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ネトゲで兄妹ギルドを組んだのですが、ぼっちプレイヤーだった俺は最強でした~悲しい努力の果てにネトゲの中で最強になりました~  作者: にとろ
はじまりの大陸

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初心者ダンジョン実装!

アル:お兄ちゃん! 新ダンジョンが実装されたの知ってますか?


カーボン:知ってるに決まってるだろ? 初心者向けレベリングダンジョンだってな、ご新規さんのためのダンジョンらしいが


 ネトゲのシステム上後発はどうしても不利になる、そこで新規への救済措置が執られることも多い。


 自分が苦労してレベル上げしたのに新規がいきなり同レベルになるのを嫌う人もいるが新規が来るのはいいことだと一般的には言われている。


カーボン:しかし、初心者向けにいく必要はないだろう?


アル:お兄ちゃん! 初心者向けなんですよ? 私たちが手助けすると評判になりそうな気がしませんか?


 アルはどうやら初心者へ威厳を示したいようだった、辻ヒールをしている俺としても新規に優しくするのは悪いことだとは思わない。


カーボン:おk、そのダンジョン行ってみるか


アル:そう来なくっちゃ!


カーボン:ところでそのダンジョンどこだっけ?


アル:砂漠の南の地域ですね


カーボン:あそこはそこそこ強い敵が出てくるぞ? そういうところに初心者向けを作るから運営は叩かれるんだよ……


 砂漠と言えばサボテンやラクダといったそこそこ強いモンスターが出てくる、幸いパッシブタイプで自分からは攻撃してこないが、あまり近寄りたい場所ではないだろう。


アル:まああそこは行くだけなら割と簡単ですし、初心者の指導をするのだって楽しいですよ?


カーボン:まだ行ったことない施設だからポータル開けないんだよな……


アル:一度は行っておけばポータル開けますし、悪いことばかりじゃないでしょう?


カーボン:そうだな……


 大陸全土へのポータル敷設は面倒だが、一度やっておけばかなり便利になる。


カーボン:あそこと一番近いポータルは……王家の古墳だったな


アル:れっつごーです!


 俺はポータルを開き二人でそこに飛び込んだ。


 王家の古墳前にジャンプをしたのでポータルを閉じてダッシュを使用する。


カーボン:よっし、行くぞー


アル:いきましょー!


 そうして初心者向けレベリングダンジョン『ビギナー洞穴』へと向かう。


アル:早いとここのゲームも乗り物実装してくれませんかねえ……


カーボン:運営の答えがポータルを使えって事なんだろう


 ポータルがそこかしこに開けるようになってるのはそういった事情がある。決して運営がサボっているとは思いたくないものだ。


 タッタッタとしばらくダッシュをしているうちに、ビギナー洞穴が見えてきた、見たところダンジョン前で待っている人はいないようだ。


カーボン:皆来ないのかなあ……


アル:ここ初心者向けのアイテムドロップする敵が多いのでいいと思うんですけどねえ……


カーボン:とりあえず中に入ってみるか?


アル:そうですね、中は盛況という可能性もあります!


 そうして俺たちは洞穴の中に潜っていった、そこには数人のパーティが複数いた、誰も来ていないようで安心する。


アル:お兄ちゃん、結構苦戦している人が多そうなのでエリアヒールを


カーボン:了解


 キュアオールを使用しました


すけさん:助かります!


モノ:ありがとうございます!


イル:ありがとうございます!


 テンプレの返答とともに俺に対して敵のヘイトが一斉に向かってきた、攻撃対象を俺に向けて襲いかかってくる。


 バンバン

 ザクザク


 威勢のいい音の反面、俺に対してはダメージはほとんど入っていなかった。


カーボン:真ん中で範囲ヒール使うのでモンスター釣ってきてください


 そう流すと、初心者パーティの皆が洞穴の中のモンスターを釣って俺の元にやってきた。


 集まってくるたびに俺は範囲ヒールを使ってヘイトを稼ぐ、ヒーラーさんの育成の都合もあるので新しく釣ってきた時以外はよほどピンチでないと回復魔法は使わなかった。


 俺はエナドリ片手にもう一方の手で範囲ヒールのマクロを実行しながらしばらくそうしていた。


アル:少しずつ人が減ってきましたね?


カーボン:これだけのパワーレベリングしてればあっという間にここの推奨レベルからは超えてしまうだろ


 時々『ありがとうございます!』のsayチャットが流れてきたり、妹がアクティブモンスターをトレインしてきた人から挑発でタゲを奪って対処していた。


 それからしばらく経った後、俺たちはあらかた苦戦していたパーティが慣れてきたのを見てからその場を離れた。後は自分たちでどうにか出来るだろう。

 そんなことを考えているとtellが来た


マリア:今日はありがとうございます! ホントにもうだめかと思いました!


カーボン:初心者はしょうがないよ、デスペナもないんだからもっと気楽にやるといいよ


 そうアドバイスをしておいた。


 今度はアルからtellが来た。


アル:お兄ちゃん! 私がトレイン指摘他の引き受けた人からお礼のtellが来ました!


カーボン:確かに……気分の悪いものじゃないな……


アル:そうでしょう? 時々はこうして足を運びましょうね?


カーボン:ま、気が向いたらな


 俺たちはそうしてビギナー洞穴を後にした。


 その後、ビギナー洞穴では死んだ時にダンジョン入り口へ転送されるようになり、誰も彼もが突っ込んでいくのが正解となってパワーレベリングの必要はほとんど無くなった。


 この仕様変更が俺たちが原因なのかは不明だが、どこでも人の考えることは同じらしく、別サーバのビギナー洞穴でも同じようなことをした人がいたらしく、チートではないために運営も苦慮したのかもしれない。


 なんにせよ、そうして俺たちは初心者からお役御免となった……かと思っていた。


アル:ポータルタクシーでーす


カーボン:プリミアまで10Gです!


 ポータルタクシー、所謂運送屋だ、このゲームではリスポーン地点はホームポータルと決まっている、そしてこのダンジョンで死ぬと入り口に転送されると言うことは、このダンジョンに入るとここがホームポータルとして設定されると言うことだ。


 ポータル魔法を覚えるのは多少レベルが必要なため、このダンジョンを出ると首都(プリミア)まで歩かなければならず、ポータルを開ける人はここで重用されるのだった。


 なお、しばらくしたら運営はポータル屋という転送係を設置したので、ポータルタクシーのサービスは終了するのだった。


 このあたり、運営がその場ののりでシステムを実装しているのではないかと噂される原因だった。


アル:私たちももうあそこに行く必要もないんですねえ……


 しみじみ言うアルに対し俺は


カーボン:初心者を何でもかんでも助けると自分でクリアする楽しみが無くなるじゃないか?


アル:ま、人が増えそうなので良しとしましょう!


 こうして俺たちの初心者ヘルプは完全に終了するのだった。

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