シンの翼
続けようかな…
あくる日の路地裏。
誰の目にもつかぬ場所で、ただひっそりと、誰かが生まれた。
そのものはどこの馬の骨なのかもわからない。何が目的でここに生まれたのか本人でさえも理解が出来ない。
そのものの容姿は端麗であった。且つ若い。性別は女であろう。短い銀髪に赤目が映える色白であった。
そのものは歩き出した。生まれた目的を探すために。
~1~
常夏のさなか、午前七時。急いで家を飛び出した坂松渚は、連続遅刻記録を更新させまいと、全力で坂を下っていた。
よりにもよって今日は考査一日目。授業態度、提出物の提出率、ほとんど危うい渚が唯一挽回できる時だった。
「なんで…こんな、時に限って…め、目覚まし、が…!」
思わず嘆いてしまうほどには深刻な状況であった。成績が、大げさに言えば人生がかかっているのだから。
曲がり角の先、横断歩道に差し掛かる。信号は赤。そして交通量も尋常ではない。そのまま渡ればまず轢かれ、血肉に塗れた生ごみへと変貌するだろう。
しかし、急いでいる渚はそんなことを考える余裕はなく、走る勢いそのまま横断歩道へ突っ込んだ。
迫る鉄塊。目の前が闇に包まれ、走馬灯が流れる。
死を予感した。
いや、実感した。
刹那、白い閃光が渚を包み、気づけば横断歩道を渡り切っていた。
熱風が頬を撫で、日差しが肌を焼く。
渚は、生きていた。
ふと腕時計に眼をやり、刻一刻と迫る考査終了時間に気圧されながら、渚はまた走り出した。
おそらく、間に合わないだろう。
不定期で書いてみることにします