傷跡。
「はぁ……どうしようか……まずリュミエールの復興をするにしても……いでで……」
あの後、すぐに目を覚まし、今は悩んでも仕方ない、他人を頼れるようにするんだと結論を出した。取り敢えず、里を見て回り、これからどうするのかを決めようと考えながら、窓に近寄った。
「ま、玄関から行けばすぐバレるからなぁ……」
そう言いながら俺は窓を大きく開き、窓枠に足をかけた。
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「今日は何事もないといいですねー……」
「光牙も暫くは動けないだろうし、問題は起こらないと思うよ」
庭先で、干してあった洗濯物を取り込んでいる雛とリーネ。久々のゆっくりと出来る時間を伸び伸びと過ごしている。
「でも……なんと言ったらいいんだろう……」
「あー……だねぇ……何て言うか……」
「「そろそろ何か騒動が起きそうな感じ」」
すると、上の方から何かが折れるベキリという音が聞こえ、後ろを振り向くと人影が一人落ちて来ていた。
「……何してるんですか本当!?」
「あれ止めた方が……いやダメだね、間に合わないや。取り敢えず避けないと!」
二人は少し慌てながらも、その場から距離を取り、落下してきた人影はそのまま地面に激突し、土煙がもうもうと舞った。
「けほっ……何が落ちてきたんですか……」
「敵かもしれないよ、警戒しとこう?」
落ちてきた人影に、リーネは武器である棍を、雛は手に風を起こしジリジリと距離を詰めていく。土煙が晴れ、その人影がはっきり見えるようになると、二人はため息をつきながら、戦闘体制を解いた。
「なんで落ちてくるんですか光牙さん……」
「大方、玄関からだとなんかあるんじゃないかって言われてって感じだろうね……」
そこには、地面にうつ伏せになりながら、時折体がピクリと動く光牙がいた。
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「……それで、何で落ちてきたんです? 出掛けるんなら玄関から出ればいいじゃないですか」
「……いや……ちょっと変わった出方をしたくて……」
苦しい言い訳だなと自分でも思う。もう少し他にあっただろうに。
「今までちょっとは思ってて言わなかったんですけど……少し馬鹿な所がありますよね、光牙さんって」
「ねぇ、少しってつける位なら普通に馬鹿って言ってくれた方が気が楽になるんだけど……?」
くっそ、全身がいてぇ……話の顛末はこうだ。玄関から出ようとすると咎められるかもしれない、なら窓から行くしかねぇなとなった俺が、窓枠に足をかけるとミシリと音がしたのにも関わらず、全く気にせずに体重をかけた結果、窓枠がバキリと音を立てて壊れてしまい、落下し地面に激突した……と言うわけだ。
「取り敢えず、出掛けるわ……」
「待って下さい、あの窓枠を直してからですよ」
「……何日かかると思ってんの」
「さぁ……取り敢えず、修復系統の魔法はあったと思いますから……覚えるついでだと思って、やっちゃいましょう!」
「うへぇ……」
その後、なんだかんだで修復魔法を覚えて……日が暮れて来ていたが……直すことには成功した。外出? 勿論別の日にしろって言われたよ。夜だし。
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次の日、俺は燃えた里を見回しながら歩いていた。
「色々と、燃えちまったなぁ……村長のいた所は本当に無惨なことになってるし。あそこに来たんだろうな……」
里の中心へ来た。ここには里の人達の亡骸があった……今はこの広場が墓地……のような物になっている。
「本当なら、もっと長く生きられたんだよな……ここに眠っている皆……」
俺がいたから。殺された人のことを考える度に、そんな思考が頭の中を埋め尽くす。
唇を強く噛む。自分のせいだ、なんて烏滸がましいなんてことは分かってる。けどもし違う所に出ていたら? なんてIFを考えてしまう。
「……どうにか、ならなかったのかな……」
長老の眠る墓の前で、座り込みながら手を顔の前で組んで考え込む。
それを見ている小さな人影が、短刀を隠し持ちながら近寄っているのに気付かずに……