ともかく、人と会いたい。
…とは言ったものの…どこから斬りかかれば…大きすぎるんだよこの鳥!
《来るぞ、構えろ!》
目の前の巨鳥が一声鳴き、僕に向かって突進してくるが、飛んでいた時よりも速度は遅く、これぐらいなら…
「楽に避けられるんだよ、ね!」
避けた後に、僕を映している目に剣を突き刺す。…自分でやって思ったけど、エグいなぁ。ただ、手段なんて選んでいられないしなぁ…腹減ってきたなぁ…
「あ、こいつ喰おう。大きさは十分だし、大分膨れるでしょ」
あれ、なんか怖がってる?そんなおかしい事言ったかな…
「大丈夫、怖くないよー。痛みは一瞬だし、その後は…肉に変わるだけだから」
鳥が一声、けたたましく叫ぶ。…僕は何故か、これが悲鳴のように思えた。
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「…案外…キツかった…」
気が抜けて、尻餅を付き、腕を普通の物に戻す。なんとか狩れた!あの後、爆発を連続で起こして遠距離で攻めて来たのは意外だったけど、目潰しした方向から近づいたら案外楽に首を落とせた!
「かと言って…どうしようかな…ゲームとかと違って、勝手に回収される訳ではないし…」
うーん、本当にどうするか…こんな食えないぞ…
「グルルル…」
おっと、お客さんかな?…じゃなくて、そうだ。
「…これ食べる?こっちは少しでいいから、後は持って行っていいよ」
腹が一杯になる程度の量を剥ぎ取る。気分は良くないけど、仕方ないよね…そうしないと、こっちが死ぬし。
「…グルル」
「じゃあな!」
理解してくれたのか、巨鳥の死骸を引きずりながら何処かに去っていく。…あいつも何気にでかかったな。鳥は機動力を落とせたから良かったけど、あいつと戦う事になったら死んでたな…
「よし…でもこの剣、初めて見た筈なのにすごく懐かしい気持ちになるな…」
《それは我が使っていた武器だ。銘を紅蓮。しかし今はその銘の通りの炎を使えんようだな》
マジかよ。という事は謎の声は同じ龍人だったのか。まぁ、それはおいといて、炎を出せる剣…
「本格的に、ファンタジーな世界かな?」
《お前は何を言っておる…》
うるさい。とりあえず、草原に戻りたいけど…
「なぁ、…えっと、テリー」
《なんだその名前は…大方、名前が分からぬから、そのような名で呼んだな?》
バレてるし。でも本当に分からん。予想している返答は、戯け、うんたらかんたら。
《自分ですら分からん物を、どうやって教えろというのだ》
「そういうタイプかあんた。まぁ、理由を教えておくよ。僕がいたところだとね、謎をミステリーって言ったりするから、声からして男にミスって付けるのはいけないでしょ?それでテリー。どう?」
《…まぁ、そう名乗る事にしよう》
いやあんた現状僕としか話せないから。
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「歩いて歩いて歩き続けて…ここどこだよ!」
《知らぬ》
まずいな、完全に迷ってしまった…!森の中を全力で逃げながら奥に進むから、道なんて覚えていないし…何かの気配?ってうおっ!?いきなり襲ってきた!?
「危な!?」
ギリギリの所で地面を転がって避ける。さっきまで気付かなかったが、人の気配が周りに沢山ある…
「僕は迷ってまして…な、何も持ってませーん…」
「…」
「いや無視かよ!?」
その言葉を聞いていないのか、短剣で斬りかってくる男に蹴りを入れる。…あっ、やっちゃった。蹴りを入れたって事は…!
全員が、草むらから飛び出してきた!…くっそ、多勢に無勢なんてもんじゃねぇぞ!もう一度、腕を…危ないな!?
「お願いだから、僕の話を聞いて!?」
すると、僕の腕は再度鱗に包まれ、剣を受け止めた。…意外と堅いのか、剣の攻撃を完全に阻んでいる。
「…やはりか」
え?
「やはりって…」
「連れて行くぞ、眠らせよ」
は?ちょっと待って?急すぎない?
とか考えているうちに、僕の周りは怪しい煙で一杯になっている。
「これは…!」
まずい、大体こういう煙は眠らせる効果が…しま…った…
僕は、そのまま眠りに落ちた。