひそめるジャスティス。


「ハァ〜…」


 そんなジャスティスにカインは呆れ混じりにため息を吐いて、


「『迷惑』とか考えてる場合じゃねぇだろ。タータルネークの騎士団が動いた以上、国では手配書が出てんだよ」


 ジャスティスの頭を少し乱暴に撫でくりそこまでカインが言うと、ジャスティスの表情はどんどんと青ざめていく。『まあそれは俺だけだけど』と、カインは少し慌てたように付け加えた。



「手配書が出ている俺と一緒にいるって事は、お前たちは『お尋ね者』になっちまうわけ」


 とってつけたようにカインがそう言うと、『そう、ですよね……』と、ジャスティスは小さく呟いた。



「納得は出来ねぇかもしれないが……」

「ううん」


 カインの言葉尻を、首を横に振ってさえぎるジャスティス。


「自分で決めた事だから、カインさんのせいとかじゃないです」


「ジャスティスお前……」


 落ち込んでいるかと思えば、意外にもしっかりした口調で言うジャスティスにカインは少し面食らってしまう。



「ーーきっかけは、最悪だったかもしれないけど」


 何か吹っ切れたような表情となるジャスティス。


「でも『冒険』は僕のしたかった事でもあるから……まあ、良い方に考えます」


 と、はたから見ても無理はしてない笑顔を見せるジャスティスに、カインは安心したように心中でため息を吐いた。



「よし! じゃあ本当にいいんだな、お前ら」


 カインが見切りをつけたように言えば、ジャスティスとウルーガは二人同時に頷き、そんな様子に三人は互いの顔を見合わせて笑ったのだった。






 ――ジャスティスたちが乗る船は、タータルネークの大陸に沿ってほぼ真東に航路を進んでいた。



「なんだか、空模様があやしいですね……」


 ジャスティスが言いつつ空を見上げれば、太陽が出ていた空はいつのまにかどんよりと薄暗い灰色の雲が覆い被さっていた。



「本当だな。もしかしたら一雨ひとあめくるかもしれない」


 カインもまた空を仰ぎつつそう言うと、それを待っていたかのように雨粒がポタリと落ちてきた。



「ハァ……」

 カインはうんざりしたようにため息をはき、

「言ってる側からこれだよ」

 と、呆れた顔で肩をすくめた。



「そろそろ船室キャビンに戻ろうぜ」


「そうですね」


 ジャスティスが頷き三人して船室キャビンに戻ろうとした時、ガクンと船が傾いた気がした。



「ん? なんか今変な風に揺れたな……」


「そうですね。……あれ?」


 船の小さな異変に気づいたカインが口を開くとそれに賛同するように応えるジャスティスは辺りをきょろきょろと見回していると、船が急にその動きを停めた。



「停まった?」


 ジャスティスが不思議そうに首を傾げると、突然に波が荒くなり船体が大きく傾いた。



「……おっと」


 カインが身体を支えるべく柵を掴み身体を固定させると、ウルーガやジャスティスも同じように柵に手をかけている。その間に雨が次第に強さを増してきていた。



「……」


 ジャスティスは眉をひそめて不安な表情を顔に出した。そのまま空を仰ぐと大粒の雨が額や頬にかかって少し気持ちが落ち着いた。



「とりあえず戻ろうぜ」


 カインがそう言ってきびすを返した時だった。



「た、大変だぁ……!」


 船長であろう初老の男が、三角帽子トリコーンを落としそうにしつつ操舵室から慌てた様子で飛び出してきた。



「おい、何があった?」


 たまらず声をかけるカイン。


「……ぜ、前方に! きょ、巨大なやつがッ!」


 カインに縋りつくように、息を途切れ途切れしながら言葉を紡ぐ船長。


「巨大な『海獣かいじゅう』が船の進行を妨げてるんだ!」



「……海獣?」


 ジャスティスがきょとんとして船長の言葉をおうむ返しする。



「海にけものの事だ」


 カインは首を傾げるジャスティスに簡単に説明する。


「とりあえず行ってみようぜ!」



 カインのその言葉にジャスティスとウルーガは同時に頷き、先立って走っていくカインの後を追った。


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