強襲。
「……薪を集めるのが、初仕事とはね……まだまだかかるんだっけ?」
「三日ほどかかるらしいな。リーダー決めもなしになったらしい、お前ら三人横一列の方がいいだろうと」
結局、リーダーなしの独立部隊のようなものらしい……にしても
「「……薪割りってこんな面倒なんだな……」」
一回殴りあったからか、レインとも意見が合うようになってきた。河川敷とかで殴りあったにしては被害がでかいよね。
「ほら、手を動かしてよ光牙。いつまでも経っても終わらないよ」
「あ、わりぃリーネ。考え事してた。……にしても、薪って何に使うんだ?暖炉?寒いところでも行くのか?」
「南の次は北に向かうんだ。ここで沢山取って置けば戻らないで済むから、だって」
「へぇ……」
行商人も大変だね。俺ならこんなことしたくない。斧なんて振ったことがない。まだ剣の方が真っ直ぐに振り下ろせるぞ。
「ところでレイン、後どれぐらい?」
「だから三日ほどだと……」
「日にちじゃねぇよ、個数だよ」
「あぁ、そっちかすまない。後もう少しだ。後二、三個薪が出来れば大丈夫だろう。」
……それって……
「綺麗じゃないと、駄目か?」
「……駄目だろうな」
「勘弁してくれよぉ!? ここまでやるのにどれだけかかったと思ってるんだよ! スッゴい体力と集中力使うんだぜ!?」
「……頑張れ」
こいつ、他人事だと思いやがって……!見てろよ、お前が寝た時が最後だ!真っ黒にしてやっからな!
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「なんとか……終わった……明日は筋肉痛か……?」
「大丈夫か?」
「治療魔法とか使う?」
「いや、いいや。筋力上がると考えれば……まだ納得出来るから……!?」
そんな事を話していると、急に馬車が止まった。あまりに急だったので、受け身を取ることもなく俺は顔から壁に叩きつけられた。
「いってぇ……おい、レイン、リーネ、大丈夫か?」
「うん、私は大丈夫だけどレインが……」
「思い切り打ち付けた……リーネを守ることで頭が一杯になって、自分のことは考えちゃいなかった……」
どうやら、リーネは無事で、レインは義兄としての行動で少しのダメージを負ったようだ。……
「とりあえず、団長に聞きにいかないとな。なんで急に止まったのかを」
「だな……行くか、団長はいつも先頭にいる……うぐっ……!」
「無茶しちゃ駄目だよ、レイン!」
「馬鹿を言うな、この程度無茶でもなんでもない!! 行くぞ……」
……正直、なんで止まったかは大体予想が付く。魔物が来たか、盗賊かのどちらかだろう。どちらにせよ、急がなければ。
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「……おい、ここまで被害って出るのか?レイン。そこらの魔物じゃなさそうだぞ」
「……そのようだな。さっさと原因を探すか」
俺達は団長に会った後、リーネには待っててもらい、俺とレインは外に出て、魔物を探しているが、全く痕跡が見当たらない。足跡すら見つからないというのは、さすがにおかしい……先に迎撃に出た人達が倒れていることから、何かが来たのは分かるんだが。
「……これ、本当に魔物に襲われたか?どうみても人……盗賊もあり得ねぇな。金品を持って行くはずだ。皆の武器は残ってるし」
「それに、これは盗賊も混じっているな。盗賊に止められた所を、別のやつに襲われた……?襲うと言ったら魔物だが……」
「「……にしては、綺麗過ぎるよな……」」
俺達の見解は、互いに魔物ではなく、人だと言うことで一致した。しかし、こう考えると問題が出てくる。
「人だとすれば……かなりの凄腕だよな」
「人か龍人でのトップクラスのやつだな……武器構えるぞ、光牙。どこから来るか分からない」
俺は剣を構え、レインは岩でのガントレットを形成し、目で周囲を警戒する。しかし、目に写るのは木や草むらだけだ。……しかし、何故か俺達はこう思っていた。
((この惨状を引き起こした犯人は、まだ近くにいる……!!))
そして、俺から右側の草むらから翼を生やした人型の影が俺に向かい飛び出して来た。
「いた……!」
「逃がすか、ここでぶっ飛ばしてやるよ……!!」
俺とレインは、その影に同時に走り出した。