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白雷。

剣戟の音が、燃え盛る里に響く。その音の元になっているのは俺と、目の前にいる皆の仇だった。……俺が仇をとるなんて、正直嫌かもしれないが、今はこいつを殺すことしか考えられない。今も、頭の中はどす黒い感情で溢れかえっている。


ただ、思考は殺意で鈍ることはなかった。今は目の前の敵を殺す。その為に剣を振るうだけ。……考える必要はない、それだけだ。


そう結論を出すと、乱暴に剣を振るうが、何度やっても剣は止められてしまう。そりゃそうだ、俺は達人でも何でもない、ただお前の首を切り落とす為に振っているんだから。


何回か剣をぶつけ合い、その途中でつばぜり合いに持ち込む。ここで押し切って……!


「ふむ……案外激情に駆られやすいのか? お前は。まぁ、自己紹介をしておこう。フリード・ロアだ」


「てめぇに話すことは何もねぇ! ついでにてめぇの名前にも微塵も興味がねぇ!さっさと斬られろ!!」


その言葉と同時に、押し切ろうと力を込める。


「……少しは冷静になったらどうだ?」


すると、目の前の敵はゆっくりと片手をこちらに向ける。俺はその向けられた掌を見た途端、これはヤバいと感じ取り、距離を取ろうとするが、少し遅かった。


その掌から白い雷が襲い、腹部に痛みが走り、吹き飛ばされる。受け身を取ろうとするが、体が痺れ、体の動きが鈍くなっており、受け身を取る前に家屋の壁に激突する。どうやら腹を蹴られたようだ。


「雷かよ……! 一番面倒な相手じゃねぇか!」


「安心しろ、殺す気はない……私が気に入ったままならば、だがな」


そう言いながら、翼を広げ飛び上がると、空に手を翳し振り下ろす。すると、空が光り、雷が落ちてきた。


「あれで殺す気がないとか絶対嘘だろ……!?」


落ちてくる雷を地面を転がって避けたり、後ろに飛び退いたりして避ける。雷とはいえ、自然発生した雷よりは遅く、おまけに雷が落ちる際に一瞬だけ自分の周りが光るので、かなり避けやすい部類に入るとは思う。


しかし、反撃が出来るかといえば……まぁ、御察しの通り。


「馬鹿みたいな数降らせやがって……!!」


先程からずっと雷を落として来ている為に反撃のタイミングが掴めない。遠距離は狙いをつける為に自分が止まらないと撃てない上、近づこうとすれば雷の餌食になる。正直手詰まりだ。首筋に冷や汗が垂れてくるのを感じる。


「どうすればいい……待てよ? 周りにある武器を使えば……!」


亡くなった里の方々の武器は、広場全体に散らばっている。次の雷を回避さえ出来れば……!!


「ではそろそろ……強めにいくぞ? どうするか見せてみろ」


フリードが空に指を指すと、雷がその一点に収束していく。その指が振り下ろされれば、俺に向かって特大の雷が落ちる。そこに武器を投げれば……!


そう考え、近くに落ちていた剣を手に取る。


「そのような剣で何が出来る? お前の右手に握られている業物レベルならば何とかなるかも知れんが、ただの鉄剣ではないか。……万策尽きたか?」


「……さぁ、どうだろうね? やってみなよ」


「ならばお望み通りに、この雷を落とそうか」


指がこちらを指し、白い雷がこちらに向かい落ちてくる。案外嘗めてくれてて助かった……!! これなら!


「うぉぉらぁぁぁ!!」


剣を雷に向かい、思い切り放り投げる。剣は回りながら雷に向かっていき、雷に当たるその瞬間、雷が裂け、剣を避ける。裂けた雷は俺の目前で一纏めになり、俺の体を呑み込んだ。


「なっ、がぁぁぁぁ!!」


痛いと感じる以前の問題だった。目の前を光が一瞬で駆け抜け、体が一瞬で焼け焦げる。体が焼ける感覚というものなど知りたくもなかった。


「ぐうっ……!! あぁぁぁぁ!!」


尻尾を使い、地面を何とか叩くことで飛び上がり、雷の奔流を逃れることが出来たと一息つく暇もなく、また雷だ。地面が一瞬、光る。俺は休ませろと内心舌打ちをしながらその場を飛び退いた。


「ほぉ……? あれを受けてまだそこまで動けるとはな。大多数があれを受けてしまえば、死ぬか虫の息で戦意を失うかだったというのに。……だがもう剣は振るえまい」


「……嘗めんなよ、まだ戦える……!!」


そう言うと、俺は口の中に魔力を集め始める。


「なるほど、ブレスか……撃ってみよ、威力次第では私を殺せるかも知れんぞ?」


フリードは俺がやろうとしていることを見抜き、その上で受けきろうとしている。絶対に耐えられるという自信があるのだろう。


なら、その自信を叩き折ってやろう。


その考えと共に、俺は口に集めた魔力を炎に変換させ吐き始めた。


















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