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炎と雷。

俺が放った炎は、勢いよくフリードに飛んでいき、辺りを焦がしていく。直撃した途端、辺り一面に炎が散り、草むらに燃え移ることで炎の勢いが強まる。


「こいつはおまけだ、喰らってけよ!!」


紅蓮を放り投げた後、掌から炎を放ち、炎の勢いを強める。そうして右の拳を握り、炎を収束させていき、巨大な火柱を産み出した。


すると一度に魔力を使いすぎたのか、すぐに目眩がし、ふらついた後に地面に倒れ込む。


「これだけやれば、デカイ手傷とはいかなくてもダメージぐらいあるだろ……!!」


「なんだ、この程度か。あの時見た炎には魅せられたが、案外受けてしまえばこんなものか……残念だよ、同胞をこの手で殺さねばならんとは」


炎の中から、あいつの声が響いてくる。俺がその声を聞き、そちらの方を見ると、煤を落としながらゆっくりと炎の中から近付いてきていた。


俺はその光景に恐怖を感じ、本能的にこいつには勝てないと感じてしまった。地面から立ち上がることもせず、そいつから距離を取ろうと後ずさる。


「お前……目的はなんだ……!? なんでこんなことを……!」


放り投げた紅蓮に手が当たり、その切っ先をフリードに向ける。向けた切っ先は小刻みに震えており、戦う意志が折れかけているのが見てとれる。


「目的? 当初はお前の生け捕りだったが……ここリュミエールはいずれ、反乱分子を生むだろうと思ってな。ついでに攻め滅ぼすつもりで来た。全く、あやつらめ……情報を持ってくるのではなく、本体を持ってこんか……」


「……それは、俺がいてもいなくても関係なくここを攻め落とすつもりだったのか?」


「いや、お前がいなければこのような地には訪れなかったろうよ。面白いと欠片も思えない」


……つまり、俺がここにいたから、ここに攻め込み滅ぼしたということか? 俺がいたから……?


「……顔色が悪いな。もしや、自分のせいだと思っているか? いずれこうなっただろうに、気に病む必要がどこにあるのだ」


この惨状を作り上げた本人は、何故俺が自分を責めているのかまるで理解できていないらしい。更にこいつに対する恐怖が増し、紅蓮の切っ先は更に大きく震え出した。


「……まぁ、お前を生け捕りにしたとして、害はあっても利はないと考えた。だからここで死んでもらうぞ」


フリードの剣が振るわれ、右手に持っていた紅蓮を弾かれる。弾かれた剣を一瞬見て、飛び退く。


だが、飛び退いた所にフリードの剣が投擲され、それを防ごうと腕を龍化し、鱗で防御しようとしたがその鱗の防御ごと自分の右腕を容易く貫き、地面へ縫い付ける。その剣を足で深く突き刺すと、そのまま掌に雷を集めながら空へ飛び上がった。


雷は形を変え、今は槍のような形に変化している。しかし、今の状況ではフリードのどんな攻撃でも致命傷になりかねないため、非常にまずい。


逃げようにも腕が縫い付けられており、逃げるに逃げられない。万事休す、というものだろうか。


「ぐっ……!! ヤバイ、このままじゃ……!!」


「死ぬな、間違いなく。さぁ、どうする?」


……正直、終わりだと思った。出来ることはもうない。炎も、近接戦闘も通じないんじゃ、出来ることは逃走することだけ。それすらも今は封じられた。


……詰みだね、終わり。あの雷の槍に貫かれて、体の内側から焼かれて黒焦げになって幕を閉じる。そう考えると、もうどうでもよくなってきた。


だらんと力を抜き、来るであろう痛みを迎え入れる。


「……あの老人はこやつを買い被りすぎたようだな。こいつがいつかは私を倒してくれるだろうと思っていたのか?」


……老人? 長老はほとんど戦闘能力はなかった筈……おい、まさか。


「……長老も、殺したのか。本当に全員殺したのか……!!」


「いや、子供は逃がした。何も出来ないような子供での命を奪うのは罪深いことだ。だから子供だけは殺さずに逃がしているのだよ、私は。私の兵はどうだか、知らんがな」


俺はその言葉に、ひどい憤りを覚え、突き刺された剣を引き抜こうとした。子供だけは生かすと言っても、その後どうなるかは分からないだろうに。


ひどいトラウマが植えつけられ、そのまま……なんてこともあり得るだろう。


歯を食いしばり痛みに耐え、やっとのことで剣を引き抜く。鮮血が宙を舞うが、今はそんなことを気にしている余裕はない。


あの雷の槍が投げられれば、音より速くこちらに到達し、容易く俺の体を貫くだろう。


迎撃や回避するには速すぎる、防御すれば黒焦げ人形の出来上がり。


なら簡単な話、撃たせなければいい。


俺はフリードの剣を引き抜いた勢いのまま、力任せに放り投げた。素人目で見ても、この剣はかなりの業物だと分かる。実際鎧のような龍人の鱗を裂くのだから、かなりの業物なのだろう。投擲でもとても十分なダメージが与えられると考えた上で、俺はこの剣を投げた。


「投擲は先を読んでやった方がいいぞ? 慣れてないうちは、突進した先か、回避先を読んでからだ」


回りながら飛んでいく剣は、軽々と回避されてしまい、段々勢いを失い地面に突き刺さった。


だが、一瞬でも目を離したのなら……!


「流星よ、我が体に宿れ!《スターダスト》!」


「むっ、どこへ行った……?」


自身の身体能力を上げ、フリードの視界から消える。フリードが探しているうちに紅蓮を拾い、翼を広げフリードの後ろまで飛び上がる。


まだフリードは気付いていない、弾丸のように加速し、背後から襲いかかる。加速していく中、刃が炎を纏う。


途中でフリードも気付き、こちらを見るとニヤリと笑い、槍を向けようとしている。……もう出来ることは突っ込むしかない!


「ここで……落ちろぉぉぉ!!」


「まだ死ぬ訳にはいかんのだよ、理想を叶える為に……!!」


雷の槍と、紅蓮の刃が交差し、爆発を起こす。


その爆発によって俺の視界は真っ白に染まった。

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