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ネトゲで兄妹ギルドを組んだのですが、ぼっちプレイヤーだった俺は最強でした~悲しい努力の果てにネトゲの中で最強になりました~  作者: にとろ
はじまりの大陸

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とりあえず光るのはゲーミングの基本

アル:お兄ちゃん! プレゼントがアルってマ!?


カーボン:ああ……昨日深夜のノリで言っちゃったなあ……


 我ながら不用意なことを言ったものだ、こいつなら間違いなく集ってくる。


アル:ほうほう……で? なんなんですか? エリクサー? エクスカリバー?


カーボン:そんなクソ高いものプレゼントするほど親切じゃねえよ、ほれ、昨日クラフトやった時に出来た高品質品な


アル:ゲーム内通貨にしてもたいしたことのないものを渡すのはプレゼントと呼べるのでしょうか?


カーボン:手作り感ってやつだな


 そんなtellでのやりとりをしているとアルは怒ったモーションを出す。さすがに俺も少々うかつだった気がしないでもない……


 そういえば……アレでもやるか……


カーボン:ゲーミングキーボード買ったんだけど要るか? それで手を打ってくれると……


アル:マジですか! ピカピカ光るやつですか!?


カーボン:ああ、めっちゃ光るぞ


アル:ありがとうございます! 私のフェニックス一号のキーボードがようやく世代交代できます!


カーボン:今までどんなの使ってたんだよ……


アル:それはもうパチもの青軸のお隣の国製のやつですよ


 なんというか……言い出すタイミングを逃してしまった……俺が渡そうとしているキーボードは……


カーボン:部屋の前に置いておくから手が空いたら付け替えとけ


アル:はい!


 そして喜んだモーションを取るアルに非常に後ろめたいながら話がまとまったことに安堵した。


 そうして部屋の前に置いてトイレに行こうと十数分後に部屋を出た時にはもうすでにキーボードはなくなっていた、切り替えたようだ。


 用を足して部屋に戻りチャット欄を開くとアルからのtellがガンガン流れていた。


アル:お兄ちゃん、このキーボード打鍵感がめっちゃ微妙なんですけど……これ本当にゲーミングですか?


カーボン:嘘じゃないぞ、ただ仕組みがメンブレンを採用しているってだけで……


 ゲーミングキーボードと言えばメカニカルのイメージがあるが、実のところゲーミングなど言ったもの勝ちのワードであり定義がはっきりしていないのでとりあえずLEDで光らせてゲーミングを名乗るものが多々ある。


アル:まあ今までのよりマシですけど……ギルメンに気持ちよくゲームをしてもらおうという発想はお兄ちゃんには無いんですか?


カーボン:だってパッドメインで操作してるのにキーボードにこだわる意味ってあんまりないじゃん?


 USBのゲームパッドがこのゲームプリミティブオンラインでは推奨されている。まあ要するにコンシューマ機とのコンパチビリティーを確保するために運営が横着をしたのだろう。


カーボン:というかそこまでキーボードにこだわる意味あるか?


アル:チャットでないと困るんですよねえ……家の中での声の出し方を忘れそうで……チャットなら何の問題も無いんですけどねえ……


カーボン:それはもう人として問題があると思うぞ?


 俺は久しくゲーム世界に浸っているが妹にまでその道を歩めとは言えない、資金源が投機である時点で俺の生活が非常に危ういものであることは確かだ。どうか妹には平和な生活を送って欲しい。


アル:まあ私には最後にはお兄ちゃんというセーフティネットがありますからね、社会に適合できなくても問題無いわけですね


カーボン:兄に寄生する宣言を堂々としないで欲しいなあ……


 ネトゲ廃人の道は入ることこそ簡単だが極めるのは修羅の道になっている、あまり真似をして欲しくないのが正直なところだ。


アル:最後のセーフティは家族に任せたいのですよ!


 胸をはるモーションを取るアル、自信を持って言うようなことでもないと思うのだが……


カーボン:ところで新しいキーボードの使い心地はどうだ?


 俺は妹の就職先にされそうになるので話をそらした。


アル:うーん……悪くはないですね……キータッチは好きになれませんけどチャタリングが起きないだけマシですかね


カーボン:チャタってたキーボードを使ってたのか……


 チャタリング、スイッチを押した際に「s」と入力した時にスイッチがバウンドして「っっs」と入力されるようなことだ。


 俺が使っているキーボードは機構的にチャタリングが起きないものを使っている、さすがに株取引に使うだけあって信頼性の高いものを使う必要がある。0が1個余分についただけでとんでもないことになるからな。


アル:そりゃあもう、たくさんのキーでチャタるものだからバックスペースの使用率が高くって……まあある程度はIMEが補正してくれるので日本語はそれほど困らなかったのですが、どうにも不便なのは確かでしたからね。


アル:しかもマクロ打ち込む時に複数個暴発することもあったので助かると言えば助かりますね


アル:まあメンブレンなのは気に食いませんが新品というのは気分の悪いものではないですね


 …………


カーボン:あの、アル……もしかしてキーボード気に入ったのか? 突然饒舌になってるんだが?


アル:バックスペースを使う分を他のキーのタイプに使えるようになったからですかね! 決してお兄ちゃんからもらったから気分をよくしているわけではないですよ?


 そうですか、まあ本人が満足しているようなのでそれについては放っておこう。


カーボン:じゃあ今日のクエストはクラフトだが……


アル:お兄ちゃん、私にいい考えがあります!


カーボン:なんか失敗フラグみたいな発言だな……


アル:まあ見ていてくださいよ、お兄ちゃんは一人で行ける討伐クエストに行って貰えますか? 私は下準備をしておくので


カーボン:?


アル:まあ見ていてくださいな!


 そう流してガッツポーズを取るアルを不思議に思いながらも俺はまだ済ませていない面倒な討伐クエストを片付けることにした。


 ワイルドウルフの討伐、三二匹、一人ならこのあたりだろうか? アルが一歩も動いていないのに離席状態にならないのが不思議だが、俺はさっさと討伐に出た。


 ポコ、ポコ


 クソ情けない響きでワンドで殴られながら消滅する狼たちを気の毒に思いながらもポップが比較的少ないが狩り場にキャラクターが少なく、ワイルドウルフがアクティブモンスターのため人気のないところで掃討を繰り広げた。


 プリミア前にポータルを開いて帰還して討伐の成功報告をしてからアルの待っているであろう鍛冶ギルドの前にたどり着く。


 アルは一歩も動かずそこに立っていた、そこで俺にtellが入った。


アル:準備できたので素材もらっときますね


 トレードウインドウが開き、俺の鉱石をもらえるよう申請してきたので渡しておく。


 するとアルは黙々と錬成を始めた。


 すごいな……集中力がすごい、まるで機械のごとく精錬を行っていく。そこへスマホにメッセンジャーから着信通知が来た。


「お兄ちゃん! どうですかワタシの書いたマクロは? 素晴らしい成果でしょう? なんとゲーム公式が提供している機能のみで実現したんですよ!」


 そのようなメッセージが届いた。


「確かにすごいんだが……作る物によってタイミングとかの取り方変わるよな? その辺も考慮したマクロなのか?」


「お兄ちゃん、正論で殴ると嫌われますよ?」


 まあそんな微笑ましいやりとりをしながらその日はクラフトクエストに加えて一つの討伐クエストも完了したのだった。


 なお、翌日別の目標物にマクロを書けるか聞いたところ『勘弁してください!』と悲痛な心の叫びが返ってきたのだった。

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