新たな出会い。
「とりあえず、南だろって方向に検討をつけて進んだのはいい……けど、魔力が無さすぎた……光を操作して角を隠すのが関の山とは……」
あれから、かなりの速度で空を飛び、南だと思う方向に向かった……のだが……
「……飛ばしすぎたな……」
すぐに魔力がなくなり、飛べなくなり地面に落ちたというわけだ。幸い、よく人が通りそうな道に出たが……
「……そう簡単には行かないよなぁ……そんな都合よく通る訳でもなし……横にでもなってるかな。空見てれば時間もあっという間だろう」
道の脇に避け、草の上に寝転がる。昔はよく空を見ていた筈なのに、全く違う物に感じられた。
「……世界が違うと、空も違うのか?確かに前の常識は通じないけれど、色も雲もあるのは同じなのに……全く違うように感じる……」
空を眺めて少し経った。とても眠くなり、目蓋が閉じそうになる。人来たら起きられるようにと待っていたんだけどなぁ……
「……少しぐらい、大丈夫かな。うん、大丈夫だろう。大体足音とかするだろうし」
そこで俺は目を閉じ、眠りについた。
──────────────────────
「……い、……きろ……!」
……うるさいなぁ、まだ時間はあるよ……
「起き……って……風……くぞ!」
大丈夫だよ、風邪にはあまりかからないから……
「……あ、……しよう……」
「少し……とれ小僧……わしが……」
あぁ~漸く静かになったもっと寝れそうだぐふう!?誰だ腹に何か落としたの!!
飛び起きて周りを見渡すと、長い髭を蓄えた爺さんが目の前にいた。腹部を擦りながら、その爺さんに話しかける。
「おいあんた何すんだよ……! 起こすにしても他にあんだろうが!」
「はっ、お前が起きんからじゃ! 全くこんな所で寝ておって! 風邪ひくぞ! 揺すっても起きんのじゃから腹に岩を落として起こすしかなかったんじゃぞ!」
「じいさんそれ鍛えてなかったらヤバいからな!?……で、何でここを通ったの?」
「なんじゃ、興味があるんか。わしらはな、今は南に向かっておるんじゃ。わしらはただの旅団じゃよ」
どうやら、この人達は遺跡を探索する旅団……え、旅団なのかそれは?らしい。
「考古学者とか言っとけばいいのに……」
「わしらは根なし草じゃからの、そんな大層な物は名乗れんわ」
「そうですかい……待って南って言ったよね、来た方角じゃないの?」
「……何言ってるんじゃお主は。わしらはちょうど北から向かってたんじゃが……」
……方向間違えてたんかいぃぃ!! マジで何やってんの!?南に向かおうとして北に向かおうとしてるとかぁぁ!!
「……えーと……大丈夫か? 急に頭抱えて喚きだして……特に頭……」
「……大丈夫だ……ちょっくら自分がバカだったと確認したからさ……後さ……途中まで乗せてくんない?南に行きたいんだ」
「それはよいが……お主に何ができるんじゃ?」
「魔物相手。此処等の相手なら楽勝だ……よ……?」
おいおい……疲労かよ……!? 確かに最近休まることがなかったけどよ、体はさっき休めたろうが……!!
「……大丈夫か……?」
「おい爺さん、そいつ大分疲労が溜まってるようだぞ、休ませた方がいい。このまま行ったら疲労が原因で骨折が起きたりするぞ」
「そうなのか!? よし手伝えレイン!! 運ぶぞこやつを!」
まずい……外の声は聞こえるけど体が動かない……二人……レインと爺さんに運ばれながら意識を失った。
──────────────────────
「……んあ?どこだここ……?」
「キャラバンの中だよー!」
……早々にやかましいな、おい。キャラバン?
「へぇ……いででで!? はぁ!? 何でこんな痛いのさ!?」
体を起こそうと動いたら、体に激痛が走り、ベッドから転がり落ちた。その俺を覗き込むように、短い髪と幼さが抜けていない顔をこちらに向け近付いてくる。
「あー、動かない方がいいよ? 今君の体、ものすごいボロボロなんだ」
「ボロボロって……! 怪我は全て治ってたぞ……!」
「バカかお前は」
ドアが開き、包帯を大量に持って黒髪の、黄色の鋭い目をした男が入ってきた。確か……レインと呼ばれていたか。
「お前の怪我は確かに治ってはいたが、傷が塞がった程度だ。魔力がすぐ足りなくならなかったか? その原因はお前が空を飛ぶだけで傷が開き、ずっと治癒を続けていたんだよ。お前はただ
、龍人の治癒力に頼ってただけにすぎない」
……そういうことだったのか……まだ完全に体が治った訳じゃなかった……?
待て、こいつは今……龍人と言ったか?
「ッ! レインッ!危ないよ!」
「……しまった、口が滑って龍人ということを言ってしまったか……」
そのことを理解した途端、ベッドの傍らにあった剣を掴み、振り抜こうとするが痛みで取り落としてしまった。
「……大丈夫だ、俺達は龍人だろうと差別とかはしない。信用できないだろうがな」
「ほら早く寝て!まだ治ってないんだから……」
その二人に肩を貸してもらい、何とかベッドに戻れた。
「……ありがとう。所で名前は?レインは知ってるけど」
「私はねー、リーネ!」
「知ってるようだが、レインだ、宜しく頼む」
「あぁ、俺は白天光牙、暫くの間、よろしく!」