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勇者一行vs雷龍

「して、何用かな? 一応はっきりさせておこうじゃないか」


「分かっているだろう、お前をここで倒す!」


「君には迷惑をかけた覚えはないんだがね……まぁ、暇潰しにはなるだろう。退屈させてくれるなよ?」


そう言いながら、玉座から立ち上がる。そしてゆっくりと指を勇者一行に向け、白い雷を放った。


「散開! 以後個々の判断で対処を!」


振るわれた純白の剣が、白い雷を弾く。弾かれた雷は勇者たちの後ろの地面に着くと膨れ上がり、雷が爆ぜる。


「ふむ、この位は捌いてもらわねばな。そら、次だ。次はどうする?」


勇者を見据えながら手を宙に翳して、振り下ろす。すると勇者の上に黒い雲が現れ、雨霰のように雷を落とす。寸前で気付き横っ飛びに避けるが、少し掠めたようだ。まぁ、少し掠めれば終わりだろうがな。


「……っ! これは……!」


「私の雷は効くだろう? かなり微弱なものだが、それでもお前の動きを封じるにはもってこいだ」


ゆっくりと近付きながら手を鉤爪に変化させ、振るおうとした瞬間、その鉤爪に変化させた手に向かい、真っ直ぐに魔力が籠った何かが飛来する。


すぐに手を引っ込めて避け、飛んで来た方向を見やると、先程と同じものが複数、様々な軌道を描いて飛来してくる。その場から離れながら回避をするが、その中の一発が左の二の腕辺りを貫いた。


「魔導銃の威力はどう? あんたの鱗だって容易く突き破るわ!」


「ぐっ……なるほど、人間の作ったものか……忌々しい」


流血している左腕を押さえながら、何度も飛来する弾丸を避けていく。しかし妙だ。この弾丸、当てる気がないのか? 当たりそうで当たらない場所を狙って撃ってきている。


まるで、追い込まれているような……?


「いいですよクレア! そこで結構です!」


「後は、私達が……」


その言葉が聞こえた瞬間、私は少し慢心していたと感じた。


私の足元から水色の魔方陣が現れ、足をついた途端にその足が凍りつく。その魔方陣を囲むように半透明の膜が円形の屋根のように張られる。


「捕縛完了……」


「凍りつけ、《アイス・エイジ》!!」


魔法を唱えた瞬間、瞬きすら許さない速度で体が凍りついていく。……ふむ、もう少しだけ本気を出した方がよいか?


しかし、体が凍りつく速度は次第に遅くなっていき、顔に至る寸前で凍りつくのは止まってしまった。


「くそっ、やはり完全には凍りつかないか!」


「そこまで凍ってしまえばもうこっちのものですよ。……断天も使える。何か起こすつもりでもすぐに倒せるだろう」


「おや? その断天というのはそんなに凄まじい物なのかい? なら受けてやろう。この氷魔法も中々だが……そちらの方が気になる」


そう言いながら、一瞬力を込めて全身の氷を砕いた後に、体に電気を流して筋肉を活性化させてから半透明の膜を鉤爪で引き裂く。


「バカなっ! あれだけ魔力を込めて凍りついたのは表面だけだと!?」


「……規格外」


魔法使い二人が自分の自慢の魔法を破られたからか、驚愕を顕にしている。そんなに驚くことでもないだろう、種族の差がありすぎるのだから。


そんなことを考えながら勇者の方に視線を向けようとすると、再度多数の弾丸が飛来する。今回物のは色も速度も多種多様で、まるで虹を描いたようだった。


飛来する弾丸を手に魔力を流し全て掴み、握り潰す。手の中で魔力が雲散し、空に上っていく。


「全く……誰だね? 人が話しているじゃないか。そこに攻撃するとは……」


「うるさい、敵の隙をついて何が悪いのよ!!」


そう言いながら、様々な軌道を描く弾丸を何発も撃ち放つ。床を剥がして盾代わりにしたが、こうも邪魔されては……


「……少々煩わしいな、間引くとしようか」


「ハッ、何言ってるのよ! あんた今、何も出来やしないじゃない!」


確かに先程から私からは攻撃していない。だが……


「何も出来ない訳ないだろう? 嘗めるな」


翼を広げ、その翼に魔力を流して硬くする。その翼で身を守るように包みながら、走り出す。弾丸が当たるが、翼に阻まれてあらぬ方向へ飛んでいく。


「くっそぉぉ!!」


何度も放つが、結果は同じ。床や天井に跳ね返り、その場に焦げ跡を残す。後少し近付けばこちらのものだ。


「っ! いけない、逃げろクレア!」


勇者が目の前にいるクレアという女の未来を予想したのだろう。このままでは……と。こちらに向かって走り出している。だが少しばかり遅かったな……


「これは左腕の分だ、返そう」


「キャアッ!」


目の前まで来ると、魔力を込めていない拳を左腕に叩き込む。たったそれだけで骨を砕いた感触が拳から伝わり、ついほくそ笑む。


拳を振り抜くと、クレアの体は地面から離れ、宙に舞った。追撃はせずにクレアを眺める。地面を二回程跳ね、壁に衝突しそこで蹲る。


「おや、どうした? 骨が折れたか? なら少し力を入れすぎてしまったようだ」


「~っ!! あんた……!」


上体を起こしながら、こちらを睨み付けると、すぐに右手に握った魔導銃を向ける。しかしその向けた銃は震えている。やはり心も体も脆いな、人間というものは。少しの怪我で恐怖を覚え、逃げることもままならなくなる。


「たぁぁぁぁ!!」


勇者が跳躍し、その剣を振り下ろそうとしてくる。その後方で魔法使い共は片方が勇者に筋力増強、もう片方が剣を強化している。その剣を片手で止め、尻尾を振るう準備をする。


「勇者よ、お前の相手は後だ。まずはこの……クレア。そうだクレアだ。クレアを殺してからだ」


「させると思……ぐうっ!!」


尻尾を振るい、勇者の横腹を狙って当てる。衝撃で剣を手放しながら部屋の隅にまで転がっていく勇者に人差し指を向ける。


「オマケだ。これを受けてそこで見ていろ」


「ぐっ、がぁぁぁぁっ!!」


指の先から雷の矢を放つ。これを受けてしまえば、暫くは立てはしないだろう。私が解除するまで全身に電撃が走るような痛みを与える魔法だ。直撃した勇者はその場でのたうち回ることしかできていない。


「お前たちもだ。邪魔されては困るのでな……」


「ぐうっ!!」


「っ!!」


念の為に魔法使い組にも勇者に撃ったものよりは威力は低いが、同じものを放つ。こちらは痺れる程度だが、痺れると言っても立つことも、ましてや喋ることも出来ないレベルになっている。魔法使い達はその場に崩れ落ちた。


崩れ落ちたのを確認すると、俯いているクレアに近付く。


「さて、残ったのは……お前だクレア。どうする? 一思いにやってやろうか?」


「……喰らいなさい!」


私の顔に銃が突き付けられ、勢いよくその引き金が引かれた。




















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