魔力の扱い方。
「まぁ……初対面でそれだけ話せれば十分だろうな。フィアはそれだけ人と話すことが慣れてないから……」
「そのようで……そうだ、二人に聞きたいんだけど、何か……魔導書、みたいなのない?」
ここで会えたんだから、聞いてみるだけ聞いてみよう。聞くのは一時のなんとやらって言うし。
「魔導書? うーむ……あるにはあるんだが……あれを使うのなら自分で何か考えた方がいいぞ? 出力が落ちている上に、まともに使えないことの方が多いからな」
「魔法って本当に色々、何でもありだもんね……例えば炎の適正があれば炎の魔法で色々使えるけど、なければなしでおしまい……自由過ぎるよね……」
フィアとエラの言葉から、魔法は一応、元から使える物以外に覚える方法があるのだと分かった。しかし、普通の方法では恐らく、自分の求める物は手に入らない。
だから、この機会に学ぼうと思った。
「いや、あるならいいんだ。探してみるから」
「それならいいんだが……魔法と言っても何が使えるんだ。 少し見せてくれないか?」
会話を終え、そこから去ろうとした瞬間に呼び止められてしまう。
取り敢えず、掌に火球を出現させ、それを地面に落とすと火球が跳ねながら転がっていった。
「炎か……なんと言えばいいか……確かに魔法って言えば色々ありなんだが……それは単に、想像力の強さでもあるんだよな……こうしたい、だからこうするを実現した物が魔法なんだ」
「すみません、飛んだり跳ねたりしてるのはなんでですか……?」
「それはまぁ……うん、なんでだろうな。潜在意識みたいな物だから……」
自分より長くこの世界に住んでいる人ですら分からないなら、自分に分かる筈もない。その部分の追求は諦めよう。しかし……
「魔導書自体は存在する、ってことでいいんですか?」
「まぁ、そうなるな……見たところ、荷物が多いから、何か使えそうな物を探しているな?」
全てお見通しだったらしい。筋力が落ちた為、あの量の荷物を持ち運ぶのは少し厳しくなってしまった。
ディーンに頼むのは……少し難しいだろう。色々と迷惑かけてしまったし。
「ふぅむ……取り敢えず、探してみよう。しかしあの量だ。一週間か、それ以上かかるかもな……」
「そんなにあるのかよ……」
「一応書物を扱う場所だったからな……襲撃を受けた際に崩れてしまったから、こんなことになってるんだ」
かなりの量があったのが崩壊により、整理されていても無意味になったと。
……かなり散らばってるんだろうなぁ……
「……俺も手伝っていいですか……?」
「? 構わんが……」
動けるようになった為、少しでも動ける時に動くのがいいだろう。
それに自分の力になるものを探すのだから、人任せにすることじゃない。自分で見つける方がいい。
「じゃあ今から……という訳にもいかないんだな。皆が今大変なものだから、そちらを優先することになる……始めるには、最低でも五日後になるが……それでもいいか?」
「それが当たり前だからね、分かってるよ。言われなきゃこっちから後回しにするように頼んでたよ」
そう言ってから、その場を後にした。フィアとは結局長く話せなかったけれど、今は仕方ないことだ。
兎に角、少しでも体力をつけなければ。それがまず第一の目標だ。
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「よーし、ここなら誰の邪魔にもならないだろう。試したいこともあるし」
一度天幕に戻り、必要なものだけを持って向かったのは、レオニと俺で、岩の魔物をなんとか倒した場所。元から広い場所ではあったけれど、戦闘の後は以前の倍近く広くなっていた。少々瓦礫が転がっているが、戦いが終わった直後に比べたらないようなものだ。
あの時は瓦礫まみれで、相手に強化素材を与える為のものが多かった為に被害も大きくなった……のもあるだろうが、最初から協力出来ていれば、もう少し被害は軽微で済んだのかもしれない。
「……ま、済んだこと言っても始まらないか。色々試そう……これとかね」
手に持った木刀を構え、目を閉じて集中する。自分の中にある、一つの器を探すイメージで、神経を研ぎ澄ましていく。自分の体にある場所全てが線で繋がっているイメージを作り上げると目を開く。
その器から直接腕に流れを作り、器から魔力を通し、手に持つ木刀にまで流し込む。それを終えてから二回程振るい、もう一度振ろうと振り上げた途端、魔力が雲散した。
「……っ、キッツいこれ……! 俺こんなこと戦闘中無意識にやってるのか……」
木刀をその場に取り落とし、その場に座り込む。集中を少しでも切らすと、その途端に魔力は雲散してしまう。
2つのことを同時に行う、ということを無意識にやっていたが、いざ意識してやってみると全く上手くいかない。力みすぎなのだろうか?
「さて、どうしたもんかね……もう一度……!」
その場で木刀を持ちながら立ち上がると、また同じように魔力を流して木刀を構え、次は移動しながら木刀を振るう。
今回は三回目までは問題なく振れたが、4回目で魔力が雲散しそうになったところを無理矢理押さえつけ、もう一度振るったらまた雲散してしまった。
「……はぁっ、ずっと武器に纏わせるには結構時間かかりそうだな、これ……」
振り抜いた姿勢から戻り、木刀を見ながら魔力の扱い方について学ぼうと強く思った。