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断つ

 ……技術のある相手は、なんともやりにくい。これからはこっちも小手先のやり方を覚えた方がよさそうだ。

 魔法や技術だけじゃ、どうにもできないやり口もあるようだし、汚い手も使うべきだ。


「……峰打ちって、こっちでいいんだよな、背の部分で……折れそうで怖いんだけど」


 紅蓮のような、片刃の武器……というか武器全般には部分的な知識しかないから何とも言えない。しかし無茶苦茶な使い方はしている筈……

 一応そうした手入れ等はしているが……んー……ま、何とでもなるだろう。


「にしても痛そうな跡だなぁ……これ俺がやったんだけどもね。短剣は没収しとくね、売ったら金になりそうだし」


 納刀し、倒れ伏したジェイと名乗る男に近寄っていく。一応生きてはいそうだ。胸のあたりが僅かに上下している。

 ただ、見た目のダメージと言えば……肩口が少し変色している、ぐらい……か? まぁ変色ならいいだろう。いや良くないけども。


 兎にも角にも、まずは武装解除から。短剣を手に取り、掲げてみせる。

毒も塗られてそうな感じするが、それは気にしない。最悪洗い流せば同じだろう……取れるか知らないけども。

 短剣をしまい込んだ後に、外套を利用し縛り上げる。

 取り敢えず何も聞かずに逃がすわけには行かないし。リルの奴にも、話を聞かなきゃいけない。


「ほんと、人との関わりって嫌になるよ……でも関わらないと生きていけない、命って良くできてるよね」


「何言ってんのよ、そんな長く生きてもないくせに」


 振り返れば、そこには色々と聞きたい事がある人物が。

 リル・アイピーオックス。未だに敵味方はっきりしないやつ。出会いは間違いなく敵だったけど。


「ちょうど良かった。こいつ、あんたの差し金か?」


「……そうね。私の手駒よ」


「暈されると思った。でもなんでだ? 信用できなくなった?」


 そう口にした途端、針が目玉に向けて飛んできた。それを鱗を纏わせた腕で弾き、距離を詰めて胸元に鉤爪を突き立てる寸前で止める。


「もうこの際だ、はっきりしようよ敵か味方か」


「どちらでもないわよ、元から……! 協力関係、なんでしょうが!」


 足が振り上げられようとしているのを目の端で捉え、上から押さえ込む。

 金的はやめて。痛いのあれ。


「だから、お前の目的が済むまでじゃなかったのかそれ。まだ終わってないだろ」


「……黙ってよ化け物っ!」


 そう言うや否や、突然リルの膂力が増して押し退けられた。ジェイを取り落とし、体勢を崩してしまうと同時に距離を作られる。


「私も、あんたも亜人って点では同じでしょうが! 分かるわよね、シルが狙われてるんだから! あの子は人からも、亜人からも狙われるのよ!」


「それを俺に当たるなよ! というか亜人だったんなら、なんで……」


 ハンター染みたことやってるんだ、という言葉を紡ぐ前に、針が首元に伸びてきていた。

 間近で見るリルの目は、剣呑な光を帯びている。


「あの子の幸せを守るためなら、私はなんだってやる……! 他の亜人の幸せを踏みにじってでも、あの子の平穏の為に、悪魔にだって……!」


「それを、あの子が……シル・アイピーオックスが望むのか!? 人の幸せを、踏みにじってとか、自分を責めたりはしないのか!」


「たとえ、そうだとしてもよ! これだけは譲れないんだよ! いいから、さっさと捕縛されてよ……!」


 あぁくそ、説得とか無理だと思ってたけど……仕方ない。

 針を持つ手を掴み、魔力を用いて強化した上で、握る力を強めていく。


「っ──離せっ!」


「お前に、やりたいことがあるように……俺たちも……やらなきゃいけない、ことがある。だから、リル……」


「っ、いたっ……あ゛ぁぁっ!」


 掴んだ細い腕から、嫌な音が響く。骨が砕けたのだろう。狙ったとはいえ、気分は……とても良くない。


 それでも、今は──


「──お前には、ここで斃れてもらう」


 ハッタリだろうが、なんだろうが……もう引き返すつもりはない。

 倒すんだ、断ち切るんだ。この世界での、最初の因縁を。


 そうじゃなきゃ、誰も前に進めない。

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