57話 旅の道中2
57話 旅の道中2
「いくわよ〜」
言いつつルキナは軽い足取りで一歩前に出るとその身をくるりと一回転させて葉扇を魔物目掛けて水平に構えた――同時に、
「眠っちゃいなさい。モンスターちゃん」
子守唄のように優しくささやいて葉扇をひらひらと揺れ動かした。
どこともなくさわやかな風が吹いてきたと思えば、
「スリーピングホロウ!」
ルキナの力ある言葉があたりに響いた。
その言葉の終わりに、子犬に群がっていたビックラットとディーバットたちがぱたりと地に伏した。これはルキナが特技とする晶星術のひとつだった。
「……え。ル、ルキナさんなにしたんですか?!」
「すこーし眠らせただけよ」
驚くジャスティスに笑いつつルキナは子犬の方まで近づく。囲んでいたモンスターとは違い子犬は眠っておらず小さく身震いをしている。ルキナは子犬をそっと優しく包み込むように抱き上げた。
「もう大丈夫よ」
子犬を安心させるように頭をそっと撫でるルキナ。その後からジャスティスたちがルキナの側までくると、
「ルキナさんすごいですね!」
子犬の無事を確認するように覗き込むジャスティス。
「そりゃあそうよ!」
と、ルキナはジャスティスを満面の笑みで見る。
「踊りと魅了はあたしの十八番だもの!」
「昨日の夜お前も魅了されてたもんなぁ、ジャスティス」
「そ、そんな事ないですよ!」
ジャスティスは慌てて否定するが、
「……あらぁ残念。あたしの魅力も落ちたかしらぁ」
「いや! ルキナさんは綺麗だった!」
カインに便乗して、残念そうな表情を見せるルキナにジャスティスは心外だと言うように首を横に振る。
「ふふ。冗談よ、ジャスティスちゃん」
ジャスティスにウインクひとつして子犬をそっと地面に降ろすルキナ。
「もう捕まっちゃダメよ。はやくママのところにお帰り」
ゆっくりと森の奥に消えていく子犬にそう言いルキナはホッとしたようにため息をついた。
「ちょっと時間かかっちゃったわね。今日はこの付近で野宿かしらね〜」
右手を目陰にかざし辺りを見渡すルキナ。
「そうだな。暗くなってからの移動は危険だからな」
と。カインもまたルキナの言葉に頷いて脇道にそれて木々が茂る中へと歩みを進め、ウルーガとジャスティスも同じようにカインの後をついていく。
しばらく木々の中を進んでいくと、少し拓けた場所に出る。側には崖の斜面から流れ落ちる湧き水があった。
「今日はこの辺で野宿にするか」
辺りに危険がないかを確認しつつ荷を降ろすカイン。
「丁度いい『丸太』もあるわね」
ルキナもまたそこらに転がっている、椅子に丁度いい丸太を手にして適当に並べていく。




