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邂逅。

 「よーく狙って……おっと危ねえ!!」

 

 狙いをつけていたが、矢が飛んで来た為、大きな荷物に隠れて避ける。どうやら奴らは、形が龍人ならば、死んでいても構わないようだ。


 「おいおいおい……容赦ねぇな! 生死問わずかよぉ!!」


 「魔導銃じゃないだけ、マシですよっ!」


 雛が隠れていた荷物から飛び出し、矢を放つ。それに続いて、転がりながら炎の弾丸を放つ。


 馬車から狙いをつけている男に矢が突き刺さる。男が矢を抜こうとしているが、刺さった矢に少し遅れて炎の弾丸が着弾し、その馬車ごと燃え上がった。


 「形跡も何も残さず、綺麗に燃えちまえ馬鹿野郎ッ!!」


 崩れていく馬車を見ながら、苛つきながら大きく叫ぶ。あのどっしりとした馬を捕まえられなかったのは勿体ないが、まだ4頭いる。


 捕まえるのは難しいだろうが、捕まえれば更に移動が楽になる。しかし……


 「……暫く焼いた肉は食えないな……絶対思い出すよこれ」


 一番嫌な死に方だ、本当に! 


 「そんなこと言ってる場合じゃないみたいですよ……!」


 「っと、そうだった……大分近付いて来たな……」


 気付けば敵の馬車のうち一台が、もう少し前進されれば接触されるような距離に詰めてきている。


 「ディーン! このままだと追いつかれる!」


 「馬がバテてきてんだ、これ以上は速度出せねぇ!」


 「……えぇい、こうなりゃ一か八かだっ!」

 

 懐から火花を引き抜くと、敵の馬車に向かって飛び出した。


 「ちょっ……! 何やってんですか!?」


 「アイツマジか!? こっちから向かっていくかよ普通!」


 後ろから声が聞こえてくるが、今はスルーだ。それよりも……


 (思ったより、距離があった……!)


 御者がいる場所まで、少し届かない。馬はこちらの荷台より前に出ている為、馬に踏まれることはないが……このままだと普通に車輪に轢かれる。


 「っ、危ない!」


 「助かったよひnうぉぉっ!?」


 雛が風を操り、地面に叩きつけられる寸前だった体がふわりと……いや、上に引っ張られたように持ち上がる。


 とても苦しかったが、上昇しきった後は楽だった。


 それに、昇った後はただ落ちるだけ。それなら……


 「よーく狙いをつけて……! 行くぞオラァ!!」


 敵の馬車の上に、重力に従ったまま落ちていく。この時、馬車に激突する寸前で翼を広げることを思い出した。


 「よっし、乗ったァァァァ!?」


 馬車の上についた時のことだった。意外と勢いがついていたのか、はたまた馬車が脆かったのか。もしくはその両方か……分からないが、足を乗せた所から底が抜けたように感じた。


 実際、足が突き破っている。つまりだ。


 「また落ちまーすって!? ぐへっ!?」


 敵の馬車の荷台の中に落ち、その衝撃で上から落ちた荷物が降り注ぐ。


 複数人が矢でこちらの馬車を狙っていたが、落ちてきた俺に驚き、すぐには反応ができないのか、硬直してこちらを見ている。


 「くそっ、化け物が自分から来やがった!」


 「……まぁ、その……なんだ……おじゃましてます」


 そう言いながら、近場の敵の顎を蹴り上げ、別の敵に肘を叩き込む。


 蹴り上げた敵が落ち、持っていた武器を落とす。肘を叩き込んだ敵も、肘を叩き込まれた部位を押さえながらそのまま崩れ落ちた。


 敵を一撃で伸せるようになってきたなと考えて眺めていると、違和感を感じた。外で見た馬車の荷台にしては大きいようなと思える程の広さだ。異様に大きい。


 「やっぱファンタジー世界だとこういうのはお決まりだよな……予想してたより広いわ。空間広げるってありがちだけど、どうやってんだ本当に」


 この広さなら木刀も紅蓮も存分に振るえるだろう。だが問題は……


 「ここが敵陣ってこと。早めに戻った方がいいな……」


 そう呟いてから、ゆっくりと歩きだす。敵を警戒してはいるが、恐らく数は少ないだろう。


_________________________


 「……この馬車、運搬も兼ねてるのか。檻がある……空が2つで、足枷が一つ……俺達用かこれ。捕まらないようにしないと……しっかし、本当にひでぇな。龍人なら何でもしていいってわけじゃないだろうが。心は痛まないのかねぇ_」


 そう言ってから、檻を何度も蹴り、使い物にならなくした。原型を留めない程に歪んだ為、直すのは難しいだろう。


 「よし、これならもう使えないだろう……ん?」


 視線を感じ、振り向くとそこには銃をこちらに突きつけている男がいた。黒ずくめの格好で、肌の露出が異様に少なく、表情が読めない。


 男の少し後ろには、病的なまでに白い肌をした女の子が荷物の陰に隠れている。首や足首には長い間何かが着けられていたような跡がある。

 

 そして、敵か味方か分からないその二人を見て硬直していると、頭に衝撃が走り、そのまま仰向けに地面に倒れた。


 少し見えた限りでは、風の弾丸のようだった。


 「がぁっ……!! いきなり何すんだよ!」


 「想定してたより頭蓋が硬いな……人間ではないようだ」


 そう言いながら魔導銃をしまい、別の魔導銃を取り出してこちらに向ける。


 「その角……素人目で見た所だが、龍人か? こんなとこで一体何をしてる」


 「何してるってのはこっちの台詞でもあるんだよ。何だお前、一体どこから……うぐっ!!」


 会話の途中で、右足を撃ち抜かれた。当たった足が少ししてから凍り始め、刺すような痛みが襲い始める。


 「っ、テメェ……!!」


 「お前は敵ではないかもしれないが……悪いな、一応行動を封じさせてもらうぞ」


 「敵じゃないかもしれないなら、すぐに撃つなぁ!!」


 目の前を尻尾で薙ぎ払うが、すぐに後ろに飛んで避けられたが、距離を取ったのを逆手に取り荷物の陰に隠れる。


 そこで手に炎を灯し、凍った足を溶かしていく。


 「いってぇ……それ魔導銃だよな……」


 「そうだな、気持ちの良いものではないが」


 足音が近付いてくるのを聞きながら氷を完全に溶かすと、足に異常がないか確認すると荷物の影から飛び出す。


 紅蓮を引き抜きながら肉薄し、振り下ろすが魔導銃によって防がれた。黒ずくめの男が手を太もも辺りに持っていき、もう一丁、しまった物とは別の魔導銃を取り出す。


 「くっ、させるか!」


 その銃を尾で叩き落とし、撃たれる前に遠くへ転がす。


 「ちっ……やはり龍人はやりにくい……!!」


 こちらの攻撃はバク転やら銃身で防がれ、どれも掠りすらしていない。しかし、まだ魔法がある。切り札はまだどちらも切っていない。


 「セヤッ!!」


 「っ、そろそろ危ないか……!?」


 突きを繰り出し、避けられた時に無理矢理巻き上げるように紅蓮を振るう。惜しくも頬を掠める程度に終わったが、傷は先に付けることが出来た。


 すぐさま追撃をしようと近付いて横薙ぎに振るうが、目の前で身体が分かれ、無数の蝙蝠となりこちらに向かってくる。


 咄嗟に目を瞑り、目がやられないようにしていると、背後から衝撃が襲う。その当たった箇所が異様に熱い。

 

 「ぶあっ!? くっそ、お前吸血鬼か……! 通りでそんな肌を晒さないような格好を……」


 「……そうだな。俺は吸血鬼だ。まぁ、落ちこぼれだが。しかしそれが分かった所で何になる。お前じゃ俺は殺せない……」


 ……殺せない? 何で殺そうと思ってることになってんの?


 「……待てよ、何で殺すことにな……あぁ……」


 思いっきり武器、刀でしたね……しかも刃潰されてないやつ。銃で撃たれて、咄嗟に真剣を抜いてしまった……


 「……と、取り敢えず、もう一度話し合わないか……? お互い、間違えてるんだって……」


 そう言って、停戦を申し出たが、返答は弾丸だった。右手で咄嗟に防ぐものの、当たった箇所から痺れ始めた。


 「っ、さっきからなんだその武器……!」


 「教える訳ないだろうが、敵なんだぞ」


 突然、吸血鬼の男が走り出す。身体が痺れ、思うように動けないのをいいことに、腹部に回し蹴りを叩き込まれた。


 「っ、がはっ!!」


 足が地面を離れ、そのまま吹き飛ぶ。背中から荷物の山に突っ込み、雪崩のように落ちてきた荷物に押しつぶされかけた。


 「……っ、ゲホッ……埃っぽいな……」


 荷物の山から抜け出し、紅蓮を上段に構える。


 敵じゃないかもしれないが、今はそんなことを言ってられない。誤解されたまま殺させるのは本当に困る。


 だから、今は刀を振るおう。誤解を解く為にも。

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