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逃走開始。

 極細の針を持った人物に向かい走り出し、勢いのまま拳を振るうが、ヒラリと避けられてしまう。


 「あっはは、惜しいわねぇ」


 「くっ、そう簡単には行かないか、っ……!」

 

 足に鋭い痛みが走り、顔を顰めながら足を見ると、いつの間にか針が突き刺さっていた。血が滲み、地面にポタリと落ちる。


 「ふふっ、安心しなさいな、毒の類は塗っていないから」


 「全く信用が出来ないね……!」


 移動に邪魔な足の針を引き抜き、そのまま投擲する。その針を避けた所に、隠蔽を解除し、尻尾で横薙の一撃を食らわせる。


 針使いは、意識の範囲外から襲った尻尾が直撃し、勢いのまま壁に衝突した。そして、そのまま雛とディーンが戦っている場所へ向かう。


 「ううっ……! うまく使えるようになったじゃないの……って、あら……? ちょっ、ローブにっ……ちょっとぉ!」


 横薙に尻尾を振るった際に、先程刺された針と、カーサラルドのトラップで回収した針を使い、壁に縫い付けた。


 片方は針を曲げ、刺さったら中々抜けないような形に変えてある。


 「あんたとやり合いたかねぇよ、面倒くさそうだからさぁ!」


 そう言い、ディーンの背後に立ち、剣を突き立てようととしていた者を蹴り飛ばす。


 「っと、助かった……! そらっ!」


 ディーンも、襲ってくる人物の顔に叩き込み、流れるように近くにいる敵に、短剣の柄を腹部に叩き込む。


 一撃が重いのか、敵がその場に崩れ落ちている。しかし、まだ沢山の敵がいる。逃げるのは相当難しそうだ。


 「っ、雛! そっちは大丈夫!?」


 「問題ありません! 薙刀が無くても、この程度なら……!」


 飛びかかってくるローブ姿達を叩き落としながら、雛に声をかける。しかし何の問題もないようだ、近付かれる前に空気弾を指から放ち、近付かせずに相手している。


 倒れる仲間を盾にして近付く輩もいるが、そういった奴は腕を掴み、捻り上げてから地面に叩きつけている。


 「ならいいんだ! 怪我しないでくれよ」


 「お互いに、ですね!」


 そう互いに声をかけ合い、向かってくる敵に対して殴る、蹴るでダメージを与えていく。


 短刀は専ら、敵の剣を防ぐ目的で振るっている。時折攻撃にも使うが、腕に掠める程度に留め、動きを鈍らせていく。


 「どう見ても戦闘慣れしてないし、動きがぎこちないから不思議だねぇ!!」


 「乱闘というより、作業だなこりゃ……」


 最後のローブ姿の敵を、壁に叩きつけて動きを止める。さっき縫い止めておいたの方を向くと、影も形も無かった。指令塔だった……声の高さからして男もいない。


 「あのやたら針投げてくるのは……多分女か。結構強くぶつけたと思うんだけどなぁ……?」


 「恐らく頑丈なんでしょうね……さて、目的を聞くとしましょうか。大体分かってますけど」


 俺が壁に叩きつけたローブの敵に、雛が近寄りフードを外す。


 「……人形? 何この全部真っ黒なものは、訓練用かな……」


 雛が捲ったフードの下は、ただ真っ黒だった。


 人の形を真似て作られ、人にある特徴が見られる、何も装飾のない人形。目も口も見当たらなかった。


 「しっかし、なんで人形が……ぐえっ!」


 疑問に思い、自身も近付いて行くと強い力で突然後ろに引っ張られた。


 何事だと思った途端、爆音が響き、続けて衝撃で体が浮かぶ。咄嗟に目を閉じ、壁に叩きつけられてもいいように身構えた。


 「うぐっ……!」


 痛みに身構えてはいたものの、やはり衝撃が強く、耐えきれずに呻き声が口から漏れた。恐る恐る周囲を確認すると、隣に雛と、少し離れた所にディーンが倒れていた。


 「ってて……アイツら、容赦ねぇなぁ……パペット・ボムかよ……」


 「……名前からして、爆弾と兼用した人形型兵器、みたいなものか……」


 ディーンが口にした名称から、あれがどういったものか察し、身震いする。不用心に触れていれば、どうなっていたかは分からない。爆発の中心となった場所が、真っ黒に焦げているのを見て、かなりの熱量を持っていたことを察する。


 最悪、触れた箇所が吹き飛んでいたか……即死だった、ということもありえる。


 「取り敢えず、こっから離れた方がいいな……このままじゃ、この街から離れられなくなるぞ」


 「街中で突然爆発してますからね……亜人の仕業、みたいになるのも嫌ですし……」


 そう言いながら、体に大きな怪我を負っていないか確認し、埃を落としてから雛とディーンが走り出した。


 ……こういうこと、全部亜人や魔物のせいになるのか……


 「……ひっでぇ世界だよ、全く」


 そのうち、人間は勝手に滅んでしまいそうだなと感じながら二人の後を追いかけた。


─────────────────────────


 「しかし、何だったんだろうなアイツら。突然あんなもん使って襲ってくるなんてよ」


 街が封鎖されるギリギリで、ディーンが言葉巧みに(少し賄賂も渡したようだったが)門番を説得し、街を出て暫くのことだった。ディーンがアイツらは何だったのかと、口を開いた。


 「大方の狙いは分かってるんだよ、亜人なんだろうけど……幾ら何でも杜撰過ぎる」


 「……まぁ、色々予想は立てられるでしょ。真相には辿り着けないよどうしたって。予想は予想だ」


 「でも考えておいた方がいいのでは? 次はいつ襲ってくるか……」


 「案外火事場泥棒みたいな目的だったりしてな……」


 結局、奴らの目的は何だったのかと、自分たちの予想を話して暫くすると、耳に別の馬車が走る音が聞こえてきた。


 音からして、全力で追ってきている。


 「……あー……なるほどね……あそこじゃ人を巻き込むかもしれなかったから……」


 「本当タチ悪いなぁ……!! ディーン、速度は落とさないで!」


 「分かってる、全速力で行くぞ!」


 そう会話を切り上げると、雛と共に後部からどこにいるか探す。雛は弓を構え、近付いてきたら撃つ構えをしている。


 後部から覗くと、3台の馬車が追ってきている。しかも、そのどれもが俺達の乗る馬車より大きく、馬も力強く走っている。


 どうやら目的は、最初から俺達だったらしい。あの針使いから一人は龍人だと聞いたのだろう。


 「さて……どうするかなぁ……」


 剣と槍は届かない。つまり魔法で相手するしかない。しかし、うまく当てられるのかが不安だが……やるしかないだろう。


 手を銃の形に構え、狙いをつける。誰がお前達に捕まってなるものか!

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