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迷う原因。

「えーと……アルバートさん、あなたもしかして方向音痴ってことはない……ですよね?」


「えぇ、方向音痴ではないですし……迷ったことはありませんよ?」


「道で迷わなかったのはいいなぁ、俺毎回迷うんですよ……」


「それは……大変ですね」


実際大変だし、今も大変だ。迷っては痛い目や問題にぶち当たった上、問題が解決してもここはどこだとなることが多かった。


「しかし……妙ですね、この足跡を見ると、同じ所に入っては出てくるを繰り返しているようだ……アラスター、頼めるか」


「はい」


アラスターと呼ばれた男は杖を取り出すと、その杖を振るう。すると、視界がぐんと広がり、増えた分の情報が頭に入ってくる。


「うおっ、なんだこれ! 視界が……」


「視界を広げる魔法ですよ、探し物には役に立ちます」


なるほど、それは便利そうだ。しかし、今はそれどころじゃない。急に視界が広がり、情報の処理が間に合っていない。それと同時に足取りが覚束ない。一歩進むのですら一苦労になりそうだ。


「……ダメですね、陣のような物は見受けられません。となると……」


「遠距離からの魔法か、この森の術か……ありがとう、解除してくれ。私達は大分慣れたが、この人たちはこれが初めてだったんだろう、とても顔色が悪い」


「了解しました」


視界が元に戻り、足取りも普通の物に変わるが、急に襲ってきた気分の悪さに口を手で押さえ崩れ落ちる。吐くことこそしなかったが、後数秒でも続けられていたら吐くところだった。


ロビンの方を向くと、崩れ落ちてはいないものの、顔が真っ青だった。


「なぁ光牙……お前気分はどうだぁ……?」


「最悪……そっちは?」


「俺も……」


「お二人共、大丈夫ですか? すみません、いつもの調子で使ってしまいまして……」


アラスターが、こちらに寄ってくる。本当かどうか分からないが、顔を見ると純粋に心配しているような顔をしており、こいつは本当にいつもの調子、つまり慣れきった仲間に使うような強さで魔法を使ってしまったのだと分かった。


「だいじょぶ……はきそうだけどだいじょぶ……」


「ま、俺も大丈夫だ……腹揺すられたりしなきゃな……」


「そうですか、これは回復魔法でも直ぐには治らないので……申し訳ないですが、そのまま耐えてもらうことになります」


うへぇ……マジか、下手したら吐くけど大丈夫かなぁ……


そんな事を考えながら、なんとか頷き、口を押さえたまま立ち上がる。


「すみません……後少しだと思うので耐えてください……では……クレア、索敵をお願いします」


「いいけど……これじゃ魔物もこっちには来れないと思うわよ?」


腰にあるホルスターから銃のような物を取り出しながら、答えるクレアと呼ばれた女性。


「構いませんよ、安全策です。では……」


「ちょっと待って、質問……それなんだ?」


クレアの手に握られた、銃らしきものに指を指しながら言う。口元の手が離れていないというのが、我ながら恥ずかしいが。


「これ? 魔導銃よ。まぁ安物だけど」


「その安物にいくらかかったと思うんですか……金貨が軽く二桁は飛びましたよ……?」


「あはは……その節は本当にお世話になりました……」


「文句を言っているわけではないですけどね……あれを沢山用意するとなると……あぁ恐ろしい、王も援助も必要なら考えてくれますけど、全員分用意するのは難しいですね」


「おーい、よく分かってないですから、今の所名称ととても高価な代物としか分かってないですから」


仲が良いのは分かったから、説明を早くしてくれ……


「あ、悪かったわね……これはね、持ち主の魔力を抽出して弾丸に変えてくれるの。私、近接戦闘が上手く出来なくて、魔法も4、5発使えば尽きる位の魔力しか持ってないの。でもこれはそんな私でも戦えるようになる物ってわけ」


「なるほどね……今度買う機会があったら買ってみるか」


まぁ、そんな機会は中々どころか、本当に来るのか分からない、それぐらいに低い可能性だろうけど。


「えぇ、かなり役に立つと思うわ。あ、でも気をつけて。とても魔力が多い人が使うと爆発したりするから」


「うーん……あまり聞きたくなかったかなぁその情報」


撃ったら手の中で爆発起こして吹き飛んだーとか、嫌だし。


「それで、どうするの? 私を索敵に使うってことは……」


「えぇ、思っている通りでしょう……」


アルバートはそう言いながら、目を閉じ剣を構える。アルバートに魔力が集まり、その魔力が集まる際に風が魔力の通り道となり、草木が大きく揺れる。


(なんだこれ……? 属性がある魔法じゃない。付与魔法……違う。なんだ……?)


目を閉じているアルバートを見て、自分が知っている情報を並べ、当て嵌めようとするが、自分の持っている情報とはどれも当て嵌まらず、憶測で語るしかない。


(無属性……あり得るのかそんな事。それなら納得出来るけど……俺が知っている限り、今まで無属性の魔法なんて……)


いや、見たことがある……使用者を知っているかもしれない。


あの時、木の枝と共に落ちた時。あの時は風魔法だと思っていたが……風にしては柔らかいものだった。


(魔力をそのまま変形……いや変換してるだけだ、別物だこれ。アルバートのは……周りの魔力を集めてる感じがする)


シェリルとアルバートの魔法が別物だと分かった所で、アルバートが目を大きく開き、剣を横薙ぎに振るう。


すると、淡い空色の斬撃が飛び、黙視はできないが、そこにあった障壁のような物に当たる。


少しの間斬撃を防いでいたが、本当に数秒の間だけだった。少し経つと、以前にも聞いたガラスが砕け散る音と共に、障壁が消えていった。


「これが、私が出来ることの全て……魔力掌握と、断天です」


……無属性魔法じゃなかった。断天というのは、先程放った斬撃だろう。かなりの破壊力を持っているようだが……


「いいのか、そんなの見せちゃってさ。戦うことになった時不利だぜ?」


「実践では、中々撃つことが出来ませんよ。すぐに魔力を掌握するのには集中力が必要なんです、掌握できない訳ではありませんが……一発撃つのに十分はかかりますね……」


なるほど、威力は十分だが燃費が悪いのか……


「取り敢えず、障壁は破壊しました。同じ場所を繰り返す物のようですが……誰でしょうね、こんなものを張ったのは」


多分ミノタウロスだろうなー、二枚も張っていたのか……


「とにかく、向かってみましょう。話はそこでも出来ますし」


そう言いながらアルバートは歩き出し、俺も他の奴らも、続いて歩き出した。














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