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第1章 第3話 ファンネル

「マ、マジか……」



 浮草真司と英栖きらら。今まで全く意識していなかったが、同じ学校に入ったとしたら。同じクラスになったとしたら。当然、こうなる。



「前後の席なんて運命的だね。まるで私たちみたい」



 俺と一緒に教室に入ったきららが座席表が書かれた黒板を一瞥し、小声で囁いて廊下側の前から三番目の席に座る。そしてその瞬間俺の席がなくなった。



「英栖きららちゃん! 俺ファンなんだよ!」

「私も! 見てこれこの前の動画でおすすめしてた香水!」

「連絡先交換して! てかその前に握手して!」



 きららと同じクラスになったと気づいていたクラスメイトたちが、アイドルの登場に沸き立ち席へと群がる。俺が座るべき場所は三人の女子でぎゅうぎゅう詰めになって近づくことすらできない。……まぁいい。推しと話しすぎて逆に気持ち悪くなってきたほどだ。少し廊下に出て休憩しよう。



「よぉ、浮草」



 そんな俺の肩を何者かが抱いてくる。いや、誰かなんて確認するまでもない。



「……和田」

「今年も同じクラスだな。仲良くしようぜ」



 和田壮太。俺と同じ中学出身で、俺へのいじめの主犯格。こいつと同じ高校だとはわかっていたが、クラスまで同じとは。正直きららと同じクラスになれた喜びを軽々しく上回るほど、嫌だ。



「高校生になったんだからバイトできるよな? 友だち料頼むぜ。今までの分もな」



 いじめられる理由に明確なものなどない。だがこいつに目を付けられるようになったのは金が原因だ。中二の頃和田に脅迫され、財布の中の金を出すように言われた。そして俺は断った。それは今回も同じだ。



「バイトはするよ。でもお前に渡す金はない。俺が貢ぐのは推しだけだ」



 二年前と同じ断り方。それがまずかったのだろう。今も昔も俺は、推しへの愛に嘘はつけない。これがいじめられる原因だったとしても構わない。



「知らねぇんだよてめぇの都合なんざ。つーかお前の推しってあれだろ? なんちゃらきらら。あんなんたいしてかわいくねぇだろ。ブス女に夢中になって馬鹿じゃねぇの? 気持ちわりぃな」



 その発言が俺への挑発か本当に目が節穴なのかは知らないが、今クラスに来たこいつも知らない。



「どうも、ブス女です」



 今この瞬間一年間を共に過ごすクラスメイトを敵に回したことを。



「え? は? 英栖きらら……!?」

「なんだ、名前知ってくれてるんだね。でも君みたいなファンはいらないかな。ファンの民度が低いと私の評価まで下がっちゃう」



 突然現れた有名人の登場に目を丸くする和田と、俺のことしか眼中にないきらら。彼女は一度も和田に視線を向けることなく、俺の目をまっすぐに見つめる。



「君、私のファンなんだって?」

「う……うん……」



 俺との関係を隠しているきららはまるで初対面のように接する。それでも向ける瞳の色は、ただのオタクのそれだ。



「そうなんだ、じゃあ私のこと好き?」

「や……その……」


「私のこと好き?」

「す……好き……」


「そっか……ふへへ……」



 気持ち悪い笑みを浮かべて満足したきららは、ようやく目を向ける。俺の敵へと。



「アイドルとファンは表裏一体。推してもらう代わりにファンを幸せにするのがアイドルの役目。私のファンを傷つける人は、私が排除しないとね」



 それはネット上では必ずしも良い手とは言えない。でもここは現実で、いじめはいじめる方が悪い。



「いじめっ子くん。君は悪人だね」



 圧倒的な支持票を持つ人物が個人を悪と断定する。そうすると何が起こるのかは、火を見るよりも明らか。



 今この瞬間をもって和田は、搾取する側から搾取される側へと認定された。

とりあえずここまでが序章です! こんな感じで進めていくので、おもしろい、続きが気になると思っていただけましたらぜひ☆☆☆☆☆をつけて評価とブックマークのご協力をお願いいたします!!! みなさまの応援が続ける力になりますのでどうかどうか!

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