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稽古。

「君もまぁ、唐突だよね……」

「唐突じゃなきゃ、やってくれないでしょ?」

「まぁねぇ……」


 今、二人で木刀を片手に広い場所を探して歩いている。

 突然の申し出には驚いたが、まぁ……何か考えていることがあるのなら、それを軽くするために身体を動かすのも悪くないだろうし。

 それに、突然の強化で認識がズレているだろうから、それも確かめておきたい。


「この辺ならいいだろう。じゃあ……」

「おう。始めようぜ……」


 少し言葉を交わした後、リアムは全力で地面を蹴り、突撃する。それを受けようと木刀を構えた途端に、視界からブレて消え失せる。


「えっ、何を使っ……魔力糸か!」

「正解だよっ!」


 その声が聞こえると同時に、木刀が振り下ろされる。その木刀を受け止め、木刀がかち合う音が響く。

 全く、やっぱり糸を使う戦いは意外な動きがあってやりにくい。そう考えつつ、力任せに弾き飛ばすと、リアムはバランスを崩して地面を転がった。


「ってて……結構力入れて突き飛ばしたな……!」

「いや、実を言うとあんまり」


 実際、魔力強化を使用せずに2割程度の力で押し込んだのにも関わらず、思っていた以上に吹き飛んでしまった。

 人間相手には、この辺りが丁度いいのかもしれないと思いながら、先程のお返しと言わんばかりに、地面を蹴って突貫する。


「っ、はやっ……!」

「やっぱり種族差って、結構でかいんだな……」


 自分のことながら、最早人間とはかけ離れた身体能力だと、今更思った。目算にして6メートル程度なら、瞬きの間にも詰められる。

 これなら化け物と言われても仕方ないと思いつつも、精一杯の加減をしながら木刀を鋭く振るい続ける。

 リアムも回避と受けを続けているが、その顔には汗が流れ、表情にも余裕は見られない。誰が見ても、必死の表情と答えるだろう。


「どうした、まだいけるか?」

「余裕……だ、よぉっ!」


 そう言いながら、攻撃を避けると木刀を振り抜いた隙をつき、重い突きを顔を狙って繰り出してくる。

 これには少しぎょっとしたものの、何とか躱すと、お返しに回し蹴りを繰り出して大きく吹き飛ばした。


「おっ、まえなぁ……突きは顔面に繰り出したらやべぇって……」

「全力で回し蹴り繰り出すやつに言われたくないね……!」


 まぁ、それはそうだ。結構派手に地面を転がっているのに、リアムはまだやめるつもりはないらしい。

 それに、今の一撃。かなり速くて、重かった。突きが頬を掠めた時、僅かに出血してしまう程に強烈で、人間相手には充分通用する。

 なのに、どこか焦っているような、そんな表情だった。


「何を焦ってんだよ。強くなるにしても、そんなすぐに力が手に入るわけじゃないだろ」

「すぐじゃないと、また取りこぼすだろっ!」


 そう言いながら、木刀が振り下ろされる。それを受けようとした時、腕に魔力糸が巻き付いた。


「ちょっ……手合わせじゃねぇのかよっ!」

「手合わせだよ、なんでもありのさ!」


 魔力糸に引っ張られ、体勢を崩す。何とか体勢を整えようとしたが、脳天に衝撃が走る。

 普通の人だったら、失神していただろう。そう思わせるほどの、全力の一撃。


「……ってぇなぁ!!」

「っ、だよね……!」


 でも、もうその程度で失神するような体ではないのだ。

 無茶苦茶に木刀を振り回し、リアムとの距離を離す。その木刀を躱し、距離を取ったリアムに追従するように地を駆け、また乱雑に木刀を振り回す。


「ぐっ……!?」

「こっからギア上げてくぞ、気合で耐えろ」


 なんでもありというなら仕方ない。大人気ないだろうが、少し痛い目にあってもらう。

 乱雑な一撃が続くも、防がれる度に、一撃を鋭く、重くしていく。少しでも体勢を崩せば、その隙を狙って確実に刈り取る。

 

「どうしたよ、こんなもんじゃねぇだろ!」

「うるさいなぁっ!」


 苛立ち混じりに振るわれる一撃。確かに重いが、化け物たちと比べてしまうとやはり見劣りする。

 こんなもんじゃ守れないと、本人も分かっているのだろう。


 それなら、化け物達と同類の俺が相手してやるから。

 必死になって、何か掴んでくれよ。


「分かってるよ、弱いことぐらい……」

「お前が弱いとかそういうのはどうだっていい。どれだけ食いついてこれるか、結局はそれだけだろ」


 以前から胆力は問題ない。でも、それだけじゃないだろう? 必要なものが何か、自分自身で気付くことが必要なんだから。

 

 吠えるだけなら、獣にだってできるんだから。


「だから、必死に食らいつくしかない……!」

「っ、あぁぁっ!?」


 飛びかかってきた所に、全力で木刀を振るい、大きく吹き飛ばす。勢いよく、簡単に近くにあった木材を突き破るの見ると、人間との差に少し笑ってしまいそうになった。

 

「あぁぁっ! いったぁ……」

「力には差がある。でも、技は人のほうが優れてる、だろ?」


 唸りつつも立ち上がるリアム。必死になって食らいつくことができるなら、後は……追いつくだけ。

 厳しく行くけど、どうか堪えてくれ。俺もできるだけ、加減はするから。

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