ちょっと早い帰還、開始。
「とりあえず…外へ出て下さい。そのまま里まで戻ります!」
龍人の皆さんを、牢の外へ出した後、里に向かい飛び立とう…としたんだけど…
「皆、ダメージが大きいみてぇだな…地道に歩くしかねぇな」
「正直、私と光牙さんもギリギリですし…」
「いや、僕はまだ余裕ある…うぐっ…」
まずいな、少しフラフラする…馬車とかないかなぁ…正直ギリギリだったわ…空元気だった…
「あ、無理はしない方がいいですよ!?」
雛さんの肩に支えられ、何とか倒れずに済んだけど…
「これじゃ、里に着くのにどれぐらい掛かるか…」
「…まぁ地道に歩くしかないわね…ふぁぁ…回復魔法も今はまともに使えないし…」
だよなぁ…川流れをすると凄い短縮出来るんだけど…まぁ、地道に向かおうか…
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「雑魚狩りってもの凄いイライラしてくるんだなぁってふと思った、よ!」
後ろから襲いかかって来た狼の顎を蹴り砕きながら、愚痴をこぼす。守る為の戦いって、本当に色々と面倒で…おおっと、危ない危ない。
「ちっとは落ち着きを覚えて、くんないかなぁ!?」
前後から二頭同時に噛みついて来るが、後ろから多い掛かる狼の腹に剣を深く突き刺し、その死骸で狼の牙を防いだ後に蹴りで吹き飛ばす。
「おー、終わったか?」
「終わってるように見えるなら、一度回復魔法、それもかなり上等な物をかけてもらった方がいいよ」
実を言うと、この狼の群れ、先程から全く数が減っている気がしない。無限湧きって言っても僕信じられてしまう位、かなりの数が絶え間なく襲って来たため、雛さんとレーテさんに任せ、応戦しているわけだけど…
「いくらなんでも…なぁ…」
「あぁ…」
「「流石に多すぎるだろ」」
何処を見ても、木と狼しか目に入らない。どこかに群れを統率しているリーダー的な存在がいる筈…でもいったいどこに…
「おい光牙!!ぼさっとしてるとやべぇぞ!数に押されてやられる!」
狼の群れを捌きながら、叫ぶ声が聞こえた。そろそろまずい…?
「わかってるよロビン!けどボスが分からない…あ、そうだ!」
「何する気だ!?」
「脳筋プレイ!」
自分の掌にある炎を、地面に向かい放つ。この炎は、敵以外を焼くことのない炎、名付けて…
「《選別の炎》」
炎が狼達の毛皮ごと、肉を焼いていく。無限かと思わった数も、どんどん減っていき、最後には少し大きな4つ目狼一体しか残っていない…けれど、その目からは闘志は消えていなかった。
「おい、あっぶねぇな!もう少しで俺も焼かれるかと思ったわ!」
「それは失敬。でも敵は減らしたでしょう?」
そんな事を言ってると、大きく口を広げ、飛びかかって来るが、二人でそれに合わせ、口の中に蹴りを入れる。
「やあ…散々手間かけさせてくれたねぇ…?」
「逃がさねぇぞ?意外と気が張っててな、サンドバッグの代わりにはなってくれよ?」
狼の瞳には、龍のオーラを纏った人間と、狼の頭を模した帽子のような物を被った人が写っていたそうな…しかし、これは見た奴にしか分からないので、確認のしようがない。
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よーし、シバいたシバいた…毛皮もらっとこ。
「お前、本当に自由だよな…」
「やりたいように生きてるだけだって。この狼はさ、僕たちがその命を奪ってしまったでしょう?だからさ、加工とか何でもいいから、最後までつかってやらなきゃね」
買った物とかでもそうだ。壊れるまで使うって、結構大事だと思う。それに命を奪った以上、その毛皮等はそのうちに失われてしまうだろう。だったら自分達で使う。
「って考え方、なんだけどね」
「へぇ…そういやあの狼、かなり希少だぞ?あれでコートでも作るか?」
「赤コート作ろうっと」
…そういやこの時期、コートだと暑いよな…そうだ、色々エンチャントして、どんな所でも最適な温度になるような装備にしよう!
「色々と魔改造されるとみた、その毛皮」
「だって、普通に作った物なんてすぐにおじゃんでしょう?」
「違いねぇや」
そんな事を話しながら、僕達は龍人の里に向かっていた。