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ショートショート4月~2回目

束縛

作者: たかさば

「これでいいかしら?」

「ここの角が少しずれている、直すように」


―――ショーケースに並ぶカードが少しだけ、ずれている。


「……あなたって、本当に細かいのね」

「几帳面であることは長所だと、認識している」


―――ショーケースに並ぶカードが、美しく整列した。


「本当にA型っていうか。典型的なA型人間って感じがするよ」

「血液型は関係ないだろう。僕は僕という個人であり、血液型という括りで決めつけないでくれ」


―――ショーケースに並ぶカードを、満足げに見つめる、男性。


「そう?でもあなた、とても血液型占いの特徴を持っていると思うけれど」

「失礼な話だ、その辺の一般人と一緒にしてもらっては困る。僕という個人を見たまえ」


―――ショーケースに並ぶカードを、ぼんやりと見つめる、女性。


「別に私の意見は、私が自由に持ってもいいものでしょう?」

「持っても構わないが、それをわざわざ伝える必要はない」


―――ショーケースに並ぶカードを、満足げに見つめる、男性。


「では、私はあなたに、何を伝えたらいいのかな?」

「僕個人に対して思う、君の素直な、感情を」


―――ショーケースに並ぶカードを、ぼんやりと見つめる、女性。


「あなたは、私にとって…そこら辺にあふれているA型の人の一人でしかない」

「血液型は、関係ないと言っているじゃないか!!」


―――ショーケースに並ぶカードを、ぼんやりと見つめる、女性。


「血液型は、関係ないけれど。でも、無関係では、ないかな?」

「どういう意味だ?僕はもう、血液の話をするつもりはない」


―――ショーケースに並ぶカードを、ぼんやりと見つめる、女性。


「ねえ、このカードを見て、どう思う?」

「美しく整列しているね。僕と君の成果だ」


―――ショーケースに並ぶカードを、ぼんやりと見つめる、女性。


「……カード一枚一枚を見ようとは思わない?」

「一枚一枚堂々と誇らしげに並んでいるね、見事な配列だとしか言いようがない」


―――ショーケースに並ぶカードを、一枚、二枚と、拾い上げる、女性。


「何をするんだ!配列が乱れるじゃないか!!!」

「あなたのカードには、一切触れていないから、安心して?」


―――ショーケースに並ぶカードを、次から次へと拾い上げる、女性。


「そういう事を言っているんじゃない!やめるんだ!!!」

「このカードは、私のカードなの……あなたにどうこう、言われたくないな。」


―――ショーケースに並ぶカードが、どんどん減ってゆく。


「あああ!せっかく並べたのに……なぜ、こんなことを」

「私、どうしても…A型人間が、好きになれなくて。」


―――ショーケースに並ぶカードが、どんどん減ってゆく。


「血液型ではなく、僕を見るんだ!!!」

「私、どうしても…あなたが一般的なA型人間にしか思えなくて。」


―――ショーケースに並ぶカードが、どんどん減ってゆく。


「だから!!!僕という個人を見ろ!大多数のA型人間と一緒にするな!!!

「大多数の一人でありたくないのなら、私じゃない誰かの唯一になれば良いと思うの」


―――ショーケースに並ぶカードが、どんどん減ってゆく。


「君の唯一でなければ、意味がない!!!」


―――ショーケースに並ぶカードが、どんどん減ってゆく。


「でも私はあなたを唯一と思えないし、思いたくないもの」


―――ショーケースの中から、女性のカードが一枚もなくなった。


「あなたと同じショーケースには、並びたくないの」


―――女性がカードを確認している。


「細かいルール、奇妙なこだわり、つまらない常識……あなたに合わせて並んでみたけれど」

「あなたは自分のカードと共に並んでいることに満足して、私のカードを見ようともしなかったわ」

「美しく並んでいる私のカードには、ずいぶん伝えたい気持ちが溢れていたのだけれど」

「私は、あなたと共に美しく並び続けたいと……思えなくなってしまったの」


「僕は並びたい、並ばせる!!そのカードを…貸せっ!!!」



バララララら……!!!!



―――女性のカードが、辺り一面に散らばり……スッと、消えた。


「あ、あああ!!!カードが……カードがっ!!」

「私の知らないところで、あなたはあなた個人を謳歌したらいいと思うよ」


―――恋愛というショーケースに、男のカードだけが並んでいる。


「大多数の中の一人としてでなく、あなた個人を見つめてくれる人が現れるといいね、さようなら」


―――恋愛というショーケースの前から、女性が消えた。


「こんにちは、カードを並べてもいいですか?」


―――恋愛というショーケースの前に、新しい女性が現れた。


「ええ…どうぞ。穴が開いているので、そこを埋めていって下さい」


―――ショーケースに、女性のカードが並べられてゆく。


「キチンと揃えて並べてくださいね」

「……これでいいですか?」


―――ショーケースに、女性のカードが並べられてゆく。


「ああ、奇麗に並んだ、これは素晴らしい!!」

「でも、見た目だけですよね?」


―――ショーケースに、女性のカードが並べられてゆく。


「ここ、入れ替えた方が良いと思いますよ」

「このカード、汚れてるから捨ててください」

「ここ、順番おかしいから置き換えました」

「このカードは書き変えないとダメな奴です」


―――ショーケースに、みっちりと並んだ、カード。


「僕のカードを勝手にいじるのはやめて頂きたい!」

「あら、でもいじらなければ、美しくならないわ?」


―――ショーケース内に、規則正しく、美しく並ぶ、カード。


「なぜ勝手なことをするんだ!!!」

「こんなに美しくなったのだから、いいでしょう?」


―――ショーケースに並んだカードを、誇らしげに見つめる、女性。


「とても美しいわ、もっと美しくしていかねばなりません」

「もうやめてくれ!!!」


―――ショーケースに並んだカードを、憎々しげに見る、男性。


「ここも改善の余地がある、ここも余裕がある、ここは広げたらより魅力が増す……」

「やめろといっている!!!」



ガッシャアアアアアアアん!!!!!!!



―――男性がショーケースをぶち壊し……欠片もカードも、消えてしまった。


「あら、何でそういう事をするの?」

「僕はもう……カードを並べたくなど、ない」


―――男性はただ漠然と、立ち尽くしている。


「せっかく、奇麗に私とあなたのカードが並んでいたというのに」

「それはあんたの自己満足だ。俺は認めてなど……いない」


―――男性はただ漠然と、立ち尽くしている。


「あら、そう?でも私は、あなたを認めているのだけど」

「あなたという存在は、この世にたった一人ですもの」

「あなたと出会えて、本当に幸せよ、私」

「恋愛なんて入れ物、必要ないじゃない?」


―――男性はただ漠然と、立ち尽くしている。


「あなただけを見つめていきたいと思うわ」

「あなたの事を、見つめているだけで幸せなの」

「あなたがいる、それだけで私」


「だってあなたは、私を虜にした、唯一だもの」


―――男性はただ漠然と、立ち尽くしている。

―――男性はただ漠然と、立ち尽くしている。


―――男性はただ漠然と、立ち尽くしている。


―――男性はただ漠然と、立ち尽くしている。



―――女性は男性を抱きしめた。


―――女性は男性を抱きしめたまま、うっとりとしている。


―――女性は男性を抱きしめ続けている。



「 に が さ な い わ よ ? 」



―――女性が、力を込めて男性を抱きしめた。



パ、パリ―――――ン……



―――男性が、砕け散った。


「……あら、大変」


―――砕け散った男性の欠片は、消え去る前に……女性に集められた。


「……よかった、これで」


―――砕け散った、男性の欠片は、女性に、飲み込まれた。




「 永 遠 に 、 一 緒 だ ね 」




―――女性が、一人ぼっちで……幸せそうに、微笑んだ。


A型の人、怒らないでください(。>д<)

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― 新着の感想 ―
[一言] カード、とは? 神経質というか生真面目というか几帳面というか。そういうのねー。はい。
[良い点] カード並べが実に視覚的でイメージしやすいのです [気になる点] うぇーい。うまうま [一言] しっかしひでえ男ですこと。その辺にいっぱいいるわ
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