星屑の魔法。
「…う…あ…?いったぁ…よく生きてたなぁ…かなりの爆発起こしたけど…というよりこの部屋何で出来てるんだ、二回の大爆発でも壊れないとは…」
どうやら、少しの間気を失っていたらしい。体中が痛い…あいつどんな蹴りを…そう言えばあいつは…?
「…ぐっ…いってぇな…お前本当に頭イカれてんじゃねぇの?」
「人様の里にこんなもん落とそうとしてる時点でイカれてんのはそっちだろ。なんですか、頭のネジ外れてんですか?」
「ひでぇな、互いにイカれてんのか…まぁそうだな…あぁ、そうだ。お前と一緒にいたやつ。あいつの事だけど、早くいかないと死ぬぜ?」
「…なんだって?」
雛さんが、死ぬ?そんなバカな。あの人は戦闘では…そうか、魔力が!
「気付いたみてぇだな、あいつの戦いかたは魔法ぶっぱなすのが基本だろ?あれだけ派手に入り口で撃たれりゃよく分かるわ。それにうちのお嬢は魔法も格闘もそつなくこなして来たしな。戦い慣れてないようなやつに遅れをとるような事はねぇよ」
どうやら、相手は天才のような物だったらしい。なんで盗賊やってんだ?と思いながら、地面を蹴り跳躍、飛び蹴りをかますが、片手で止められ、そのまま投げられる。
「おいおい、全然力が入ってねぇぞ?やっぱ限界なんだよおまぐふっ!?」
限界?それがどうした、うるさいよ、人様の限界勝手に決めんな。
頭突きで怯んだ所に、拳で何度も打ち据える。今は何も考えず、ただ目の前の敵を殴る…!
一発、二発、三発と拳がロビンの体を打ち据える。口が切れたのか、口から血が流れ、そのままカウンターを仕掛けて来た。
「…こんの、調子に乗んな!!」
ロビンの拳が顔面に突き刺さり、視界が揺れ、明滅する。もう一発入れられそうになったが、咄嗟に顎を蹴りあげ、ロビンの体を蹴り、距離を取れた。地面に付くと同時に、口から血を地面にペッと吐き出す。それが合図となり、互いに無茶苦茶な軌道で相手を殴り抜く。
血が口から流れ、垂れていく。互いの手も相手の血で赤く濡れてゆく。
だが、それでも止まらない。互いに相手より先に、一秒でも先に倒れて堪るかと言うように、その拳は速度を増していく。
「そこを退けぇぇぇ!!」
「てめぇこそ、諦めろぉぉぉ!!」
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もう、何分、いや何時間か殴りあったような感覚がする。
「これで…終わりだぁぁ!」
最初の時より威力も速度も下がっているが、相手の拳を最早回避など出来ない。それほどのダメージを負っている。なら─
「ぐっ…ああああああ!!」
避けずに攻める!ロビンの拳は頬を捉えたが、僕の拳は顎を捉え、大きく体を仰け反らせる。
…この機を逃すな。逃したら、次はあいつの連撃が僕に振るわれる。
この時、僕は全く動く事が出来なかった。そこを突かれ、ナイフが右腕に突き刺さる。
「へっ…これでまともに腕を使えないだろ…!」
「性格悪いとか…言われません?」
「言ってろよ、どうせここで終わりなんだからよぉ!!」
ナイフを持ち、ロビンが襲いかかってくる。
「くっそ…武器がないから、キツイ…な!」
なんとか避けれてはいるが、このままではじり貧だ。いつも1手が足りない…!くそっ、どんどん切り傷が体に増えて行く。
「はっはぁ!死ねぇ!!」
「死んで…やれるかっての!」
ナイフを持った右腕を掴み、ひねり上げた後に、投げナイフが刺さっていた方の足の傷に拳を叩きつける。
「ぐっ…いってぇなぁ!!離しやがれ!」
「離したら、またナイフで斬りかかってくるでしょうが!!その前にどんどんダメージを与えてやる!」
「こいつ…!」
傷口抉るのは結構痛い。だからこういう状況ではいつも狙っていた。が、相手もさるもの、無理矢理抜けると、蹴りを顎に向けて放ってきた為、回し蹴りで足を迎撃、顎ではなく肩に蹴りを反らせたが、そのまま吹き飛び、壁に激突、壁に大穴が空いた。
「へっ、漸く倒れたか…」
ロビンは背を向け、歩きだしたが、突如炎がその瓦礫を吹き飛ばしながら吹き上がり、ゆらりと立ち上がる人影が目に飛び込んでくる。
「な…ふざけんな、なんだこの魔力!?どうみても死に体だったやつが出せる量じゃねぇぞ!?しかもどういう訳か…傷が治ってやがる!?」
そう、光牙の体の傷に炎が触れると、そこの傷が塞がっていくのだ。先程までの傷はほとんど癒え、ロビンの方に顔を向け─
瞬間、彼の体は大きく空を舞った。間髪入れずに衝撃が走り、何度も軌道を変え吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる時にはもうボロボロになっていた。
「…てんめぇ…今、ゴホッ、何しやがったぁ…!」
「え?いや、さっきやられたでしょう?高速移動。あの魔法を模倣、強化しただけだよ?名前はそうだな…《スターダスト》」
その名の通り、今の光牙は淡く赤い光を纏っており、高速で移動すると赤い軌跡を残す。
まさにその名が冠する通りに星屑、と言うわけだ。
「星屑…?ふざけんな、星屑ならさっさと燃え尽きて…ぐわっ!?」
ロビンが吹き飛び、赤い軌跡が一直線に伸びる。
「何か言っていたようだけど、容赦はしないよ…仕切り直しといこうか」