揺られる旅路。問題はない……?
「手足は動くようになったな……漸くか、自分で動けるようになるのは」
「だからと言って無茶をしていいと言うわけじゃないぞ、光牙」
「……分かってるよ……リーネは?」
「あいつは朝に弱い」
大体3日ほど経ち、俺が落ちた森の所まで戻ってきた。俺がどれだけ飛ばして来たのかがわかったのと同時に、この移動式の拠点の動力は馬だと思っていたがあの生き物は、どうやら馬型のゴーレムらしい。
しかもそれを作ったのがレインだというから余計に驚いた。それを伝えるとレインは治療だけが俺の分野じゃない、この馬鹿がと言ってたけれど。……最後余計じゃない?
「にしても……暗黒樹海ね……あそこがそんなにヤバい所だったとは……」
「今でも信じられないぞ、俺は。お前が暴虐の嵐に落とされた後にここに落ちて生き残るなんてな」
……どうやらここは、かなりの危険地帯だったらしい。確かに、あの暗闇から絶え間なく襲われると考えると恐ろしい物がある。だが次来たとき用の俺は冴えた考えが頭の中に閃いた。
「……でもよ、樹海ってことは木じゃん?」
「そうだな」
「ならよ、あの木を斬り倒して進んで行けば……」
「……正真正銘の馬鹿だろお前。親に教わらなかったのか?」
レインがこちらを白い目で見てくる。なに言ってるんだこの馬鹿はといつもの目線だ。やだ俺馬鹿認定されてる。これでも結構悪戯には頭使ってたんだぞう!!……でも普通に返しても面白くないな……そうだ!
「生憎、親に教わる機会なんかもうねぇよ。いねぇんだから」
「……すまない」
……あ、これやらかしたわ。黙りこくってるし。じゃあネタバラシ……しても信じるかなぁ……これ多分龍人だけだよね……よし、こうなりゃ……
「ま、顔も覚えてなんかねぇんだけどね。実際の所。だからそう気に病まないで。所でなんで馬鹿って言われたんですかねぇ、先生」
「先生って呼び方止めろ。……そうだな、あの樹海の木は折れたり抜かれたりするとそこから生えるんだよ、倍になってな。だからあそこには噂がある」
「……どんな?」
「彼処に魔族の拠点があるか、此処は生きている樹海だ、とかだな……」
「……荒唐無稽じゃねぇ?」
「俺もそう思うがな」
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その後、俺とレイン、リーネは団長……皆のじいちゃんに呼び出された。
「失礼します」
「なんでお前は人によって態度を変えるんだ……?」
「おじいちゃーん、来たよー!」
上から順に、俺、レイン、リーネの順に入り、じいちゃんに声をかける。
「よし、全員揃ったの!では本題に移る!お前らには魔物に襲われた時の部隊……と言っても遊撃手しかいないんじゃが……に入ってもらうたい!まぁ嫌だと言うなら強制はせんぞ、子供の未来を決めつけるのは一番やっちゃいかんことじゃし」
……すいません、ここにいる間ですよねそれ?ならホントに少しだけになりそうですけど……
「俺はいいぞ、やろうと思ってたし」
「いつもとやること同じでしょー?ならいいよ!」
やだこの子達即答しちゃった。えぇ……断り難いよ……あ、じゃあ……
「……やります。しかし俺は、目的地に着いたらこのキャラバンを離れることになりますが、それまでという事でいいですか?」
「おう!それでいいぞい!なら三人とも、これからは連携して魔物が来たときは頼むぞ!」
「連携……」
そこでレインの方をちらりと見ると、俺と同じようなことを考えていることが手に取るようにわかった。
「……じいさん、流石に連携は難しいぞ。猪突猛進野郎がいるんだから」
「俺は連携難しいと思う。理論で武装して戦闘するやつとは正直気が合わない」
((……こいつぅ……!))
火花を散らす俺とレイン。それを見て大きく溜息をつく団長。そして次の瞬間……
「連携は難しいか……ならお主達、後で模擬戦せい。勝った方がリーダーじゃ、そいつに従う。分かりやすいじゃろう?」
勝者に従う、かぁ……分かりやすくていいね。
「ねぇおじいちゃーん、私は?私もやっていい?」
「いいぞ、ただ最後に戦ってもらうがよいかのう?」
「いいよ!」
リーネも乗り気だ、これは面白いことになってきた……!!