表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/198

服探し。

「……なんだろう、ものすごい恥ずかしいこと言ってたような」


眉間を押さえながらベッドから起き上がり、小さく呟く。少し、体が重く感じた。鉛のような、とは思わなかったが、重りをつけられた感じだ。


「そりゃ、最近は寝て起きてだったからなぁ……体も鈍るか……」


ベッドから降り、自分の服を見てふと考え込む。


「なんというか、ボロボロだな……袖口は焦げてるし、解れとかも出てきているし」


何度も戦っているうちに、服にダメージが蓄積されており、かなりギリギリの状態になっていた。もうダメージ加工とかそういうレベルじゃないね。


「やっぱり普通の服じゃ、すぐボロボロになるよな……気に入ってたんだけどなぁ。直しても同じ結果になるし……」


義手で頭を掻きながら、置いてあった自分の荷物から地味目の服を取り出す。前の住人が置いていったのか、家の倉庫にあったのを拝借したものだ。


「今日はこれ着とくか……素朴な村人、みたいになるけど」


髪の色から素朴な村人は無理だろうが、少しだけでも地味にはなるだろう。出来れば赤色がよかったが……残念なことに、深い緑色だ。


なんで赤が好きなんだっけと、頭を回しながら、テキパキと着替えていく。


「……あれか? 赤はヒーローの色ーってやつか。それか自分のトレードマークだと思っていたか」


まぁどちらにせよ、子供っぽいというかなんと言うか。昔の子供だった頃の自分は純粋だったんだなと思うよ。


俺は、ヒーローにはなれないし、なる気もない。自分の繋がりを守るだけのヒーローなんて酷いものだ。だから俺はヒーローにはなれない。


「……鏡見て寝癖直したら、服屋行ってみるか……」


鏡台に向かい、目に飛び込んで来たのは、酷い寝癖のついた頭だった。所々髪が跳ねている。


「……これはなんとかしないといけないな。こんな鳥の巣みたいな髪じゃ、鳥が止まりそうだ……」


俺は、自分の寝癖を十分かけて直し、そのまま玄関から外に繰り出した。


──────────────────────


「さて、問題は自分のセンスがどれぐらいかと言うことだが……流石にそこまで派手なのはいらないしなぁ。シンプルなもの。それが欲しいや」


俺は道を歩きながら、服屋を探して歩いていた。いつもの癖でフードを被ろうと手を伸ばすが、今はフードがないことに気がつき、手を引っ込める。そしてそれを数回繰り返し、目的の場所にたどり着いた。


「ここか……服屋。素材持ち込みもできるのか……とりあえず今回は見て回るだけだからな……後で持ち込めばいいだろう。あの狼の毛皮とか」


俺は店の扉を押し開け、中に入る。かなり上質な素材を使っているのもあれば、普通の素材で作られた物もある。


様々な服に目を通して行くと、赤地に黒のラインの入ったコートが目に入った。


これは……いいな。格好いいし。その隣にある赤のシャツも買ってと……赤のシャツだけでもいいような……? 後は……下だな。こっちはまだ黒いズボンとかがあるし……


「……そういや、金は金貨が何枚とか、銀貨が何枚とかだったな……足りるかな……両方五枚ずつもらってきたけど……」


ポケットの中から、金貨を取り出す。これだけあれば足りない、なんてことはないだろうが……


「なんだろう、足りる足りない以前の問題な気がしてきた……問題に巻き込まれるとか」


そして俺は、この先この発言を後悔することになる。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ