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大事なものは引き際。

「首締まる……首締まるって!!」


「それはすまないとは思っておる、しかしこうでもせねばお主ら二人とも突っ込んでいったであろうが!」


白焔の牙が、襟に引っ掛かり外れそうになく、走り出した途端、その場で首が締め上げられた。


「と、取り敢えず離してくれ……! 死んでしまうから……」


「む、すまんな」


白焔が襟から口を離し、その場に尻餅を着く。


その合間にも空気弾は飛んで来ていたが、目が見えないのにも関わらず、必ず体のどこかを掠めている。


「正確さが戻ってきておる……これでは、無策に突っ込んでいたら蜂の巣だったな……」


「穴が開くとは限りませんけどね……」


二人が声を出した途端、そこに飛来する空気の砲弾。白焔が咄嗟に引っ張っていなければ、俺に直撃しているコースだった。


「あっぶねぇ、助かった!」


「何故ボーッとしていたのだ! 惚けておるでないわ、馬鹿者!」


「悪かったけどさ、馬鹿って呼ぶのはやめろよな……」


「一応、私が防御しておきますね。ないよりはマシ、ってレベルでしょうけど」


雛が空気の流れを操り、飛んで来る砲弾が逸れていく。


しかし、今ので大体分かった。目を潰せばそりゃ音で探るよな。臭い……とかも考えたが、俺達は嗅覚にはそこまで優れていない。狼人には負けるだろう。


「空気の砲弾……どうするかなぁ……ギリギリ避けられないこともないけど……」


「儂に乗るか? お主らの軌道面は儂が補い、雛が援護し、お前が斬る……今出来るとしたら、この辺りがベストではないだろうか」


「そうなんだけどさ……お前避けられるか? なんか馬鹿みたいに撃ってきたぞ、数打ちゃ当たるみたいな感じで」


エセルバートは当たらないことに業を煮やしたのか、四肢を無茶苦茶に動かし、空気の砲弾と斬撃を無茶苦茶に撃ち続けている。


「大丈夫だ、あんなもの当たってもっ……!!」


「……白焔?」


急に言葉が途切れ、白焔の方を向く。下から見たときには影になっていて見えなかったが、正面にいると、白い体毛が血によって赤く染まっているのが分かった。


先程から崩れ落ちないように耐えていたがやはり体も限界なのだろう。傷を受けていないにしろいるにしても、疲労は大きい。


「白焔……お前こそ無茶をしてるじゃねぇか……」


「こんなもの、無茶にも入らん」


「すいません、そろそろ……!!」


雛の苦し気な声が聞こえると同時に、盾のように展開された障壁が薄れて、再度障壁を形成してを繰り返している。効果時間の限界が来ているようだ。これ以上案も出ないようだし……


「……やるしかないか。雛、白焔、手を貸してくれ」


白焔に跨がりながら、問いかける。


「了解した……と言っても、お主先に乗っておるではないか」


「分かりました! 障壁はもうすぐ消えます。そのタイミングで突撃を!」


白焔がかがみ、雛が白焔に乗りやすいようにする。


「聞いたか白焔、障壁消えたら突撃だぞ」


「分かっておるわ……」


紅蓮を引き抜くと、丁度障壁が薄れていき、消え去る。


障壁が消えた途端、白焔が弾丸のような速度で飛び出し、三回ほど地面を蹴った時にはもう既にエセルバートが目の前にいた。


「何だこいつ!? あのクソ狗か!?」


エセルバートが拳を振るうが、地面を蹴って軽やかに跳ね上がった。落ちる速度を利用して、勢いをつける。


「今だ、やれ!」


「早いんだよお前は……!!」


紅蓮を振り抜くと、やはり鱗が硬く、剣の攻撃では弾かれてしまう。


「そこか……!!」


そこに再度拳が振るわれるが、白焔が距離をエセルバートを蹴って距離をとり、すぐに突っ込んで来ないように雛が後ろから風の弾丸を放つ。


風の弾丸も硬い鱗の前に弾かれ雲散するが、突進しようという勢いを削ぐことが出来ている。先程の目潰しを警戒しているようだ。


「クソがぁぁぁぁ!! てめぇらどこにいやがる、出てきやがれ!!」


また無茶苦茶に腕を振るい、先程と同じように沢山の砲弾が飛来する。先程より距離は近く、これでは近付くことすら難しい。


「ふうむ……しっかり掴まっておれよ! 《疾風迅雷》!!」


「分かりました!」


「ちょっと待て、どれg──」


瞬間、白焔のギアが上がる。その勢いは一歩地面を蹴るごとに加速していき、飛来する空気の砲弾を簡単に避けた。


後ろを向くと、着弾した地面は抉れ、土煙を上げている。


(威力上がってんなー……)


「よし、行くぞ光牙!」


「え、ごめん聞いてなかったんだけど」


「本当にやるんですか、白焔さん……」


「行ってこぉぉぉい!!」


白焔が急に止まり、前に投げ出された所を蹴られ前方に飛び出す。


「うわぁぁぁそういうことかよぉぉ!!」


「距離が足らない……光牙さん! 翼を広げて下さい!!」


「え? わ、分かった!」


雛の言う通りに翼を広げると、雛が風を吹かせ、その風に乗るように滑空する。滑空というには低空だが、仕方ない。


「行って!!」


「これなら届く……!!」


エセルバートも流石に、この距離なら気付いたらしく、こちらの方を向きながら拳を振るおうとしている。


「落ちろぉぉぉ!!」


「てめぇがな、クソ野郎……!!」


エセルバートの拳が頬を打ち据えるが、俺の勢いを乗せ突き出した刀は黒い鱗の鎧と少し拮抗した後に貫き、刀身の半ばまで突き刺さった。


「ぐぁぁぁぁ!! またてめぇは……俺の鱗を……!!」


「いてぇのはお互い様だ、こんなんでギャーギャー喚くなよ!」


エセルバートが振るった腕を掴み、飛び上がる。飛び上がると空中で体勢を整え、紅蓮の柄ををかかとで押し込む。半ばまで刺さっていた刀身が押し込まれ、奥深くまで突き刺さる。


「ギィィヤァァァァ!!」


「ほら、おまけだよ! 存分に持っていけ……!!」


腕を掴み、魔力で刃を義手の周りに形成し、紅蓮が刺さった箇所に捩じ込み、内部で形を変化させ内部をズタズタにして、ついでに剣を引き抜いて距離を取る。


「いでぇ……いでぇよぉ……!!」


「こっちもボロボロ、そっちもボロボロ。お互い様だよ。痛みの耐性はこっちの方が高かったみたいだけど」


腕を押さえながら、その場に膝を着き前のめりに倒れ込むエセルバート。それを見たが、剣をしまえるような状況ではないことは分かっていた。


首に刃を突きつけた、その瞬間。


「っ!? 光牙さん下がって!」


「え? 何言っ──」


脇腹に感じる衝撃と、数回地面を跳ね飛ばされてから背中に感じた衝撃。


視界が安定したかと思えば再度腹部に衝撃が襲い、戻った視界の中ではエセルバートが憤怒の形相で足を俺の腹部を踏みつけていた。


込み上げて来るものに耐えきれず、口から何かを吐き出す。口から吹き出、自分の体にかかった液体は赤い色をしていた。



































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