独りよがり、について考えてみた。
これは私が実際に寄せられたことのある感想に書かれていた言葉でもある。その真意は定かではない。(すでに退会されたか、なんらかの事情があるようでそのかたにはアクセスできない状況なので確認のしようがない。言い捨てて立ち去ったか、私をブロックしているか、あるいは実は同一人物が二重アカウント投稿をしており凍結されたか 背景にある事情は定かではない。)
「独りよがりに陥るリスク」は自分の場合は高いだろうと自覚もしていた。
加えて、私に対する酷評というわけではなかったのだが、小説の書き方についてちょっと耳が痛くなるエッセイを複数拝読した。
読んでくれる相手に、読みにくさを感じさせてしまったり、あるいは、せっかく世界観に入り込んでいたのに現実に引き戻されてしまう表現のくせなど、自身の抱える問題点もいくらか具体的に見えてきもしたので、ここでいったん、謙虚に考えてみることにした。
※(なお、この原案は、平尾丈氏による、「起業家の思考法」の概念をたまたまスマホの画面に出てきたDIAMONDオンラインの紹介ページで読んで、なるほどと感銘し、拝借しただけである。個人的にとても分かりやすい考え方であり、なろうの中の小説について考察する上でも使えそうな考え方だな……と感じたので。)
①「優れたやり方(受け入れられやすい、効率的、優等生的なやりかた)」
②「ちがうやり方」
③「自分らしいやり方」
の三本軸で考えるということがキモらしい。
異論はあると思うが、(持論に勝手に転用するな、と怒られそうではある……)
なろう小説で考えてみると――
①とは「多くの人が心地よく、サラッと読めることを目指した作品。」と言えるのではないだろうか。
特徴として挙げるなら、“設定が分かりやすく、とっつきやすい”“隙間時間で読める”“気分転換にぴったり”“キャラクターが前向きで、共感できる要素も多い““読んでいて、なんとなく元気をもらえる”……などが該当するかもしれない、
②その逆転版としては、「あえてテンプレどおりにならないように意識する。予測をつけづらい展開の意外性で攻める作品。」というあたりか。
“設定が複雑で、とっつきにくい”“”暗い要素、過激な要素が強め”“キャラクター、特に主人公の設定や背景事情が特殊で、読者は共感しづらい”“時に人を不快にさせ傷つけるリスクも高い”などが特徴だろうか。
③については具体的な説明は不要だろう。
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①にも②にも、強みと弱みが両方存在する。
①と③が重なった状況は、分かりやすく言うならば「テンプレ作品」であるかもしれないし、
②と③が重なった状況は、「テンプレに沿っていない完全オリジナルの作品」となるかもしれない。
どちらにも陥りやすい問題はあり、①×③は「どこにでもあるような、人の印象に残らない作品。いくらでも替えがきく」に。
②×③は「作者の独りよがりな視点で展開される作品」――ちょうど私になされた批判と重なる状況に繋がりやすいのかもしれない。
では、①と②が重なった状況はどうだろう。オールマイティのようだが、それだけでは「長続きしない」という。確かに……現実論としてそれはそうだろう。
「テンプレを押さえつつも、ほんの少しの意外性を持たせる。そうやって作品に個性をもたせる」というのは、人気小説の書き方というようなことで解説されてきたことだと思う。
それでいて、③「自分自身が書きたいと思えるものを書いていることが大事」と言われる。上述の形式を借りるなら、この考え方は、①をベースにしながら②を部分的に採り入れる。もちろん③の自分が書きたいものであることが大前提だ!ということなのだろう。
漠然と考えるよりも、パターンに当てはめてみると、スッキリしていて分かりやすい気がしたので敢えて書いてみた。
書籍化されてきたテンプレ作品の多くは、これを成功させた(もちろん、前提としての表現の問題はクリアーされているとして)ものだろうし、
より強力な人気を誇るものには、②のパターンをベースにオリジナルを作り上げた、ほかの人には簡単に真似できない個性を備えた作品が該当するだろうと思う。(その人気ゆえに、踏襲する人が増えて新たなテンプレ化する場合もある)。
……と、分析するのは容易である(私はただパターンに当てはめて言い直したただけで、ここには私の考えもへったくれもないが)。じゃあ実現できるのか?は置いておくとして……。
それでもあえて、こうして紹介したのには一応理由はあるのだ。
きっと、私自身を含めて、いまいち上手くいっていない書き手の多くは、たぶん、どちらかのパターンで悩まれている場合が多いだろうと思うからだ。
不安や悩みというのは、漠然としたままであればあるほど、膨らんでいくもののように思う。“自分には才能がない”とか“どうせ自分は○○××だから……”などと、自分で自分を否定していく負のスパイラルにはまりこむ。あるいは自己否定に耐えかねて、成功作品を貶めることで心の安定を得ようとする。
理性的な視点から、パターンに置き換えて俯瞰する。そうすることで、ネガティブスパイラルに陥ることも、ある程度予防できるように思うからだ。
私には解決策を書くことはできない(できていれば、私は“独りよがり”な不人気作品を書くことからは脱却できているだろう)が、
同じように悩める同志と呼べるかたがたに、なんらかの参考にしていただければと思い、投稿した次第である。
分析するだけで終わるのもアレであるし、せっかく導入で書いた「他のかたのエッセイ」について受けた内容を記載しそびれていたので、ここに加えさせていただく。
テンプレ的な作品でもある程度言えることだが、独自色の強い作品であるならば尚のこと、「読み手」の立場に立ったときに、分かりやすい描写ができているか。違和感を感じさせるような要素はないか。自分の作品について省みることは大事になってくるだろう。
独創的な作品であるほど、そして設定が複雑になるほど、読者が小説の世界観に入りにくくなるのは避けられない。だからこそ、描写には注意が必要となるはずだ。
説明が冗長になれば飽きさせる。かといって説明口調でもいけない。そして、それでも食らいついて読んでくれる層はおそらく「読解力が高いタイプ」なので、ストーリー展開に矛盾があると気付かれて、幻滅されるだろう。
つまり、②をベースに書くというのは、①以上に高度な描写力が要求されるはずだ。
もちろん、①だからといって、適当にしてしまえば――余計に埋もれやすくなってしまうだろう。そのあたりを気を付けて書いていくということは、ヒントになるのではないだろうか――。