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激情の炎。

荷造りを終え、白焔に乗った後も、嫌な予感は消えなかった。それどころか、リュミエールに近付く度に、嫌な予感が強まっていく。


「なんだこれ……気持ち悪い……」


「まーた酔ってんのかおたく。致命的に乗り物に弱くねぇか? 馬車とか乗らねぇの?」


「こんな速いやつに乗って大丈夫ってお前らの方が信じられねぇよ……」


今も、白焔の上に乗り、リュミエールへ向かって駆けている。……情けないことに、酔ってしまったが。先程から、胃の中の物全部を吐き出しそうで口を押さえている。


「……まぁこの速度なら後少しでつくだろ。辛抱してくれ」


「何白焔そんな速いの? 俺があのヤバイ所に落ちてからそんな速度出してたの? それに追い付くあの暴虐はなんなの……」


普通、何事もなければ飛んで3日、馬車なら5日程の距離を、この白焔は一時間程度で走る。本当走力どうなってんだ……


「……で、なんか考え事か? すんげぇ難しい顔してんぞ」


「……別に。何でもないさ。」


ここで夢のことを話したとして、信じてもらえるとは思えない。それに……実際今は何も起こっていない。


俺は、そう言うと目を閉じ、リュミエールに着くまで眠る事にした。体力が回復してるかと言えばそこまでしていないし。


──────────────────────


……何かが燃えている匂いが風に乗って漂ってきた。そこまで深い眠りではなかったのか、すぐに目を覚ます。


「……おい、この方向って……」


「ロビン、お前の考えた通りだろう。間違いなく、リュミエールの方向だ。攻められているようだな……」


「何で今……!? 攻められるような要因あったか!? 人間にも危害を加えるような真似は……盗賊を除いてしてねぇぞ!?」


まぁあれは正当防衛だと言えば通る……訳ないよな、かなり俺達龍人の扱いはひどいし。


「とにかく、急がないと……!!」


「あ、馬鹿! おい待て光牙!! 一人で突っ込むな!」


静止を聞かずに白焔から飛び降り、足が地面についた瞬間すぐに走り出す。走って向かう途中にも、爆音とともに火柱が上がる。急がないと……!!


自分の体全体に魔力を回し、自分の移動速度を上昇させ、普段の倍の速度で森の中を駆ける。


「どうか間に合ってくれ……! 何かが出来るなんて思い上がっちゃいないけど!」


全力で駆け、赤い光の軌跡を残しながら森の中を急ぐ。


──────────────────────


「これは……!? どうなってんだよ……!」


リュミエールに辿り着いた時には、視界に入る家屋は全て燃えており、道には亡骸が横たわっていた。一瞬、最悪の想像が頭をよぎり、頭を振ってその想像を掻き消す。


「いや、まだ助けられる人がいるかもしれない…… 誰か、誰かいませんか!! 誰でもいい、返事をして下さい!」


燃えている村の中を、必死に声を上げ駆ける。誰か生きている人はいないのかと、一縷の願いをかけて。


「頼む、頼むよ!! 誰か返事をしてくれ!」


しかし、どんなに大きく叫んでも、聞こえて来るのは燃える炎の音のみ。龍人や生物の声は全く聞こえて来なかった。


「ちっくしょう……!! 遅すぎたのかよ!?」


間に合わなかったという思いと共に、拳を地面にぶつける。すると、小さく剣戟の音が聞こえて来た。


「敵がまだいるのか……!? それに、まだ戦ってる人がいる! それじゃ誰かが生き残ってたとしても襲われたら……! 倒さねぇと!」


剣戟の音が響く方向に走る。近づいて行く度に、どんどん剣戟の音が激しくなっていく。


(頼む、間に合ってくれ……!!)


この角を曲がれば、その二人が見えてくる。そう思い、勢いよく角を曲がった時だった。


ひどい鉄の匂いに、肉が焼ける匂いがその場に漂っていた。


そこには夥しい数の亡骸が転がっており、既に手遅れだと言うことはすぐに分かってしまった。


そしてその広場の中心には、一人の龍人が今も立っていた。白き翼を広げ、剣を引き抜き、殺した相手を放り投げ、こちらを見る。


「……なんだ、少しばかり遅かったな。ここの者はほぼ殺してしまったぞ」


その言葉は、俺の意識を赤く染めるには十分過ぎた。地面を強く蹴り、肉薄する。剣を振るうが、相手に防がれる。こいつがなぜ攻めて来たのか、今はそんなことはどうでもいい。


そうだ、今だけは目の前の敵を──


──殺すためだけに、剣を振るおう。


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