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また会う日まで。

「結局、あの人達は家に来て少し話してから森の奥地に行っちゃったなぁ……もう少しゆっくりしていけばよかったのに」


あの後、家に着いた俺達は各々自己紹介等を済ませた後、これからについて話しあった。自分達の目的を明確にすると共に、その途中で会ったらどうするかということについて。


会ったらどうするかかと言うことは、最初は初対面であることを通すことになった。そして勇者一行も、国から着いてきた人がいなければ協力してくれると言うことになった。


……問題なのは、目的の為に分散してチームを作る、ということだ。確かに、一緒にいては一網打尽になる危険性がある。しかし、だからと言って戦力を最小限にしてしまうのは……という葛藤がある。


「俺達は南へ、ロビン達は北、レイン達は西、ティナはヒューとエステルを鍛える為に東へ……目的を終えたらその後、王都で合流……目的は……俺達はロアを倒す為に、勇者一行は魔王を倒す為に。ロアに会えばその時だ」


鞘に入った紅蓮を持ち、今度会った時にはと力を込める。一応研いだりしておいた方がいいだろうと、鞘から抜き、砥ぎ始める。


(でも、勝てるのか? あんなやつに……)


瞼を閉じれば、瞼の裏に焼きついた惨状が思い出される。沸々と怒りと同時に、闘志も燃え上がる。しかし……それと同時に、どうしようもなく恐怖を感じていた。


(ちくしょう、怖えよ……! 滅茶苦茶ぶっ飛ばしてやりてぇのに、怖え……!!)


砥石を持つ手が震え、砥石を取り落とす。震える手を地面に叩きつけ、押さえつけるうちに震えは止まった。


しかし、恐怖心は拭えず、鉛のような感覚がずっしりとのしかかってくる。


「……やらなきゃ、ならないんだ……やらなきゃ……誰かが止めなきゃ……!!」


自分に言い聞かせるように、何度も言葉を紡ぐ。そうしているうちに、少しずつ恐怖心は和らいでいくが……本人を前にすればどうなるか、分からなかった。


「……義手の点検しよ。何かに集中していないと、また同じようになっちまう……」


義手に点検の為の魔法をかけていき、悪いと思った部分を修復していく。


目の前に置かれた銀の義手は、窓から差し込む月の光を反射し、銀色に光り輝いていた。その光を見ていると、少しだけ気分が落ち着いた。


──────────────────────


「……しまった、気分が落ち着いていってそのままそこで寝てしまった……」


目が冷めると、義手を枕の代わりにして、床の上に横たわっていた。体のあちこちが痛い。


「いてて……義手着けて……痛っ!! 」


義手を拾い上げ、左腕につける。その際の義手を装着するときの痛みで完全に目が覚めた。暫くは痛むだろうが、耐えられないほどではない。大丈夫だろう。


「……行かないと」


荷物を手に持ってから扉を開け、廊下へ出た。廊下ではいつもの喧騒は何処へやら、しんと静まり返っていた。その様子からすると、皆既にここを出ている。残っているのは俺のチームだけ……という予測が出来た。


「……次はいつ会えるんだろうか。最悪、もう会えないってこともあり得るんだよな……」


そう考えると、昨日の夜にもっと色々話しておくべきだった、別れを済ませておくべきだったと激しい後悔の念に襲われ、足取りが重くなる。


しかし、どんなにゆっくりと歩いても玄関には容易く、おまけに誰とも会わずに辿り着いた。玄関の扉に手をかけると、焦りと恐怖を混ぜたようなものが込み上げてきた。手を動かそうにも動かせない、そんな状態に陥ってしまった。


「……行くしか、ないよな……あぁくそ、何でこんなうじうじしてんだよ俺は……!!」


勢いよく頭を振り恐怖を押し退け、扉を押し開けた。


「おいおい、どんだけ寝てんだよ光牙」


「全くだ、早めに体を休めておくのが普通だろう。治すのにも休息は必要だ」


「……何で皆いるんだよ?」


扉を開けると、皆が荷物を持って待っていた。各々で各自出発だとばかり思っていたが……


「あら、そこまで薄情じゃないわよ」


「私達……こちら側の龍人達も、それぐらいはしていたぞ」


理由は分かった。だけど……


「先に行っておけばよかったんじゃないの? 事態は一刻を争うような状況なんだろ?」


「まぁ、そうなんだけどよ……誓いを立てといた方がいいだろ、これが今生の別れになるかもしれないんだぜ?」


そう言いながら、ロビンが前に拳を突き出す。


「誓いって言ってもな……そんな大層な物は出来ないぞ?」


「あるじゃないですか、一番大事なことが」


「一番大事な物……? あ……なるほど。確かに大事なことだ」


雛の一言から、誓いの内容を思いついた。拳を突き出しながら、内容を纏めていく。


一番大事なこと……それは、死なずにまた出会うこと。


「死ぬな。絶対に生き延びろ。また、王都で会うぞ、皆」


「「「「「「「応っ!!」」」」」」」」


それぞれの拳が、それぞれの気持ちを表すように勢いよく打ち付けられた。
















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