深い森の中で。
「ん…結構寝てた、かな?」
どうやら、思いの他に疲労が貯まっていたらしく、昨日の夜から今日の夜まで1日寝ていた。体の痛みも消えたし、今から移動…するにも危険過ぎるか。
「…また寝ますかね…何事もなく眠れるといいなぁ…」
…なんだろう、言い知れぬ不安感。
──────────────────────
「良かった、何事もなく朝だ…けど暗いな。松明とかいるかも。丁度いい木は…」
まずは暗い中で動くのは危険、というか何が起こるか分からないので丁度いい木を探さないと。しかし、そんな木が落ちてる筈もなく…
「木の枝しか見つからねぇよ…何なの?脱出させないつもりなの?そうだとしたら僕はここから出れないよ?あぁそうだよ暗いの怖いんだよ!火は出せるけど魔力消費があるといざって時に消えるからさぁ!?」
叫んでしまった。つい、子供っぽい事を…すると周りの草むらがガサリと、音を立てて揺れた。
「…動物かな?魔物だとしたらキツイな…前の熊とかのレベルじゃなきゃいいけど…」
そう言いながら、中段に剣を構えた瞬間、コボルトが飛び出てきた。その手には木で出来たこん棒がある。
「…へぇ、いい物持ってるじゃん?さっさと寄越せ!」
この時の僕の顔は、お見せできない物だったらしく、目の前のコボルトが恐怖の表情を浮かべているのがわかった。
──────────────────────
「…よっし、松明ゲット。コボルトがいてよかった。いや、この場合森コボルトか」
コボルトからこん棒を奪い、それに火をつけて松明代わりにして進む。…時折、蛾が突っ込んで、燃え尽きて行く。…いや、さっきから思ってたけど多くない?
気付くと、周りには虫の大群が渦巻いていた。
「…あー…ちょっと…これ鳥肌が…叫んだらさっきみたく何か来るだろうし…」
松明をぶんぶん振り回しながら、口を一文字に結びながら一直線に走り、蛾や蜂が燃え地面に落ちる。
(魔法を使ってもいいけど、炎魔法じゃここら一体燃えるだろうし…うーん…)
剣は当たらない、炎を使えば森が燃える。松明の炎もいつまでもつか分からない。正直、手詰まりだった。
「仕方ない…《龍化》!」
自身の体に魔力を回し、鱗から炎を発し、纏う事で自身の体を発火させる。熱いとは感じる事はなかった。まるで自身が炎となったような感覚がした。その状態で、虫の渦を走り抜ける。僕に群がる虫達は炎の熱で焼け落ちて行き、いつの間にか虫の渦の間を抜けていた。虫達はどこかへ飛び去っていく。
「ふぅ…咄嗟に燃やしてたけど、あれ害があるか分からなかったんだよな…まぁ警戒しないで致命的な被害を受けるよりマシか…」
そして、あることに気付いた。大変な事に。
「…あれ、ここどこだ…?マジで分からんぞ…」
遭難しました。