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組み手。

居間に戻り、俺は机に突っ伏していた。流石に息子を晒すことはなかったからいいんだけど……


「……大丈夫? 何かあったのかしら?」


「レーテさん、今はほっといて……心的ダメージを負っているから今は……」


「何があったのよ本当に……」


「気にしないで本当……そのうちに戻るから。いつもの俺に戻るから……」


腕の痛みに耐えながら、顔を歪めてもいいように隠す。さすがに耐性がついてきたのか、うめき声をあげることもなくなった。


にしても……うん、場所が逆で良かった……流石にあかんし……色んな意味で。


「そう? なら大丈夫そうね。腕の方は……痛んでるわよね。顔をずっと上げないし、左腕に手がかかってるもの。慣れてはきても、痛いものは痛いわよね……」


……やはりバレてしまったか……この人には隠し事が通用しないと思っていた。


「この事は秘密にしておいて下さいや……ここで痛がってたことは……」


「分かったわ、ここだけの秘密ね?」


……でも、黙っていてくれと頼めばそうしてくれる。そういう人だ、この人は。


──────────────────────


「せいっ!……うん、薪割りは大丈夫だな、斧を真っ直ぐ振り下ろせる。右腕と同じくらいに力が強くなってるな……これなら色々と使えそう」


今日はリハビリ序でに、薪割りをしていた。以前より斧をしっかりと構えられ、真っ直ぐと振り下ろせるようになったことが、嬉しいと感じる。


が、それと同時に、左腕を失ったから出来る芸当だと考えてしまい、その喜びもなえてしまったのだが。


「こんなもの集めればいいだろ……少し、体を動かしてみますか。誰か相手してくれるのは……」


「なんだ、組み手でもするのか?」


丁度聞いていたかのように、ティナが近付いて来た。


「うん、そろそろ片腕もどれぐらい戦闘で使えるのか把握しておかないと。という訳でいいか?」


「あぁ、構わんよ。体が訛ってはいけないからな、丁度よかった」


まず俺は斧を地面に下ろしてから、格闘の構えをとる。対するティナは自然体のまま、真っ直ぐとこちらを見ている。


「じゃ、やらせて頂こうか……な!」


「あぁ、来い!」


跳躍し、飛び蹴りを放つが、ティナは大体予測していたのか、それを難なくかわし、隙だらけの腹を狙い、回し蹴りを諸に入れて来た。


「ぐうっ……! 容赦ないね、まだ病み上がりなのにさ!」


「おいおい、病み上がりなら飛び蹴りを入れてくるなよ……」


蹴りを受け、地面を転がる。距離を取られてしまうも、その距離をすぐに埋め、右の拳を叩き込むも、ティナに受け止められ、間髪入れずにティナの拳が飛んできた。


「あっぶねぇ……防御間に合った……!!」


「ほぉ、やはり速いな。だがいつまで反応できるかな……?」


拳と自分の顔の間に義手を入れ、拳の勢いを止める。しかし、拳が少しずつ押し込まれていく。


やはり格闘ではかなりの差がある。分かっていたことだが、自分は元々、少しだけ喧嘩をしていた高校生だ。対してティナは元々戦いに身を置いて来た。年季が違いすぎる。なら出来るだけ技を盗んd……!


「足元がお留守だったな? 常に警戒しろよ」


「足払い……! くっそ、失念してた……!!」


足を払われ、地面に倒れそうになる。ここで下手に抵抗すべきではないと、勘が告げていた……のだが、ティナが回し蹴りを放つ体制になっていることに気付き、防御の姿勢を取り、衝撃に備える。


腕に衝撃が走る。それと共に目に映る世界がかなりの速度で変わっていき、背に走った衝撃により世界も止まる。先ほどいた場所から五メートルは吹き飛んだらしい。


腕には痺れが残り、ティナの蹴りの威力を物語っている。


「やっべぇ……折れたかと思った……!」


「どうした、まだ行くぞ!」


吹き飛んできた方向から、ティナが走って来ており、まだ終わってはいないと立ち上がり、拳を構えた途端、ティナが飛び上がり、踏みつけるような蹴りを放ってきた為、地面を転がって回避した。


(どうする……? ここまでやったなら勝ちたいけど、正直勝てる気が全くしない! 馬力が違いすぎるんだよ……!)


どうすればいいのか、全く分からない。少しの喧嘩仕込みじゃ……


……待てよ? 喧嘩仕込み?


「一か八か……! 賭けてみますか!」


互いに同時に駆け出し、ティナの拳が腹を打ち据える。


「ううっ……!! 強烈だわやっぱ……」


だけど、耐えられない程じゃない。組み手に本気、出しすぎてるかもしれないけど、そこは見逃してくれよ!


「最後にぃ……一発ぅ!!」



入った! これで勝t──


左の拳が、ティナの腹に諸に入る寸前、俺は気を失い、ティナに当たるギリギリで力が抜け、当たらなかった。


それを自分の目で確認し、俺の体は崩れ落ちた。












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