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闘争。

 同時に振り下ろした武器は、互いに真っ向からぶつかり合う。互いに弾かれるも、距離を取るより先にもう一度振るい、武器をぶつけ合う。


 同じことを3度程やり、互いに力で押し切るしかないと考えたのか、鍔迫り合いの形になると全力で押し切ろうと力を込めた。


 人間とは思えない程の膂力で押される為に、簡単には押し切れない上、押し負けそうな気さえする。


 「どうした? 龍人の力なら人の力なんて簡単に押し切れる筈だ……!」


 「個体差ってもんがあるんだよっ!!」


 このまま続けていると、確実に押し込まれてしまう。そう考え、腹部を蹴り距離を取った。しかしヴァンはすぐに体勢を整え、真っ直ぐに襲いかかってきた。


 「どうしたどうした! バテちまってんのかぁ!?」


 「ぐうっ……!!」


 何度も武器が振り下ろされる。型なんてない、ただ相手を倒すためだけに武器を振り回す。それだけの行為が、攻撃力が高いというだけでとても厄介なものになっている。


 縦横無尽にサーベルで攻められ、防ぐことで手一杯になっていると、足場が悪く、足を滑らせてしまう。


 「うわっ、まずい……!!」


 「ハッハァ! 隙だらけだぜぇ!!」


 倒れ込んだ所に、サーベルが頭に向けて振り下ろされる。地面を転がって避け、立ち上がった途端、頭に鈍い衝撃が走った。


 「いってぇな……なんだよ……!!」


 痛む箇所を押さえながら足元を見ると、血の付いた石が転がっていた。


 「何でもありか……まぁ、そりゃそうか……ってそういやヴァンは!」


 石を使う……いや、何でもやるスタイルの奴とやると録なことがないと思いながら、姿と気配を消したヴァンを探した。


 気配もない、姿も見えない相手を相手にどうしろと考えていると、ヴァンが突然姿を現し、武器を突き出してきた。


 「オラァァッ!!」


 「がぁっ!!」


 あまりに突然で防御も録に出来ず、諸に突きを受けてしまった。幸いにも、あの生暖かい感覚がないことから出血はしていない。やはりあの武器は鈍器のように扱うのが主戦法なのだろう。


 「にゃろっ……! やられっぱなしだと思うなよ!!」

 

 体が宙を舞う中、魔力を手のひらに集め、火球を作り上げる。地面に叩きつけられる直前に投げ付け、炸裂させた。


 爆風でまた更に吹き飛ぶが、鉤爪を地面に突き刺し勢いを削ぐ。


 「少しは堪えたろ……」


 煙から出てくる瞬間を見逃さないよう、注意深く見続けながら、近くに刺さる槍に手を伸ばす。


 槍を掴むのと同時に、煙の中からヴァンが一直線に飛び出して来る。槍を引き抜くのには間に合わないと判断し、咄嗟に脚を振り上げる。


 諸に当たりこそしなかったが、腕を掠めた。龍人の脚力では掠っただけでもかなりのダメージの為、顔を顰めながら地面を転がっていく。


 追撃を入れようと槍を引き抜き、走りだそうとした時だった。突然嫌な予感がし、その場で踏みとどまった。


 あのまま突っ込んでいたら、カウンターを受けると感じた。


 「……流石に引っかかるわけねぇか……」


 のそりと立ち上がり、ゆっくりとこちらに向かって来る。頭から血を流している上、目からは笑いが消えており、油断無く見据えている。

 

 「来いよ化け物、殺し合おうぜ」


 「殺しはしないって何度も言ってるだろ」


 「はっ、どこに行こうが、俺達はお前達を必ず追い詰めるぞ? なら早めに殺しておくのが正解なんじゃないか……?」


 「だからって殺したら、それこそお前達と敵対しなくちゃならないだろ。ロアを止める前に、人間も敵に回したらもうおしまいだ」


 お互い口を動かしながらも、ゆっくりと歩き出す。互いの間合いに入る瞬間を逃さないように、目を鋭くしてその瞬間を待っている。


 そして、遂にその瞬間が来た。ヴァンの方が早く動き、サーベルが振り上げられる。


 「ここだっ……!!」


 サーベルを持つ手に目掛けて、槍を勢い良く突き出す。槍の先端が掠め、堪らずサーベルを手放したヴァンに向けて木刀を容赦なく振り下ろす。


 「っ、嘗めてんじゃねぇっ!!」


 槍が掠めて血を流している箇所を抑えながら、ヴァンが振り下ろした木刀を持つ手に向け蹴りを放つ。


 物を叩いた衝撃が手から伝わると同時に、木刀から手から跳ね飛ばされ、後方に音を立てて落ちる。


 落ちた木刀の場所を確認しようと背後に視線を向けた途端、腹部に衝撃が走り、数歩後退りながら槍を落とすと、その場に膝をついて蹲った。


 「っ……! げほっ、ごほっ! ゔぉえ……!」


 下を向いて、込み上げる不快感に堪えきれず込み上げた何かを吐き出す。体の傷が完治していないからか、吐き出した物は真っ赤に染まっていた。


 武器を気にして、敵から目を反らした。それがどれだけ自殺行為なのか、その身で痛感した。


 「あ゛ぁ……? おいおい、もうへばってんのか……」


 足音が近付いてくる。息を整えて立ち上がり、拳を構える。


 出来れば武器を拾いたかったが、木刀は距離があり、取りに向かえない。そして槍は付け焼き刃ときた。これでは通じないだろう。


 (後は……火花……短刀がある……けど、出来れば使わない方がいい……サーベルを持ち出したら、使おう)


 ゆっくり向かって来るヴァンの方向を向くと、地面を蹴って駆け出した。拳を握り、その拳を振るうも、簡単に受け止められてしまう。


 「んだよ、人とそんな変わらねぇじゃねぇかよ……」


 失望したと、声色で告げてくる。そう言い終えるか否や、膝が腹部に叩き込まれた。


 鱗で咄嗟に防御したものの、衝撃までは消しきれずに息が詰まる。膝が傷に触れている為に激痛が走り、動きも鈍る。


 「がふっ……!」


 「まだ行くぞオラァ!!」


 何度も荒々しく拳が振るわれ、殴られた箇所に衝撃が走る。何度か反撃を試みて、こちらも拳を振るったが、軽く避けられてはまた重い一撃を受ける。


 鱗で防御してはいるものの、何度も拳を受けている為に罅割れて行く。どんどん後ろに下がっていき、背に壁の存在を感じた。


 もう一度頬を殴られ、壁にぶつかり、前のめりに倒れそうになるが、頭を掴まれてぶつかった壁に叩きつけられる。


 「……終わりか。つまんねぇ……」


 その言葉と同時に、頭部を離される。体に力が入らず、そのままうつ伏せに倒れる。


 「う゛っ……体中いてぇ……」


 顔を何とか動かし、ヴァンを探す。霞む視界で、何とか探していると、落ちたサーベルを拾いに向かっている所だった。


 「……背を、向けてるな……」


 はっきり言って、隙だらけだ。しかし、体が言うことを効かない。指の一本も動かせない。


 「……何も成長しちゃいないな、俺……一人で突っ走って……!!」


 しかし、ここで腐っていても意味がない。動けなければ殺られるだけだ。


 そこらじゅう痛む体に鞭打ち、生まれたての子鹿のように足を震わせながらも立ち上がる。ゆっくりとヴァンに向かい歩き出し、次第に駆け出す。


 「……っ、やっぱりまだやれるよなぁ!!」


 「うるっせぇ!!」


 喜びの色を顔中に見せながらこちらを向くヴァン。完全に振り向く前に飛びつき、地面に引き倒し、顔に何度も拳を叩きつける。


 何度か力任せに拳を叩きつけていると、首の後ろを掴まれ、放り投げられる。すぐに体勢を整え、もう一度駆け出す。


 「いってぇなぁ……人様の顔面タコ殴りにするやつg……」


 「てめぇが言うかクソ野郎っ!!」


 無駄口を叩いているその口に向けて、勢い良く拳を振り抜く。


 ヴァンの体が吹き飛び、地面を転がる最中に口の中から、折れたのか歯が転がり落ちる。


 「……鉄の匂いしかしない……」


 鼻の下を指で拭い、指を見る。指が赤く染まっており、多量の血を流していると分かった。


 「がはっ……てんめぇ……!!」


 「やられるのは嫌なんだな……ならもう痛み分けにしようよ、お互い痛いのは嫌でしょ?」  


 「あ゛ぁぁぁぁ!!」


 話を聞いていないのか、叫びながらこちらに向かって駆け出してきた。


 「話聞けよ……」


 そう言いながら、振るわれた拳を避ける。相も変わらず荒々しいが、流石に目が慣れてきた。


 振るわれた拳を避け、次の攻撃が来る前にタイミング良く顎を蹴り上げる。ヴァンが大きく後退りながら衝撃を受けた箇所を押さえて、こちらを睨んでいる。


 「ぐううっ……お前ぇぇ……!」


 「痛いのはお互い様だ、さっさと帰ってくれ」


 振り上げた足を下げながら、言い捨てる。本当に、そろそろ本当に帰って欲しい。体はもう既に限界なんだ。

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