目が覚めて。
「……最近死にかけてることが多くないか? いや違うわ、死にかけてるのが多いんじゃなくて、ヤバい状況の時に無策で突っ込むのが多いんだよな……」
ふとした拍子に目を覚ます。どうやらあの後、誰かに運び込まれたらしい。上半身を起こし、辺りを見渡す。
見慣れた家具に、ひび割れている窓。どうやら自分が使っていた部屋みたいだ。
「よーし、起きて皆を探しに……うぐっ!」
立ち上がろうと、体に力を入れた途端、体に痛みが走り、ゆっくりと体を横にする。
「あー……やっぱりダメージは深刻か……」
また義手が必要になった、なんてことになってないのはよかった。だけど今はそれより……
「……絶対、もう少し周りを見るか頼れって言われるよなぁ……」
今回は流石に一人で突っ込んでいい相手ではなかった。……いつも一人で突っ込んでいいかと言われると別なんだけど、相対した時にはまずい、なんて感じなかった。それで油断したかもしれない。雷を連打された時は体が全力で警鐘を鳴らし、少し冷静になったが……
「遅すぎたよなぁ……厄介ごとには首を突っ込まないように生きてたのに、首突っ込むようになったらこれだよ」
瞼を閉じ、もう少し眠ろうとした瞬間、扉が蹴り開けられた。
「なにご……ッ!!」
突然発生した大きな音に驚き、跳ね起きるが、勢いよく起きた為、痛みに堪えながら体を丸めていく。その空いた扉からロビンが顔を出す。
「おー、起きたか……ってどうしたんだよ光牙。腹痛いのか?」
「取り敢えずロビン、お前のせいだと言っとこう……後で絶対殴るかしばくか蹴っ飛ばす……」
「な、なんかごめんな……?」
本当こいつは……
「で、何の用……?」
「いや、目が覚めてんなら伝えとこうと思ったことがあってな」
伝えとくこと……?
「お前、本当に周りを頼るようにしろ。早死にするし、正直ここまで生き残ってんのかがなんでわかんねぇ。回復できるからいいやとか考えてるんだろうけど、回復出来んのだって限度があんだよ。即死されたらどうしようもないし、心の傷は魔法じゃ癒せないからな」
「……分かってるんだけどね」
「分かってねぇからこんな話してんだろうが。今度一人で突っ込むようなことがあったら足をへし折ってでも止めるからな」
そう言いながら、乱暴に扉を閉めてロビンは去っていった。扉を締め切る最後まで、咎めるような視線を俺に向けながら。
「あー……確かにソロじゃ限界あるだろうけどさぁ……どうやって頼れってんだよ、お前らのこと名前位しか正確に分からねぇんだぞ……」
眉間を押さえ、そう呟いた。自分だけじゃ出来ないから手を取り合う。それは分かるけどさ……
どうしたら、目的をやり遂げる最後まで他人を信用できるのさ。ずっとそんな人を探してたのに、見つからなかった。父さんと一緒にいた時の感覚はまるで感じなかった。
思い返しているだけで、拳に力が入る。義手がカタカタと音を立て、握り拳を作り……すぐに力を抜いたように手を開く。手を開くと、すぐに横になり、右手を掲げるように突き出す。
「……くそっ、自分のこともてんで理解できちゃいないってのに……他人のことなんて、分かるわけないよな……」
右手の甲を自分の顔の上に乗せ、視界を暗くする。疲れは全く取れていないらしく、すぐに寝息を立て始めた。
その頬を、涙が一筋伝って落ちた。