7/24
薫くんと里沙ちゃん
その日は雪が降っていた。
くすんだ空から、ちらちらと雪が降ちてくる。
東京の雪は、北海道のように横から叩きつけるような雪じゃないと知ったのは、つい最近のことだ。
「今日は寒いね」
隣を歩く里沙ちゃんが、そう言って手に息を吹きかける。
その手を握って僕のポケットに入れてあげた。
「里沙ちゃんの手、あったかいね」
「八木くんの手は冷たい」
「よけいに冷えちゃうかな?」
「大丈夫。心があったかくなるから」
そう言って里沙ちゃんは微笑んだ。
雪は、積もりそうに無かった。