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デカイ壁。

「さて、どうするかな……問題は障壁が全く消える気配がないんだよね……」


切り落としたミノタウロスの首を持ちながら、障壁に近付いて調べてみる。


「うーん……駄目だ、全く分からん……なんだこれは、まず向こう側に人がいることすら分からない。外の様子が分からなくなるのもデフォルトなのか? だとすると、厄介過ぎないかこれ……うわっとぉ!?」


障壁を軽く、義手で叩く。すると、与えた衝撃が少し増幅して義手に帰ってきた。


義手に当たると普通に壊れてしまう為、首を放り、地面を転がって回避したが、かなりギリギリなのだろう。地面に手をついた時点でバキリと音がした。痛みも尋常ではなかった。……あれこれ右腕の方……?


「と、取り敢えず修復魔法かけとくか……初級でもいいとこ行けるだろ、今なら。《リペア》ついでに《ファーストエイド》……しっかし、おまけに衝撃増幅プラス反射……」


右腕の骨の痛みが和らぐ。少しはマシになったが、義手の方はそうもいかない。


「……やべぇ、これ凄いうるせぇ……腕からスッゴいガチャガチャ音してる……」


壊れたのは大体、腕の中の機能なので歯車とかそういったものが動き、ガチャガチャと音を立てる。


「これ、何分位続くのかな……取り敢えず、デカイ大剣をどう持ち運ぶかな。鍛冶屋に持ってって、溶かすにしても、運ぶには……背負うしかないか。これやると剣士の真似する子どもみたいで嫌だけど」


近くに置いてある大剣を見やる。大分、錆び付いており、まともに振っても紅蓮より重いし刃こぼれは酷いしで剣として使うのではまともにダメージすら与えられないだろう。


「……待て、じゃあ何でこいつの首は斬れた? 自分の筋力で叩き折った……? いやそれにしては大分スッと通った気がする……わかんないけど。いや血か……一気に錆びたか……? 紅蓮はすぐに血を落としたから錆びなかったけど、こっちはどうだ……? あー、一気にかかったからな……呪いみたいなものか。草なら灰にする、鉄なら錆びる……みたいな」


こいつの血には、多分とんでもない物質が混ざっていたんだろう。仮称として【呪】いの【源】……呪源……?


……ないわ。これはないわ。ま、生きてりゃそのうちなんか分かるとき来るだろ。


「ま、それはそれとして……スッゴいダルい……何で……しまった龍化したまんまだ。魔力ずっと持ってかれるからなぁ……それにプラスして魔力使えばそうなるか……腕が痛いのは分かってるけど、全体的に体中痛い」


全身がひどい筋肉痛になったようだ。それに畳み掛けるように倦怠感が体にのし掛かる。足が棒のようだ、全く動かせる気がしない。


「でも、動かねぇと……戻れねぇだろうが……」


足を無理やりにでも動かし、障壁の前に立つと拳を振りかぶり、振り抜く。しかしただの拳で壊れる筈もなく、殴った衝撃が増幅し、右腕に跳ね返る。


先ほど治癒魔法を使ったが、治った訳ではない。尋常ではない痛みが腕から走り、伝わっていく。


「ぐううっ……!! なら……」


再度拳を構え、魔力を右腕に集める。残った全ての魔力を使うつもりで集めると、その魔力が右の拳に全て収束していく。


「これやったら、右腕がバキバキになりそうだな……やれやれ、また怒られちまうよ。今回は伝えたけど、何で来なかったんだろ。障壁、外からじゃ見えないようなフィールド効果でもあるのかな」


魔力を集めながら、自分の考えを纏める。正直、これを使えるかと言えばまぁ無理だと諦めるだろう。魔物は龍人と比べても無尽蔵に魔力を持っている。自分の魔力を増幅して、自爆なんてする魔物もいるらしいし。使うとすれば、3分持つか持たないかだろう。


「まぁ、取り敢えずは……出せやオラァ!!」


障壁に、残った全魔力が籠った拳を真っ直ぐ叩き込む。障壁がひび割れるが、障壁からはまた増幅された衝撃が跳ね返り、先程の比にならない痛みが走り、右腕の骨が完全に折れる。


衝撃で吹き飛び、地面をバウンドする度、右腕から痛みが走る。


「ぐっ……!! があぁぁぁぁ! いっでぇ……!!」


右肩を掴みながら、立ち上がろうとするも、あまりの痛みに膝をつくことしか出来ない。右腕を見てみると、腕全体が青くなり、至る所から血が出ていた。


「くっそ、見なきゃよかった、マジで痛い……!! そうだ、障壁は……!?」


障壁を見ると、ひび割れがゆっくりと障壁全体に広がっており、顔を上げた時には既に大部分がひび割れていた。そして顔を障壁に向けてからすぐに、硝子が砕けるような音を響かせ砕け散った。


障壁の内部は夜だったが、砕けて顔を覗かせた空は大分白み始めていた。


「もうすぐ夜明けか……俺夜通し闘ってたの? ちょっとビックリ」


遠くに見える山の頂きから、太陽が少し顔を出す。それを見ていると、痛みや倦怠感がほんの少しだけ薄れる気がした。


「あ、いたぞ! おかしいなここ何回も通った筈なんだが……」


「ロビンか。こういう時、毎回一番最初に駆けつけてくれるよね」


「ま、それなりに足が速いからな。それよりおたく、また無茶したんでねぇの?」


「今回は一人でやろうなんてしてないぞ。障壁貼られてどうしようもなかったからさ」


「分かってるよ、お前の炎で作られた子龍、ポトリと落ちて消えたんだぜ? そこで障壁か、或いはって話になって別れて探したんだ。ほら、行くぞ。皆心配してんだから」


そういうと、大剣を背負わせてから、左側に回り、肩を貸してくれた。


「本当迷惑かけます……」


「こういう迷惑ならいいんだよ、死にかけたりされるとキツいんだって。にしても重いなこの大剣……」


そういうと、俺達は顔を半分ほど出した太陽を背に、ゆっくりと皆が待つ家へ歩き出した。






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