龍人としてのスタート。
「……はぁ、ものすごい疲れた……というかこの森、広すぎるだろ……どの辺なのか全く分からないし……」
森の中をさ迷い続けて、もう何日……一週間はたっただろう。体は生傷だらけ、精神的にも限界が近付いて来ている。一刻も早くこの森から出ないと……
「……お客さんだな……」
気配を感じ、剣を引き抜き構える。その瞬間、背後から狼が襲いかかってきた。
「ハッ……ちっとは頭使えよ!ワンパターン過ぎんだよぉ!!」
背後から襲いかかる狼の鼻に、回し蹴りを叩き込む。身体能力も大分上がったようで、骨が砕ける感触を感じた。そのまま狼は地面を転がり、力なく横たわる。
「あ?終わり?……よし、終わったな。また進もうか」
狼の形をした肉塊を一瞥した後、再度歩き始めた。
その途端別の魔物が、襲いかかってきた。
「うざってぇっての! 来るなら全部まとめて来いよマジで!」
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襲いかかってきた魔物を全滅させ、一息つく。
「ぜぇ……ぜぇ……いつになったら出れるのか……歩きじゃ時間もかかる……あ、飛べばよかった……」
この一週間、自分の翼のことをすっかり忘れていた。そうと決まれば早速翼を広げ、空へ飛び立つ……!
「……やっとだよ……木の枝とかでダメージ大きいけど……生傷増えたけど」
顔は守っていたものの、腕に引っ掻き傷のようなものがたくさんできた。かなり痛い。
というか皆に追い付くとしても、場所がよく分からないんだよな……帰巣本能ってないだろうし。あったとしても、それじゃ逆戻りだ。
「……勘で行ってみるか……?」
……やれやれ、またまた途方もない行き当たりばったりか……いつもの事だけど……
「……進み続けよう。何が相手だろうが関係ないね……俺は自分の道を進む……それは決めた。何物にも邪魔させない。敵は倒す、仲間は守る。その為には……まだまだ強くならないと……」
剣を抜いて、掲げる。……ここが、人としての白天光牙の終着点、龍人としての白天光牙の始まり。
「……なんて考えたけど、状況は全く良くなってないんだよなぁ……でも、進もうか。自分らしく行こう」
翼を大きく羽ばたかせ、空へ飛び立つ。目的地は南……だが、大分動き回り過ぎてどこが南かも分かりゃしない。
「……旅っていっても……道連れが欲しいよなやっぱ。途中で……そうだ。フードで顔とか隠せば人と見分けつかないじゃん。それなら大丈夫だろ! うん。大丈夫!」
目的地に着くのはいつになるのか。それは分からない。とりあえず、人がいる場所に行こう。
話はまず、そこからだ。