問題発生。
「まさか…この歳で同棲とは…」
《我も予想できなかったわ…》
僕の体の中にいる同居人もこれは予想外。しかも雛が嬉しそうときた。これは…どういう事だろうか…
「聞かれたくないこととかあるだろうしなぁ…聞きにくいよなぁ…」
《懸命だな。これからの生活に支障があっても困る。重い雰囲気の家に帰りたくはないだろう?》
「勿論」
まぁ…話をしてくれる気になったら…ね、その時はちゃんと聞いてみよう…
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それから3日経った。僕は今…
「おい光牙!これをそっち持っていってくれ!」
「は、はい!分かりました!」
…あの果物を貰った八百屋さんの手伝いを行っている。何もしないでいるのは申し訳ないからね。なんか住まわせてもらってるのに、何もしない…これ完全にヒモだって…
「次これをそっちに!」
「うわぁ追加だよ…今日も盛況してますね、アユムさん!」
「ああ、そうだな!光牙、この辺でいいぞ。ありがとな」
「分かりました、頑張って下さい!」
といっても、これは手伝い。実際に仕事をしてる訳じゃない。食料とかも貰えるけど、これはバイトだと思った方がいいね。
…本当に早く仕事に就かないと…!ただでさえ、気苦労とか掛けてるかもしれないし…!
「あの、光牙さん?」
「うわっしょいビックリしたぁ!?」
坂に横になっていた状態で、しかも油断している状態で上から声がして跳ね起きた。けど、坂だから転がり落ちた…
「…何か用でしょうか?」
「あ、いえ。仕事探しをしてるようなので…少し、家の仕事を手伝ってもらえますか?」
…家の仕事って言ったって、色々あるけどなぁ…とりあえず…
「器用ではないですが、出来る事があるなら」
「あぁ、大丈夫ですよ、力仕事ですので」
…それは、モヤシに一番任せてはいけない仕事じゃない?
「…この広さの畑を耕すんですか…中々に骨が折れそうな仕事ですね…」
「私一人では難しそうなので…」
この広さ…10m✖10mはあるぞ…一人どころか、二人でも終わるか分からない…ちょっと待って?
「あの、何で二人なんですか?…この広さじゃもっと人集めてもいいし、それに何で雛さんが畑仕事を?」
「…人手不足で…木こり等に全員行ってるので…」
「あぁ…納得…それなら魔法的な物を使えば…」
「やってますよ?」
そちらの方を見ると、半透明の鍬が地面を耕していた。…何か怖いな、鍬が独りでに耕してるんだもの。そういう実態が分からないのって、怖くない…?
「あの魔法、自分で使ってるので言いづらいですけど…怖くないですか?」
「同意見です…」
よく分からない物は怖い。…にしても、僕にはそんな便利な物はないし…
「手作業でやりますか…焦らず、ゆっくりと」
鍬を持つと、自分の剣とは違う重さを感じた。これを振ると考えると、筋肉を付けるのには丁度いいかもしれないな…頑張ってやろう。
因みに、この仕事は四時間位続いた。…やっぱ二人だけじゃ無理があるっての…
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家に向かっている途中。…何か騒がしいね、何か叫んでる?
「お……かったか!?」
「…にはいな…!」
「何か、あったんですかね…」
「…行ってみましょうか」
僕と雛さんは、騒ぎの方に向かって走り出した。
「すみません、何かあったんですか?」
「あ?あぁ。新入りか、これから宜しくな?実を言うとな、子供が一人、どこかにいったんだよ。もう里は探し回ったんだが…」
「まずいですよ、もうすぐ暗くなりますし…」
「雛ちゃんの言うとおりだ、外まで探しに行くにしても…」
子供がもうすぐ暗くなるのに、家に帰ってこない。そのうえ、多分外にいる…まずいなこれ。魔物の動きも活発化するし、盗賊の奴等もいるし…
…いてもたってもいられないな!
「雛さん、先に帰ってて下さい!僕は外を探して来ます!」
「えっ!?駄目ですよ、危険過ぎます!」
「…危険でもやらなきゃ、その子が危ない!」
僕は紅蓮を持って、里の外に駆け出した。
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「くっそ!暗くてよく分からない!おーい、誰かいるかぁ!」
僕の声は、森の中で虚しく消えた…くそっ、分かりにく過ぎる!
「…うわぁぁぁぁぁ!!」
…っ!!悲鳴…!頼む、間に合ってくれよ!?
走ってる内に広い場所に出た。ここなら戦える!
しかし、広場に躍り出た時に、目に入って来た光景は…
牛頭の巨人が子供を捕らえようと、子供に手を伸ばしている光景だった。
「…やめろぉぉぉぉお!!」
思いっきり、後ろから剣で腕を突き刺す。
…危なかったぁ…あと少し間に合わなかったら…いや、考えるな!まずは…
「君、逃げろ!道は分かるか!?分からないなら、空を飛んで逃げろ!」
「わ、分かった!気をつけて、お兄ちゃん!」
飛んで逃げていく子供の手には、小さな花があった。…成る程、あれを取りに来てたのか…
「ブモォォォ!!」
「おわっ、ちょっ…危ない!?」
何だこいつ!?急に激しく暴れだして…ぐおっ!
「…野郎…腕を地面に叩きつけて、剣を抜くなんて…」
多分格上の相手…どうなる…!?