善良なる王子様
冬くらいにお月様の方で「呪いの王子様」企画をやっていらっしゃるのを見かけたのですが、登場する王子様は「呪われている」設定で、「呪っている」王子様が居なかったので、呪っている王子様を書こうかなーと温めていたものです。
そんなに長くはなりません。
恋をする相手を選べるなら、きっと人はもっと楽になれたに違いない。
わたしの主は、とても変わった人である。
一言でいうなら王子様だが、それは容姿や立居振舞、言動に因るものだけではない。彼の父親は現皇帝の子つまり皇族の一人であり、とある領地の王として封じられた人でもあるので、王の子。その呼称も極めて正しい。
尤も、後宮三千は無理としても、父君は妻妾が両手両足の指を使っても足りないどころかその数倍はいるので、一口に王子と言っても有難みは皆無である。ついでに予算は母が貴い血筋の方が優先的に配分される。母君が庶民であった彼個人に回されるそれは比率から言うとかなり乏しいので、平民の豪商の方が余程良い生活をしているに違いない。
それはさておき、良い意味でも悪い意味でも彼は王子様だった。人の意見に耳を傾けるというととても聴こえは良いけれど、裏を返せば簡単に人を信じてはよく騙されて、ちょっとした装飾品などを集られたりもしている。いつだったか母君の形見の品を市井で売り払われ、巡りめぐって彼の手許に戻って来たときは傷の一つやふたつがついていたりもして、少々しょっぱい気分にもなった。
子沢山の父君のお蔭で、異母兄弟はそれこそ掃いて捨てる程いるのだが、その中でも彼は善良だった。
そう、「だった」のだ。
次は五日後に更新します。