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思想と決意。

「おい、目を覚まさないか。いつまで寝ているんだ?」


「……あー、一歩届かないか……」


頬を叩かれ、その刺激で目が覚める。どうやらかなり時間が経っているようだ。空が暗くなっている。横になった状態から状態を起こし、ティナがその横に座る。


捨て身での一撃でも、ティナには届かなかった。その事を自分の目で確認したとはいえ、悔しく感じる。


「にしても、お前は本当に無茶するな。その腕といい、先程の組み手でもそうだ。……死にたがりか?」


「流石に無遠慮過ぎない?……それはないよ、自分のやりたいことができなくなるじゃん」


そう、誰が好きで死にたいものか。死にたいのなら、この世界に来た時に猛獣等を探し、自分から口の中に飛び込んでいる。


「なら何故だ? お前の行動は誰が見ても自殺志願者のそれだ。今回のはまだいい方だが……お前はこれが刃だとしても同じようにするのだろう?」


……どうだろうか。腹に刺さると流石に痛いし。腕で受けて右からの回し蹴りを当てる? そんな所だろう。


「……多分ね、俺は自分がどうなってもいい。そう考えてるんだ」


「……何故そうなった?」


「俺さ、子供の時からこの目と髪の色だったんだ。子供の頃に住んでた所は、赤目赤髪ってとても気味悪がられた。友達なんていなかったし、家族からも気味悪がられた……その上、とても不運でさ。家まで燃えちまったよ。そこで俺は自分がいたってどうでもいい、いたところで何も変わらない、そう思うようになったんだ。」


自分の価値なんてないと思うようになった俺は、独り暮らしが出来る年齢まで耐え、誰も知り合いがいない場所に行って独り暮らしを始めた。


そして不運が巻き起こした事故で死んで……この世界に来た。勿論、この件は話していない。


「という訳さ。だから俺にとって皆は初めての繋がり。これを守る為なら怪我だってする。命だって……」


「惜しくはないと。……お前はあれだな。バカだな。そんな方法で守ったって、守られた側からはいい迷惑だ。助けられる度に死にかける、そんなやつの助けを借りられると思うか?」


……確かに、そうだろう。けど、自分ではこうするしかない。相手の事はその相手が自分で乗り越える等、自分で何とかしてくれるように願うしかない。


人のことまで背負える程、自分は強くない。


「……俺は……多分変えられないよ。もうどこかイカれちまってるんだ。自分が傷つくことはどうでもいいんだ。誰かが傷つくことは許容できない……そんなやつみたいだから」


俺はそう言いながら立ち上がり、自室へと向かった。


──────────────────────


「……やれやれ、あれはどうにかするのに手間取りそうだな……雛?」


……木の後ろから、雛が姿を現す。


「いつから気付いてました?」


「最初からだ。索敵はかなり自信があってな。それで? 聞いた感じはどうだった? 違うな、どう感じた?」


私はニヤリと笑うが、すぐに真面目な表情に戻した。流石に笑いながらする話ではない。


「……危うい、と感じました。自分か仲間か、どちらか助けてやるから選べと言われればあの人は間違いなく仲間を選ぶでしょうし……」


なるほど、よく分かっているようで何よりだ。しかし、まだ意思は固まってないようだな……


「なら、どうする? そのまま指を咥えて眺めるだけか? それとも自身から変化を望むか?」


「……私は」


……やはり、直ぐにとはいかないか……これも戯れに言っているようなものだしな。正直、光牙の思想を変えるのは難しいだろう。


ただ、あのままでは悲しい終わり、または寂しい最後を迎えるだろう。そんなのは、私としては嫌だからな……意外と、あいつを気に入っているのか……?


「……まぁ、すぐにとは言わん。決心がついたら話をしに来い」


「……はい」


……まぁ、雛のことだ、次の日には来るだろう。自分なりの答えを出して、な。


そう思い、私も自室に向かった。おおっと、忘れる所だった。


「もしこの話に乗るなら気張れよ? 私とて、気楽な特訓などさせる気はないからな」


私は去り際に、こう言い放った。


雛は私の言葉を聞き、ビクリとしたようだが……直ぐに覚悟を決めた目になった。私はそれを見てニヤリと笑い、屋根の上に翼を広げ、飛び乗る。


あぁ、やはり私の目を信じてよかったよ……あいつといい、雛といい……龍人の未来は安泰だろう。


「さて、一人月を見ながら酒でも飲むとしようか……」


自分の未来がどうなるかは、自分自身がどう選択するかにかかっている。だが……手助けすることは、出来るよな?


取り出した盃に注いだ酒に映る月を見ながら、私は一人思うのだった。







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