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1 魔王様転生する

転生しました。

「ふむ…成功したようだな」


何度か手を握ってから確認する。視覚、聴覚、嗅覚、そして魔力も正常に感じ取ることが出来た。現在位置を確認。どうやら自室のようだ。姿見を確認して覗き込むと、白髪の幼子が姿見に写った。


「これが今回のゲームの姿か。悪くない」


記憶を探る。名前はルートヴィヒ・リーズン。リーズン王国の第3王子のようだ。よもや魔王だった俺が王子になるとはな。面白い。


さて、とりあえずはあの勇者の結末を知るところから始めるとしよう。そう思って部屋を出ると、近くで待機していた侍女が俺を見て驚いたように聞いてきた。


「る、ルートヴィヒ様!お身体は大丈夫なのですか!?」


ふむ、そういえばこの身体は随分と病弱だったようだ。まあ、俺が入ったことでそれらは何の問題もなくなったが。しかし不自然な行動を取ってこれから先のゲームを狂わせるのは良くないか。


「ごめんね、心配かけて…1人は寂しいからせめて本が読みたいんだ。いいかな?」

「は、はい!もちろんです!」

「ありがとう」


子供のフリというのも存外楽しいものだ。人間が演劇というものを好むのも少しだけわかる。他者になるのはある種の悦楽なのだろうな。


そう思いつつ書庫に向かう。流石王族というべきか様々な書物が置かれているが、ぱっと見歴史関係の書物が多めだろう。いかんな。もっと創作を大切にしなければ。王族だとその手のものにある種の偏見があるのだろうが…まあ、今はとりあえずあの勇者の結末を知るべきだろう。


そう思って心配そうな侍女に微笑んでから軽く近くの書物に手を伸ばす。すると、思いの外早くにあの勇者のことが書かれていた。だがーーー。


「ふむ、やはりあの弱き勇者は燃え尽きたか」


哀れと思うともにその最後を見れなかったことにいささか残念に思う。復讐の炎で自らを燃やし尽くした勇者の末路など実に美しいだろうに。あぁ、そうだ。せっかくだから見るとしようか。


「《過去視ログ》」


過去視ログ》は過去を見ることが出来る低位の魔法。それでもおおよそ二千年前の出来事なら余裕で見れるだろう。しばらくの間があってから映されたのは俺以外の3人の魔王に蹂躙される勇者の姿。


ふむふむ、どうやら俺が死んだことであいつらも本気になったのだろう。それにしてもたかだか人間相手に全員でかかるとは本当に愚かなことだ。人間は刹那の命しか持たないのだから放置しても問題ないだろうに。


「しかし、こやつは本当に面白いな。最後まで己の復讐のために生きたのだな」


長年人間という生き物を見ていて思ったことだが、本来シンプルなはずのものが人間というのはいささか回りくどくなるのだろう。本音を偽って他人と平和的に過ごす。そんな中で1つの物事に執着してそれをなし得た人間のことを俺は心底面白いと思う。


「さてさて、あやつの結末は知れた。今回はどうしたものか」


前回は俺を殺せる存在を作るのに拘った。まあ、満足の行く結果にはならなかったが、色々なものを見れたのでよしとしよう。とりあえず転生したはいいが、今回も同じようなゲームではいささかつまらない。ならばどうすればいいか。


「ふむ、今回は俺も人間として生きてみるべきか。しかしそれだけではつまらぬな」


以前にも人間のフリをして一生を終えたことはある。あれは確かに楽しかったが、同じではつまらない。


「何かないものか…ん、そういえば明日か」


ふと、ルートヴィヒの記憶を手繰り寄せてから俺は少しだけほくそ笑む。明日は我が兄の婚約者との初顔合わせだ。初々しいことだが、俺はこの婚約が上手くいかないことを先に知っている。


それは何故か?答えは簡単。どうやら我が兄は将来的に他の人間と結ばれる運命のようだからだ。これは予測ではなく確定してる未来。魔法など使わなくても俺が予めわかってしまう興ざめな力だ。


どうやら我が兄に心底惚れた婚約者が将来的に学園で出会う女と兄上が結ばれるのを妨害して、2人の絆を深めてからその報いを受けるシナリオのようだ。


「ふむ、まずは婚約者を見てから考えるとするか」


気に入らなければ別のゲームを探すまで。そんな気まぐれで俺はこのゲームの下準備を始めるのだが…後に、このゲームが俺にとってもっとも面白くなるとは先が見えても予想できなかったのだった。












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