第2章 第2話 考え
「とりあえずこれからのことだけど……」
撮影スペースのソファに二人座りながら、考える。俺たちの未来のことを。
「真司くんを虐待から守るために私のスタジオに住まわせるところまでは大成功。これからも定期的にお金渡せばずっと一緒にいられる。……ん? よく考えたらそれって……。勝った! 第2章完!」
「それじゃ根本的な解決にはならないって話だろ」
正直俺もきららとずっと一緒にいられるのが一番だが、それはある種の逃げだ。
「まずあんな奴らに金を渡すことはない。しかも全くの関係もないきららがそんな……」
「だーいじょうぶだよ稼いでるから!」
「でも男と同棲なんてバレたら炎上不可避だし……」
「スタッフだってことにすればいいんだよ。ほら、私の撮影手伝ってくれたらお金渡す正当な理由になるしオールオッケー!」
「でもそれじゃあ、きららの両親は振り向いてくれないだろ」
「…………」
俺もきららも、両親の問題を抱えている。俺は金のために虐待も行える親。きららは何をしても無関心な親。この四人の親を何とかしない限り、俺たちは推しを幸せにすることができない。
「でもやっぱり私はいいよ。真司が愛してくれるならそれで……他には何もいらない」
「嘘だな。きららは上昇志向や承認欲求が強すぎる。俺一人からの愛じゃ満足できないもっともっとたくさんの人に愛されたい。そういう人間だろ」
「……ほんとファンってすごいよね。私以上に、私にくわしい」
「それで勘違いして暴走するオタクも多いけどな」
だが今回だけは違う。俺は聞いているんだ。きららから両親の話を。
「俺に考えがある。悪いけど付き合ってくれるか?」
「つ、付き合うってそんな急に……って、そういう意味じゃないよね」
「いやそういう意味だけど」
「うんうんそんなベタな……え? ええええええええ!?」