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信用と……

 リルの拘束を解いて、俺たちは馬車に乗り込む。

 白の一族の子の寝息以外、音は何一つなく……それが非常に気まずい。どうにかしたいが……


「なぁリルさんよ。あんた何ができるんだ? 針以外にも何かあるんだろ?」

「流石にそう簡単には話さないわよ。これが終わったら敵同士、でしょ?」


 まぁ、そりゃそうだよな。俺達から情報が漏れることだって普通にあり得る。だったら話したくないことだろう。


「いや、だからって協力すんなら手は分かっていたほうがいいだろ? お互いに」

「それはそうだけど……」

「……剣や龍の力以外の手……となると……何かあったか?」

「お前は指輪とか色々あんだろ」


 お互いに知っておきたいのは確か、だが……互いに信頼がない。

 嘘の情報をたった一つ混ぜられれば、それだけで容易くこの協力関係は瓦解する。そんな状態じゃ到底受け入れられないだろう。

 だから、こちらの手は全部曝け出すしかないかもしれない。非常に困ることだが……やることは変わんないしね。


「まぁ、俺たちは基本近接しかないから。わかりやすくていいんじゃないの? そっちは?」

「……もうしょうがないか。後は氷魔法を少々ってとこよ。化け物に対しての戦闘に使うのは心許ないけど、ね」

「トドメにはなり得ないってことですか」

「そう。この子は連れて帰りたいかもなぁ、いい感じに売れそうだし」


 そう言ったリルの目は、金のことを真っ先に考えてる奴の目だった。隙を見せたら売られるかもしれない

 ……少しだけ、リルと組んだのをちょっと後悔しそうになったけど、今は組むしかない。

 少しでも、いい方に考えよう。


「で、この子については? 色々分からないんだけど?」

「呪いやこの子の一族については聞きましたけど、それ以外は分からないですからね」


 話を変える目的で、別の話を振る。この子については、結局何も知らないし。

 救うにも、まだ知らなきゃいけない情報が多すぎる……と、思うのだ。


「あぁ、その子については話してなかったわね。白の一族は高く売れるのよ、希少で、綺麗だしね」

「それだけじゃないんだろ?」

「……まぁね。金もあるけど……面倒なんでしょうね。魔族を追い詰めた一族の子なんて、どっかにやりたい。けどお金は欲しい。そのためには呪いで死んでもらっちゃ困る、って上は私に押し付けたのよ」


 なんともまぁ、酷い話だ。金の亡者共め、リスクを人に押し付けてまでして金が欲しいのか?

 なんとも浅ましいことで。汗水垂らせや少しは……


「押し付けられたときに押し返せばよかったじゃないか」

「そうも言えないわよ、私はなんたって優しいから? 子供が苦しんでたらそのまま見ぬふりなんてできないわよ」

「どの口が……」


 聞こえないように毒づいたつもりだったが、しっかり聞こえていたらしい。針が耳の上スレスレを飛んでいき、リルの手がこちらに向けられていた。


「口は災いを呼ぶわよ、龍人さん」

「……そのようで」


 こちらでも余計なことを言うのは命取りらしい。また一つこの世界についての学びが増えたな。

 ……いらんことを言うな、なんて当たり前のことだけど。

 軽い口は碌なことを齎さないし、うん……痛い目を見る前に学べた分、よし……かなぁ?


───────────────────


「あいつ、本当に信用すんのか?」

「しないよ。というか無理だろ、後のことを考えると」


 日が完全に落ちた為、ディーンと二人で、火の番をしているとそんなことをディーンが口にした。雛とリルは、白の一族の子の横で眠っている。

 こういうのは、先に休んでいてもらいたかったし……なんとなく、俺達がそれをやると、非常に絵面が悪いだろうし。

 元々敵同士、どうやって協力するにしても、心から信用すると隙が生まれてしまう。

 それは避けねばいけない。

 隙を見せれば、狩られるのは自分たちだ。いつだって、化け物としか見られていないんだ。悲しいけれど……


「それならいいんだけどよ……お前、そういうの苦手だろ」

「……まぁね。でもよくわかったな。そんなこと話したっけ?」

「いや、疑いはするけどどっかで信用してるってタイプじゃねぇかなと思ったんだけど」


 わぉ、よく見てることで……そんなに見てるの? 


「できれば疑いたくないのは本当。疲れるしね」


 わざわざ疑って、疲弊なんてしたくない。それだけ疑って、裏がなかった時……考えると、無駄に心を疲れさせるだけだし。


「それならさ、少し信じて馬鹿を見るほうが、心は楽かなって」

「どっちもどっちだと思うけどねぇ……」


 そんな話をしている時だった。ガサガサと、茂みが揺れる。

 ……獣の類だろうか? しかし、獣なら火に寄ってこないと思うし……何か、気配を感じる。


「ディーン。多分これ……」

「お客さんだな。他のお客で大変だってのに、全く……」


 二人で火の側から立ち上がり、武器を構える。

 何が来ようと、俺達で食い止める。これで少しでも信用してくれるといいんだが……

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